強き女
まず男が放ったのは一陣の暴風だった。かつてヒバリが繰り出した火球の雨ほどではないが人間を葬るには十分な威力である。そのまま叶を直撃した。自身の身長の優に三倍の高さまで飛ばされている。
それを見て、男は実験プログラムの確信した。訳ではない。
「どうした、その様な演技をしても我は騙されぬぞ」
吹き飛ばされた後に人形のように倒れて動かない叶に対しての男の一言だ。
「......ええ、貴方方の設定ミスのおかげで私は一切ダメージを受けておりませんからね」
叶は寝起きの朝かのようにゆったりと起き上がった。そこに若干の人妻の色気を感じたのは気のせいだろう。両腕を胸元で組んでゆっくりと頭上へと持っていく。
「『偏愛する女神』解放。補助形態009『永久機関、死を超える償い』。これで私自身への全てのダメージを無に帰せます。さて、次は私が攻撃をしますよ」
手を自分の前で組み、祈りの構えをする叶。光の線が彼女の手元へと集まっていく。
「この技は、貴方のコマンドにも存在しえませんよ。はっ!」
そこからは、ただ一本の光線が放たれた。傍から見ると、ただの懐中電灯の光レベルのそっけないものである。
「......!?」
しかし、それを見た男は大慌てに光線へバリアを張る。だが、バリアを張ってもなお男の表情に安堵が現れることはなかった。
「か、叶? これはどういう事なのだ?」
「秀介様、ご安心を。この光はあの男にのみ効果を発揮するように調整されております故」
「そ、そうじゃない!」
秀介が動揺の声を強めたのは無理もない。外から見ればこの世界最強の男にライトを当てただけでビビらせたのだから。
「これには、私から補足の説明をするべきなのかもしれませんね」
戦いにおいて男から大きく優位を奪ったためか、叶は秀介に目線を移した。そして、ゆっくりと話し始めることになる。叶とこの男の関係、そしてこの世界の一つ目の真実を。
大変長らくお待たせいたしました。えー、この年末年始は仕事のひと段落に伴い少しは執筆できると思います。丁寧に書きたいのでそれでも時間かかりますがごめんなさい。
お手数でなければ、ブックマークと評価の程宜しくお願します。
里見レイ