動き出す史実
お待たせいたしました。ようやく、話が進みます。遅くて本当にすみません。
では、あとがきにて。
・前回までのあらすじ
金ヶ崎を進軍する秀介達浅井軍。そこに奇襲してきた統率のない軍勢。しかし、敵大将の女は何故か刀から火を噴く将だった。地域の被害を考えやむなく殺害を試みる秀介。ただし、女は秀介の名を呼んだ。
「石山、か?」
地面に突き刺さろうとした槍にブレーキをかけながら、脳内知り合いリストを検索。秀介が導き出した結論は、現在のクラスメイト、石山果理奈だった。
彼女は、クラス内でことごとく意見の違う存在で、仲は非常に悪かった。集団主義の果理奈と、個人主義な秀介。リーダーシップの面で違うため、言わば敵対派閥と言ってもいい。
「なぜここに?」
顔をしかめながら聞いてくる果理奈。
「織田軍を追いかけてる」
無表情で答える秀介。
「誰なの、お前」
集団主義のリーダーは、自分が一番じゃないと気に食わない。そして、周りを見下した口調をする。
「浅井長政」
個人主義のまとめ役は、それぞれの分野での活躍を促し、他分野の人のことは気にしない。
「なら敵ね、殺す」
目の色を消し、刀を構える果理奈。
「おいおい! この戦じゃ長政は死なないぜ。今は史実通りに動いて様子をみないと......」
「うるさい! 敵は殺す!」
秀介の説明に聞き耳持たず、切りかかる果理奈。慌てて馬の首を後ろに向ける秀介。
「逃がすか!!」
なりふり構わず刀を振るう果理奈。その軌道に合わせて、炎が同心円上に広がる。
「な、何てことしやがる。このままじゃ山火事だ。誰か! 水汲め! 火を抑えろ!!」
ひとまず果理奈から距離を取り、辺りの被害を考える秀介。
近くにいた足軽たちが、湧き水を探して走り出す。
「井田! ここでお前を殺し、いち早く戦国を終わらせる!! 覚悟!!」
周囲の被害そっちのけで襲ってくる果理奈。テニス部なので、ラケットの動きを応用しているらしく、動きに無駄はない。
「歴史を変えるな! 石山!!」
反応速度と馬の分の高低差を活かして、防御する秀介。
「まだ俺たちがこの時代の武将になった理由もわからないんだ。下手に動いちゃまずいって」
「うるさい! 殺し合いを早く終わらせるの! そのために反信長のお前を殺す!!」
「個人的な感情混ざってない?! 俺に死んでほしいだけだろ!!」
「うるさいうるさいうるさい!!!」
ガムシャラに攻撃してくる果理奈。考えがめちゃくちゃだ。
「先輩! この女はただのワガママです。殺しましょう!! そうしないと後々厄介になります!!」
敵兵を敗走させながら、大声で意見する優姫。
「罪悪感を持っちゃダメです! 決心してください!!」
いつもは弱腰の三郎も同意する。
二人には石山果理奈が危険な存在に見えるのだ。
秀介も、同じだが、仮にもクラスメイト。殺すことは躊躇される。
「石山、浅井長政が死ぬのは今から三年後だ。それまで待ってくれないか?」
とりあえず、説得を試みる秀介。しかし、
「待てない!!!」
と、問答無用の果理奈。彼女が刀を動かすたび、少しずつ草木に点火され、足軽たちの消火作業が遅れていく。
「先輩!」
「割り切ってください!」
優姫と三郎が再び叫ぶ。このままだと、山火事は避けられない。
「......最後に聞こう。俺を今殺すのだな、石山?」
顔から苦悩の表情を消し静かに尋ねる秀介。
「しつこい! 死ね! 井田!!」
「そうか、なら君に死んでもらおう、石山」
冷酷に表情を消し、秀介は反撃を開始した。
五分もかからなかった。運動神経はないものの、反射神経が高い秀介は、果理奈の剣筋を適切に見極め、かわし、無理をせずに槍で応酬する。
肩に傷を負わせて果理奈の攻撃を鈍くさせ、バランスを崩させ、隙を作らせた。
その様な面倒な作業がわずかな時間で片付いたのは、石山のメンタルが秀介の冷酷な瞳に壊されたためだろう。
「ま、待て! ちゃ、ちゃんと三年待つから、ね、今はみ、見逃してよ。私殺すと、た大変なことに......」
ここに来て、命乞いを始める果理奈。しかし、すでに時遅し。
「じゃあな、石山」
感情を意識の底に沈めた秀介は、機械のように槍を果理奈の首元に突き刺す。これが戦国の定めなのだ。
「先輩、お見事です」
静かに馬を寄せてくる優姫。すぐそばに三郎もいる。
「これが戦国。生きるか死ぬかだもんな。この死体を見ていると、本当にタイムリープしてしまったって実感がわくよ」
秀介の目に、まだ感情は無い。
ただ、躯となった、元クラスメイトを見るだけだ。
と、その時。
「と、藤吉郎様~!!!」
一人の足軽が動かぬ果理奈のもとへと駆け寄る。
そしてありとあらゆる罵詈雑言を吐き出し、
「この天才木下藤吉郎様を殺された恨み、いつか必ず晴らしてやるみゃ~!!!」
と尾張弁を残して、果理奈を担いで山を下って行った。
「木下藤吉郎、だと」
秀介の目に変化が現れる。
「それって後の」
ポロっと呟く優姫。
「豊臣秀吉」
三郎もそれに続く。
「俺、歴史を変えちまった? 守りたかった史実、壊しちまった? え......」
機械のように抑揚のない口調でしゃべりだす秀介。
しかし、その目は恐怖と絶望により彩られていた。
そろそろおもしろくなると思います。次がいつになるかまた不明ですが、頑張ります。それでは、話のネタがないのでこの辺で失礼します。
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里見レイ




