最後の男
お久しぶり過ぎます。
「......これは、まあ。なかなかだな」
だいたい一時間くらい経った頃合いだろうか、秀介は叶の腕の中で目を覚ました。
「父上! おはようございます」
真っ先に反応したのは、ずっと秀介の手を握っていた茶々子である。既に彼女は涙目だ。
「......茶々子、何があった?」
既に、秀介は分かっていたかもしれない。しかし、あえて彼は娘に聞いた。
「茶々子たちの生きている戦乱の世は遠い未来の者によって作られたものであること。父上が制作者と大きく関わっているという事を知りました。そして、父上の未来についても」
「そうか。叶はすべて話したみたいだな。なら、我からは何も言うまい。それに、丁度時期を見計らってか張本人のお出ましのようだからな」
茶々子を優しく撫で、秀介はふと後ろへと振り返る。そう、この戦国最後にして最強の管理者と対決するために。
一体、いつ現れたかもわからない。しかし、男は秀介達の前にいた。
「......貴様か?」
「ああ」
「このふざけた世界、貴様を倒すことで解放させてもらうぞ」
秀介の表情はこの上なく怒りに満ちていた。まあ、無理もない。今まで自分を含む多くの人を手玉に取って苦しい思いをさせた張本人が目の前にいるわけだから。
「......無知であることは、この頃から変わっていないのかもしれないな。いや、これだからこそお前はこの時代に名を中途半端に残したかもしれないけどな」
灰色のフードを被り、微かに動く口から渋い声が秀介に返事をする。
「......まあ、何も知らないな。知っているのはお前がやっている事を許せないってだけだからな」
秀介の槍は既に青白く光っている。彼にとって、観察者との会話はもはや意味がないとこを実感しているという事だろう。
「秀介様、先ほど申した通りこの男の相手は私が務めさせていただきます」
彼に被さるように、叶は夫の前に出た。何も持ってない状態だが、彼女はこれでも戦える。
「成川叶。お前の事に関しても我らの時代に記録があるのだぞ。いや、場合によってはお前の方が我らに被害を与えているという事に気が付いていないのか?」
男の返答だ。この男はやはり、秀介のことも叶のことも知っているようだ。
「そんなこと、もう知りません。今の私も未来も私も、秀介様のために尽くすまでですから」
「か、叶。我は......」
「いいんです、秀介様」
叶を後ろに下げようとした秀介だったが、妻の目はいつになく光っていた。戦国で例えるなら、落城寸前の大名の家臣のようなものかもしれない。
「我は、この戦国の神に等しき存在。偶然の繋がりでここまで生きてきたようだが、もうその様な偶然は発生しないぞ」
「はい、そうでしょうね。しかし、私だって貴方のモルモットってだけではないのですよ」
叶が男と二人だけの会話を始めた。言葉自体に意味はない。互いの事は、互いが認識しているレベルには認識しているため、虚栄も意味をなさないのだ。
「一撃でケリをつけてやる。既にデータの大半は取れているからな、さっさと殺して実験を終了させてしまいたいものだ」
男の腕がゆっくりと振り上げられる。
力の差は歴然だが、戦わない選択肢などないのだった。
ごめんなさい。ぜんっぜん展開が浮かびませんでした。
出来る限り頑張ります。
里見レイ