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使命の槍と宿命の刀  作者: 里見レイ
終局 破
123/153

男たちの対話

「で、お主ら。今まで何していたんだ? とか色々聞きたいところだがな。大人数では離せないこともある。雷光寺、ここは我らだけで話そうか。中山、この子を頼む」


 秀介が茶々子を優姫に預け、歩を部屋の外へと誘う。


「あ、ああ。分かった」


 歩はとりあえずで了承する。秀介が彼の隣にいる女の前で話したくないようなのは目に見えている。


「女性陣も、その間に情報共有をしておくように。会議は大人数でも決まりにくいからな」


 秀介はさっと襖を開けて歩と共に外に出た。


「......先輩も、いつになくドライになったわね。って子の前で時代違いな話して大丈夫かしら?」


「大丈夫よ。茶々子は秀介様が思っているほど弱い子ではないから」


「父上は、よく分かりませんがお辛い方なのですね」


 少女たちは背中に全てを背負った少年を見送る。三人とも、あの少年たちよりは自分たちの未来は見えているのだろう。



「......さて、とりあえず坂本決戦前後辺りから教えて欲しい。中山についての詳細、速水との攻防、あとは成川についてだな。人を殺せない大名がどこまでやっているかも気になるからな」


 部屋から出て少し歩いた先の廊下。壁にゆったりと寄り掛かった秀介は歩に質問を始める。下を向いているが、そこには若干の殺気があった。


「中山さんについては、黒木君に話したまんまさ。その後に関しては......」


 歩は東西戦線の話と春海の魔術、そしてそこで戦った残像の話をした。あくまでその話は客観的で、冷静な顔つきである。


「なるほど。東方面軍の大将が石山で、西方面軍の大将がお前と」


「あ、ああ」


「それじゃ。その間に成川は何をしていたのかな? 俺の予想が正しければ、お前らとしばらく顔を合わせていいないと思うのだが?」


 顔を上げて鋭い目で歩を見る秀介。


「! 井田、何か知っているのか?」


 歩の表情は大きく驚きへとシフトする。彼はこの戦国マニアに対して駆け引きする気は全くない。


「まあ、俺はあいつを遠巻きに見ただけだ。ヒバリという女に抱かれて意識を失っていたけどな」


 この後、秀介は郡山城の戦いについて歩と関わりある部分のみ話した。つまり、晴彦の死については伝えたが満腹と高虎については口にしていない。


「なるほど......井田も色々と大変だったんだな。で、あの叶って子はもしかして?」


「ああ。成川の妹であり、今は形の上だが俺の妻だ。あと、茶々子は俺の子飼い」


「叶さんについては以前一回だけ会ったことがある程度だったけど、その時より印象が暗いね。まあ、この戦国で色々君たちもあっただろうからね。けど、君たちが仮にも夫婦なら助け合うのが義務だと思うけど、そこら辺どうなんだい? 君は叶さんと仲が悪そうに見えるけど?」


 穏やかではあるが、歩の言葉には重みがあった。彼のその優しさは、厳しさとして現れることも少なくない。


「まあ、そこら辺はいつか話すかもしれないな。今話すべきなのは、別にあるから後回しになるが」


 秀介の頭の中にあるのは優姫と歩の現在の戦闘能力や決戦への備え。今更冷え切った夫婦仲など気にしていない様子だった。


(君がそれならそれでもいいけどね。俺からは君たちの関係はすごく心配なんだけどさ)


 歩は部外者だからこそ秀介と叶の間にできた亀裂を客観的に見ることができた。そして思った。


 この亀裂は、深さと大きさが反比例しているという事に。


お待たせしました。結構な回数行っていますがお待たせしました。里見レイ

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