新技と再召喚
緊迫していると言えばしているが、そこまで切羽詰まった感じはない。その原因は、秀介と優姫の華かに対する攻撃が一切連携していないこと。そして、前回と同じくコウモリの攻撃に気の抜けたワードが飛び交うからだ。
「行くぞ、『高速移動』! か~ら~の~『倍速旋風』だ! 今回はちゃんとお前の首を取らせてもらうからな!!」
「っと。そうはいかないよ。大切な人の目の前でお前のような小心者に刈り取られるような無様は晒したくないからね」
秀介ほど的確とはいかないが、歩も的確に攻撃を受け流していく。
しかし、歩と秀介の受け方にも違いがある。
まず秀介は、相手の攻撃の体勢を崩すように槍を合わせている。次の一撃のタイミングを遅らせるようにして、次の攻撃も着実に受けるという方法だ。
一方の歩。相手の一撃が己の肌に触れようとするところを長刀で防いでいる。相手はひたすら攻撃を繰り出すが、その実感は空気を切っている気分だろう。
「くそ! 雷光寺のチキンめ! さっさと攻撃してこないのか?」
「お前が相応の技を出して来たら、俺も相応しい反撃をしてやる」
互いにダメージは受けていないが、コウモリも歩もそろそろ戦況を変えたい様子。
「......俺たちの文明の力、甘く見ないでもらおうか! 秘儀『究極暗黒斬!!!』
コウモリは自身の両刀に黒いオーラを纏わせる。華香が放っているものと同じとみて間違いないだろう。そして、先ほどとは打って変わった速度で歩の首元を大型ハサミのように切り刻もうとする。
しかし、この長髪の剣士にはやはり秘策があった。
「......『ヒグマ狩り』死して我が強さを知れ」
その言葉が、緩んでいた戦場を一気に凍らせるのだった。
「馬鹿な、その動きは指定されたコマンドではないぞ......」
左手で掴んでいた剣を地面に落とし、右の胸を抑えるコウモリ。そこには、手のひらでは隠せないほどの長さとドバドバと血が出るくらい深い傷跡があった。
「......これに関しては、そちらの連携に問題があるようだね。俺たちをこの様に鍛え上げたのはそちら側の人間だからさ」
歩は澄んだ瞳で相手を見る。相手を戦う相手として認識し、最低限の敬意を表しているようだ。
「......スズメか。いや、それとも一の姫、ヒバリかもしれんな。連中はなかなか自由だからな。しかし、まさかこのような形でしっぺ返しを食らうことになるとはな」
コウモリの目に狂気の色が宿る。そして、一度手元にある二つの剣を一瞬にして消去させる。
「なら、こちらも権限を最大限に使った戦いをしなければならないようだな。とりあえず、戦力を増やすことから始めないとな。ま、結果で増えるだけでリスクはあるんだけどよ」
けがを数秒のコマンド操作で一定量回復した後、彼は何やら呪文を唱え始めた。
「対象、補足。移動円、制定。周波数、正常。召喚に応じよ、起爆剤!」
コウモリの目の前が黒く光り、一人の少年が強制参加となった。
「......先輩? 雷光寺さん? 成川さんに、優姫。で......戸谷、さん?」
平服姿で武器は未所持、眠そうな目を擦る黒木三郎。それに真っ先に反応したのは
「クロキ、サブロウ? クロキ、クロキ、クロキィィィィ!!!」
秀介、優姫と戦っていた華香だったが、ターゲットは完全に移行されたようだ。、
すすめねえええええええ。