最後の陣営 祀られた少女
・前回までのあらすじ
鈴木桜庭丸はいち早く下原佳乃らを打倒することに成功した。そして、彼は吉樹らを置いて自分だけの決戦へと旅立った。
ここまで面倒くさいと感じる戦は、史実での戦国でも皆無に等しいだろう。血も流れず、かと言って暴力は存在する。
朝倉義景役の伊藤誠二は、向かってくる一向一揆の兵たちの拳を片っ端から受け止めている。
「君は、それで満足なのかい? 僕たち朝倉は仏教徒に対し何も悪いことはしていない。それで一方的な攻撃を加えて何を得られるのかい?」
彼の体の節々から既に血は流れている。膝ももう震えており、いつ倒れてもおかしくない。
「......殴る蹴るだけで解決できるなら、それは宗教とは言わない。戦いは僕たち大名の仕事であり、宗教は戦わないで救う事が仕事。もしそれをゴチャマゼにするなら、戦う事を本業にしている僕たちに勝てると思っている?」
誠二の目は秀介や桜庭丸のように怖くはない。しかし、彼が紡ぐ言葉は一揆の者たちの戦意を一人ずつだが確実に削いでいく。
そしてまた一人、一向宗に与していた男が戦線離脱を開始した。
「ど、どういうことですか!? 兵数も、士気も、地の利も全部私たちが有利なはずですのに。何故少しずつ私たちが押されているのか信じられません!?」
本願寺率いる一揆軍の本陣にて今にも泣き出しそうな声を上げている一人の少女。この戦国の観察者が一員のスズメである。
「皆さん! 殺生を行いたくないのならそれでも構いません。しかし、朝倉を打倒しなければ私たちの望む未来も待っていないのです! 勢いだけでもいいので進みましょう!!」
少女は必死の思いで兵たちに呼びかける。握りしめられた左手には未来から持ってきたお守り。自分の出来る最大限の応援だ。
「し、しかし首脳。もう大半の兵は脱走を果たしております。首脳の我々への対応が悪かったという訳ではなく、朝倉による意味不明な働きかけによってです」
お供の男性からも悲鳴のような報告が飛ぶ。気が付くと、もう既に一揆軍の陣の兵はスカスカだ。
「ここは一度兵を引き、近江方面の信仰を集めてから体勢を立て直しましょう」
「そ、そうですね。とりあえず、荷物の整理から始めましょう」
お供の助言を受け、スズメは撤退の準備をするべく足元の刀を拾う。しかし、いち早くスズメの背中に寒気が走った。
「逃がさないわよ、本願寺の大将!」
荒々しい馬の息と共に一人の少女が一揆軍の本陣へと突っ込んで来た。
普段の長い髪を一つ後ろに束ね、緑の羽織を身にまとった足利将軍。
四谷雪、全てを背負った覚悟の姿となり誠二の鉾として特攻をしてきたのだ。
大分遅れてしまいました。
とりあえず、頑張ります。
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里見レイ