表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
使命の槍と宿命の刀  作者: 里見レイ
姉川
16/153

松平談話~天才たちの戦いの幕開け~

はい、今回は秀介も叶も出ません。松平、即ち徳川陣営の話です。

・前回までのあらすじ

織田と接戦を繰り広げる秀介達浅井軍。しかし、ここにやって来た知らせは朝倉軍の敗走。その真実は、松平軍として召喚された男たちにあった。

「叩き潰せー!」


「おー!」


 誠二率いる朝倉軍は、向かいにいる松平に突撃を開始。3万対2千だ、この兵力さで野戦なら、勝てないほうがどうかしている。

 誠二は、すでに親友秀介が戦っている織田勢の側面を突くことのみ考えている。

 松平勢は、一歩も動こうとしない。おそらく怯えているのだろう。

 朝倉勢の誰もがそう考え、余裕の勝利を確信したそのときだった。


「一番隊、速度上げて! 三番隊、もう少し右! 六番隊はそのまま怒号出して!」


「ウオー!」


 斬! 斬! 斬!


 突如、謎の小部隊が朝倉勢に突っ込み、縦横無尽に暴れていく。


「げ、迎撃だ! こんな少人数など、取るに足らんぞ!」


 近くにいた侍大将がすぐに迎え撃とうとする。

 しかし、


「二番隊、側面を突け! 五番隊、正面に突撃! 八番隊、手ごろな敵に鎌かけろ! 一気に敵陣を乱す!!!」


「合点!!!」


と、息の合った連携によりあっさりと弾かれる。


 これを繰り返すこと数時間。その小部隊は疲れ知らずに朝倉軍内を走り続ける。それを見て、


「な、なんだこいつら!? まるで一つの生き物、いや、それ以上の存在だ。逃げろー!!!」


と、ある侍大将が逃亡を開始すると、


「竜巻にかなうはずがない!」


「こりゃ、神風だ!」


「もうだめだ!」


と次々と動揺の声が上がる。

 こうなれば、朝倉が総崩れになるのに、五分もかからなかった。



「な、何がおきてんの!? 逃げる? どうする? 死にたくないよー!!!」


 元より戦への覚悟が秀介ほど強くなかった誠二に、劣勢を立て直せるわけもなくあえなく敗走。


「よ、四谷さん。君が怖がっていたのはこれ、だったんだね。理解するのが遅くてごめんよー!!!」


 死者の数は、ほぼ0なのに惨めに戦場から消える朝倉勢であった。



「想像以上に味気ねえ......」


 目の前で我先にと逃げていく朝倉を見て、自分で仕掛けておきながら唖然とする桜庭丸。

 預けられた百の兵を、九人ずつ十の小隊に分け、それぞれに指示を出す。残りを交代要員として自分のそばに待機させ、自由に操って敵を混乱させたのだ。


 彼は、美術部エースで数学の成績も学年トップクラス。

 その地位を支えている、空間把握能力と緻密な計算力を駆使すれば、朝飯前である。


「お見事だよ、榊原康政。いや、鈴木桜庭丸君」


 後方より、馬に乗って駆けてくる主君、松平家康。本名、和田吉樹。先程と同じく、枝豆を手に持っている。


 彼の口から自分の本名が出てきたことに、桜庭丸は大いに驚き、


「和田、お前は学級委員などで学年に顔が知られているが、なぜ俺のこと知ってんだ?」


と思わず口走る。


 実はこの桜庭丸と吉樹、同じ学校の同級生である。しかし、クラスが同じになったことはなく、話したこともない。

 ボッチと学級委員には、ろくな接点はないのだ。

 また、この時代でも互いに自己紹介すらしていない。何もないのに二人で話すこともないためである。

 それなのに、吉樹は桜庭丸のことを知っている。それを尋ねているのだ。


「フッ、愚問だよ」


 そう言って、馬から降りる吉樹。


「君は確かに学年で目立つ立場にはいない。しかし、君のその才能の話は、僕の耳にも届いている。そして、僕はその才能を本物だと確信している。むやみに接しようとしないだけで、君は学年の有名人の一人なんだ。自覚がないと考えてはいたが、まさか本当にそうだとはねえ」


 スッと右手を差し出す吉樹。


「学校での君は、象牙の塔にこもった隠者だった。しかし、今は違う。僕と共に戦いに挑む家族同然。あの戦国研究会会長と戦うには絶対に必要な存在なんだ。別に認めなくてもいいけど、僕にそう思われてるってことは自覚してほしいね」


「......家族ってのは、少々胡散臭いが、お前と共に戦うことだけは約束する。俺のことを干からびるまで使いそうなのは、俺の知る限りじゃおまえだけなんでね」


 仏頂面で吉樹の右手を握る桜庭丸。


「よーし! そうとなりゃ早速浅井に攻撃だ!」


 いきなり、吉樹の後ろから大声を上げる、吉樹の弟輝人。本田忠勝として召喚された筋肉頭。


「一応空気は読んでいたようだな。とにかく槍振り回したくてウズウズしてるんだろ」


「さっすが兄貴! 分かってる~!」


「よし、善は急げだ。いくよ、輝人! 桜庭丸! あ、僕のこと内々では吉樹って呼んでいいから!」


「ったく、馴れ馴れしいんだから......」


 そう苦笑しながら吉樹、輝人を追い、馬にまたがる桜庭丸であった。


 姉川の戦いは、まだまだ続く。

榊原康政役の桜庭丸。彼は、本作では忍者さんや家康三男坊を抑えて活躍していきます。半蔵や秀忠が嫌いなのではなく、康政を出したいだけです! 四天王の残り二人も、姉川後に出す予定です。お楽しみに。

追記 すみません。酒井忠次も井伊直政も出なくなりました。キャラ案が武田四天王と被ってしまったことと、桜庭丸の物語の都合になります。

お手数でなければ、ブックマークと評価の程宜しくお願します。

里見レイ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ