突如の世界情勢解説話
主人公、またも出番なし。
色々伏線出していきます。
・前回までのあらすじ
小谷で議論をする優姫と叶(お市の方)。開戦派と和平派で真っ二つだがこの戦国に違和感があるのは同じだった。そこに、一人の少年が姿を現す。
竹中半兵衛。「今孔明」と呼ばれた秀吉配下の天才軍師。病で早世したため活躍期間こそ短かったが、小説やゲーム、時代劇などに度々登場し、不動の人気を誇る頭脳派戦国武将筆頭。
浅井家とは、「半兵衛が昔、食客してた」という話があるが、基本的に敵。それも、浅井家臣の調略まで行った宿敵である。
その敵である半兵衛を名乗る少年が今、成川叶と中山優姫の目の前にいる。彼女たちは浅井家の人間、しかもここは浅井の城小谷だ。何故彼がここにいるのか分からない。
「何しに来たの?」
鉾先を半兵衛に向け、質問する優姫。
「言った通りさ、この世界について知っていることを教えにきたのさ」
不敵にほほ笑む半兵衛。一応話し合いのつもりらしく、腰に武器はない。
「何のためなの?」
未だに警戒を解かない優姫。
「うーん。それは、俺の話を聞いてから各自で判断して欲しいね。俺は、あくまで知っていることを、そのまま話すだけだから」
「そう、なら勝手に話せば。万が一のため、この鉾は下ろさないけど」
一応、話を聞く気になった優姫。
隣の叶は、既に聞く構えをしている。
「良かった。じゃあ、始めよう。まず、俺がどうやってここに来たか話そう......」
「俺は、ここにテレポートで来た」
とニッコリしながら言う半兵衛。
しばしの沈黙。叶も優姫も話を理解できない。
「テレポーテーション、これが俺が授かった特殊能力さ。能力値が何も加えられなかった俺への初期設定なのさ」
「ちょ、初期設定? 能力値? げ、ゲームの話?」
今までずっと黙っていた叶が、ここぞとばかりに質問を繰り出す。
「別に、目の前の空気をタップしたからってアイコンが表示されたりはしない。つまり、ここは剣と魔法の世界なのかもって話だよ」
「何よ、その取ってつけたかのような設定? ほら話にも程があるわ!」
鉾を握る力を強くして、怒鳴る優姫。
「ま、織田家にはここ以上に召喚された人がいるからね。彼らの変化を観察した結果の仮説だけど」
「で、目的は?」
優姫のイライラは限界に達しようとしている。
「ただの警告だよ。いくら君たちが戦国マニアで知識が豊富だからとしても、現代にいた時と比べてある力が上がっていたり魔法が使えるこの世界じゃあ召喚された人数で勝負がついちゃうって話」
「さっさと降伏しろってことね。わざわざどうも」
優姫の背中からも、みるみる殺気が漂ってくる。
「だから、帰るなら今のうちだよ、お市の方様」
「えっ、私!?」
突然話を振られ、戸惑う叶。
「下手に感情移入しないことですね。お兄様も待ってますよ。それでは」
突如霧が半兵衛の前に現れ、それがすぐ消えたと思ったら、半兵衛の姿は無かった。
「何なのよ、あいつ」
目の前でテレポートらしきものを見せられ、今まで以上に戸惑う優姫。
「お兄様って信長? それとも......」
半兵衛の口ぶりからそれとなく感じた一つの可能性に、これまで以上に動揺する叶。
さあ、もうすぐ開幕する。前代未聞の戦国乱世が......
滅茶苦茶かもしれませんが、一度やってみたかった設定? なんです。
彼が100%真実を言っているとは限りませんが、結構重要な話なので、覚えといて下さい。
次回から第二章「姉川」に入ります。それでは。
お手数でなければ、ブックマークと評価の程宜しくお願いします。
里見レイ