かかり始めたギア
「無駄無駄無駄ア! 実験者の権限の前には強風の中の枯れ葉何だよオ!」
煽り要素満載に実験者の「コマンド消去」を使ってカラスは秀介の技を無効化する。
「黒木、叶! 会議通りに作戦を展開する! 高虎はそこの光秀を抑えろ!」
「先輩、それはカラスが僕たちを殺さない前提で練られた作戦ですよ! 今回は通用しません!」
「少しは頭を使え! 動きを慎重にして応用するだけなんだからよお!」
秀介の指示は三郎相手に空回りする。
一方の高虎は晴彦と戦闘を始めており、一進一退の攻防が続いていた。
「相変わらず、小賢しく立ち回っているようだな。しかし、敵味方入り混じる乱戦ならともかく完全な一騎打ちで某の槍をどこまで流せるかどうか?」
「ふふふ。貴方こそお忘れでは? この戦いは私は粘るだけでいいという事を。なぜなら、浅井長政がこの世を去るのは時間の問題。彼らであの二人に勝てるとでも考えているのだと考えているのなら、貴方も所詮愚か者という事になりますけど......」
「! 殿! 今お側に参ります!」
状況が想像以上に悪いことに気が付いた高虎は、秀介の援護に回ろうとする。しかし、そんな高虎を見逃す晴彦ではなかった。
「なめてもらっては困りますね! 私の特殊能力『無限の弓矢』をもってすればいくらでも矢の連射ができる、隙など私に生まれない!」
晴彦はそう宣言しながら秒ごとに矢を高虎へ打ち込んでいく。対して高虎は致命傷になりそうな矢の身を槍で叩き落とし、残りは自分の体にあたることを許した。
そして、割り込むように秀介とカラスの戦闘に参戦。秀介と逆方向からカラスへと攻撃を始めた。
「えーい。こうなれば黒木が光秀の相手をしろ! 高虎、一気に仕掛けるぞ!!」
「はっ!!!」
二人係でカラスに槍をぶつけていくが、相変わらず彼にはかすりもしなかった。
「ったく、主従揃って学習能力ゼロなのかねえ。俺にお前らが何回攻撃しても実験者の特権でいくらでも無効化できるってことをいい加減覚えたらどうなんだぁ!」
連続で特異コマンドを使用して秀介たちの攻撃を除け続けるカラス。二人の体力切れを待ちわびている表情だった。
「せ、せんぱーい。僕では彼の相手は無理ですよー」
その一方で、三郎は晴彦との対峙にもう弱音を吐いている。華香の死後、彼は戦闘意欲そのものを失っているのだ。
「そのくせ、華麗に死に花を咲かせてくれないんですね。泣き言叫んで私の矢をかわし続けるだけ、死に際においては一番情けないと思うんですけど」
「松野君、だっけ? 人は誰でも死にたくない者なんだよ。君や井田先輩が異常なだけでさ」
「その考え、死者となり果ててから悔い改めてもらいますよ......」
晴彦は連射速度をさらに上げ、三郎のこめかみを徹底的に狙い始める。ドッジボールの弱い人のようにガムシャラに逃げていく三郎。
「先輩、このままでは僕たちが全員殺されるのは時間の問題ですよ!」
「おいおい! それは以前の作戦会議で言っただろうが! ってか叶、お前も隙を見て満腹達を救出するくらいはしろ。ただでさえ劣勢なんだから最低限の働きはしてくれよ!」
三郎の弱音には秀介もさすがに耐え切れず、この時代の高虎たちがいるにも関わらず叶や三郎を本名呼ばわり。仲間の意識の低さに堪忍袋の緒が切れる寸前なのだ。
「秀介様、まだあの女が動いておりません。私の考えでは、恐ろしいのはカラスよりもその女。然るべき時に、私は最低限以上の働きをして見せましょう......」
「? あのヒバリって女か? 今現在戦闘に参加していないことを考えると、特殊能力は非戦闘系が主ではないのか?」
秀介は叶の反応に対して疑問を持った。まあ、目先のカラス相手に濃がフル回転している訳でないこともあるのだが。
「流石、愛しき人の実の妹ですね。私の思考をトレースしているようで気味が悪いくらいです......」
再び上方より声がした。永久の伴侶を膝に抱き、宙に浮いたヒバリが冷酷な聖女の笑みをぶら下げて全員を見下ろしているのだ。
戦闘を細かくしていった結果、文字数の多さと投稿の間の長さにさらに磨きがかかってしまいました。まあ、次も頑張ります。里見レイ