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使命の槍と宿命の刀  作者: 里見レイ
姉川
19/153

敗戦

女性キャラに関してはそれなりに出してはおりますが、男性キャラとのバランスは考えてますね。どちらにも偏らない様に気を付けてます。

・前回までのあらすじ

優姫と華香の間に割り込んできたのは三郎。そして、あの果里奈の兄の石山竜牙だった。浅井を皆殺しにしようとする竜牙に対し、三郎は自身を狂人に変化させてぶつかり合った。

 辺りにうごめく敵味方両方の怒号が四方八方に飛び交い、耳がおかしくながらも、秀介は確かに爆風音の中から優姫ともう一人の女の悲鳴を聞いた。

 乗っている馬の精神を落ち着かせて、音がしたほうに向かおうとする。


「中山!? ......ま、黒木が向かってるし大丈夫だろ。うん、大丈夫大丈夫」


 一瞬動揺するが大将が軽く動いてしまっては軍勢の士気に関わると思い、とどまる秀介。しかし、内心気になってしょうがない。大事な後輩が命の危機かもしれないのに、動けないというのも酷な話だ。


「長政様、磯野殿はご無事なのでしょうか?」


 隣で弓を思いっきり振り絞りながら声をかけてくる高虎。相変わらず、話しかけてくるタイミングが絶妙だ。彼も優姫の声を聴いたのか、それとも秀介の一瞬の動揺を表情から察したのか。はてはて。


「......様子を見てきてくれ。我はここを処理せなければならんからな」


 とりあえず、高虎にこのことを一任する秀介。彼が近くで戦ってくれないのは少々不安が残るが、全体を把握するためにはやむをえない。


「御意! すぐに戻ります!!」


 そう言って駆け出す高虎。風のように走るという言葉は彼のためにあるのかもしれない。

 高虎が視界から消え、再び自陣営の状態を見渡すべく首を後ろに回す秀介。すると。


「やあ、井田。まだ生きていたのか」


 今まで物音もしなかった秀介の背中側に、一人の少年がいた。織田家の将、竹中半兵衛である。


「は、速水......」


 秀介は、そこにあまりにも意外な人物がいることに驚きを隠せない。


 速水陸、これが彼の本名である。現代では秀介のクラスメイトにして、あの石山果理奈の彼氏だ。


「俺の首、取りに来たのか?」


 さっと陸と間合いを取り、槍を構えながら尋ねる秀介。


「ま、その前に話をしたかったけどな」


 あくまで笑顔を絶やさない陸。


「......誰として召喚された?」


「竹中半兵衛、浅井長政を殺すにはうってつけの人物ではないかい?」


「......いつからいた?」


「うーん、ついさっき。君の後輩ちゃんの様子を見届けてから来たからな」


「中山の様子を見てから!? そ、そんな短時間でこの兵がうごめく戦場を走ってきて誰にも気づかれずに俺の後ろに?」


「いいや、テレポーテーションさ。後輩ちゃんから聞いてない?」


 戦場の中、また淡々と驚愕事実を告げる陸。小谷で優姫に話したときと、なんら表情に変化はない。


「いつ中山に接触したかは知らんが、そんなほら話流したんじゃないのか?」


 優姫と同じ反応をして、戦闘態勢に入る秀介。


「揃いも揃って現実思考なんだな。ま、いいさ。どうせ後輩ちゃんはもう死んだだろうし、お前はここで死ぬ。俺も言いたいこと言えたし、果理奈の敵も取れる。いい事尽くめさ」


 陸の笑顔に黒い輝きが増す。右手には台所包丁。これで秀介を殺すつもりらしい。


「そんなに短い武器で殺せるほど、お前腕あんのか?」


 秀介、陸の残虐性のみを重視した戦闘スタイルに怒りを覚える。武士の戦闘とは、あくまで誇り高きものだと秀介は考えているのだ。


「腕なんて必要ない。お前を殺すのに必要なのはこのテレポーテーションだけさ」


 そう言うや否や、陸の周りが発光する。大した強さではないが、陸を完全に包むほどはあった。

 そして、光が消えたと思ったら陸の姿がない。

 その後すぐ腰に激しい痛みを感じ、ゆっくりと声のする後ろを向く秀介。


「な、必要ないだろう。ここでは俺は一撃勝負なら無敵なのさ......」


 そこには、決め台詞とともに彼女の仇討ちの成功を確信し、満足した殺人鬼が狂った笑顔を浮かべていた。


「しばらくこのままいるといい。そして徐々に消えていく己の命に泣き叫べばいいさ。じゃあな、井田。あの世で果理奈に土下座すんだな......」


 再び発光しながら消え去っていく陸。


「こ、この戦国は。一体、何なん、だ......」


「長政様ー!!!」


 糸の切れた人形のように倒れる秀介と、事態を見て大慌てで駆け寄ってくる高虎。そばに優姫がいないということは、おそらく彼女も死んだのだろう。

 そのようなことを考えながらゆっくりと目を閉じていく秀介。こんな状況では、いくら万能な高虎でも秀介を救うことは不可能だろう。



 西暦1570年7月。史実よりも大規模に行われた姉川の戦いは、史実以上の織田・松平連合軍の勝利に終わるのだった。

えー、まさかの主人公初戦で敗北。物語はここで終わり、という訳ではありませんのでご安心を。これでは、完全に二週間で打ち切りになった少年漫画ですので。

お手数でなければ、ブックマークと評価の程宜しくお願します。

里見レイ

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