首つりの木
私には霊感がある。お化けや妖精さんが視えるのだ。よく痛い子だと言われてしまう。
「おはよう千花ちゃん」
「おはようございます」
そんな私にも優しくしてくれる人はいる。ご近所の加山さんだ。加山さんは一人暮らしのおばあさんで、積極的に町内活動に参加し、犬猫の保護活動や、町内の掃除などを趣味で行っている。私が近所のいじめっ子にいじめられていたときも、加山さんが間に入っていじめっ子のことをすごく怒ってくれたのだ。
「加山さんは本当にいい人ね」
「ほんとにねぇ」
みんなにそう言われる人。でも私は霊感があるから知っている。
加山さんの家の庭にある木には、妖精さんの首つり死体がたくさんたくさんあるのだ。
一本の木につき、数十体。それが庭中の木にぶら下がっているのだ。視える私には不気味で仕方が無い。
「あら千花ちゃん。どうしたの?」
そんな首つりの木を視ていたら、声をかけられた。加山さんだ。
「……なんですかこれ」
「この木は松の、いえ、あなたは視える子だったわね」
ふふ、と照れくさそうに加山さんは笑う。
「食べると美味しいのよ。干し肉にすると、もっとね。ただ食べても良いけど、砕いて粉にして料理に入れるのもいいわ」
「………そうですか」
干し柿みたいな扱いのようだ。
「あなたも食べる?」
「いえ、遠慮しておきます」
「加山さんは本当に料理が上手いのよね」
家に帰ると、お母さんがご近所のおばさんと話していた。
「レシピを教えて貰って同じ風に作っても同じ味にならないの。きっと秘密の味付けがあるんだわ」