結末の知らせ
・前回までのあらすじ
竜牙は新しい力を手に入れて秀介に勝負を挑む。しかし、遠距離戦の死角からの奇襲を駆使する秀介に手も足も出ず。そして、あっけなく塵となって敗退した。
「茶々子、望み通り終わらせたぞ」
「はい、お見事です父上」
本来の戦国の親子とは、今の二人のように案外冷たい会話だったのかもしれない。以前の二人が、あまりにも庶民的だったのだ。
「石山の呆気ない敗退には、裏がありそうな気がする。彼がどのような経緯でここに至ったのかはほとんど話してくれなかったし、まだ観察者たちの人間と戦う事になりそうだしね」
全てを傍観していた歩はこのようにまとめる。
「どうせ、私たちは何人も戦い続けなければならないのでしょう。奴らは私たちの死に様を観察する気なのですから」
歩にすり寄った状態で同意を示すのは優姫だ。すっかり泣き止みはしたがいつもの元気さは欠片もない。
「しゅ、秀介様」
そして、俯いて夫に近づく妻の姿があった。言うまでもない、叶だ。
「どうした? 心配せずとも、これから暫くの間はお主の手を煩わせることはないだろうよ。我の氷の術は相手に応じて適応した攻撃に切り替わる。雷光寺が軽く参戦してくれれば大抵の敵は対応できるからな」
秀介は、今までの中で指折りに穏やかな表情で叶に返事をした。この竜牙との戦いでは味方を誰も失っていないからだろう。
「い、いえ。実はその事なのですが」
「?」
「この次に秀介様に立ちふさがる者が、私たちの戦うべき最後のお相手となります......」
「ほう......その根拠は?」
叶の放った一言は衝撃的だった。しかし、それは緩んでいた秀介の表情を戦闘時の顔に戻しただけに過ぎない。彼はいつものように妻の発言の真意を探り始める。
「私と脳内で連結している者がおりまして、その者の上司が出撃の構えを見せていると通信がありましたからです」
「れ、連結? 観察者の中にお主に情報を漏らす協力者がいるという事か?」
「そういう訳ではなく、これは一つの運命が繋いだ情報漏洩といった所です。そのようになった理由については、まだ確証はないのですけど」
叶は頻度高く秀介に対して誤魔化したような表現をする。今回も、そのような態度は秀介に不信感を抱かせてしまうことを承知の上で。
「......だとすれば、やっと首謀者さんと会えるという事か。なら、我のこの戦国での人生も潔く幕を下ろすことが出来るという訳よ」
もう、彼にとってこの言葉が事実かどうかはどうでもよいらしい。叶が己に危害を加えないことのみに重点を置いているためである。
「......それでなのですが」
叶がさらに続けて話し出した。これ以上何があるというのだ。
「この戦い、秀介様は明らかに相性不利です。ここは私に全ての力をお預けいただけないでしょうか? 必ずや、最後の決戦にふさわしい幕引きを御覧に入れます」
秀介の妻は深々と一礼を見せる。
さて、秀介の心境はいよいよ混沌を極めた状態に到達しようとする。しかし、そろそろ一つの答えに辿り着かなければならないだろう。
この戦国の世で、言うべき言葉を見つける為に。
自分でも色々気持ち悪いところはありますが、随時見直しをしていこうと思います。とりあえず、この一作品は完成させたいので。
お手数でなければ、ブックマークと評価の程宜しくお願します。
里見レイ