合流
「小細工や特殊効果も一切なし、単純に俺の銃口にエネルギーを集中させて放つ。これこそ絶望を招く死の一撃だ。その名も『名もなき弾丸 ティマイアー』だ! くらえー!!!」
「なんか色々突っ込まなければいけない気がするが、単純な砲撃なら全速力で逃げて避けるまでだ!」
カラスの銃口から超火力のエネルギー弾が放たれると同時に背中を向けてダッシュで逃げだす秀介。しかし、一人ではなかった。
「秀介様!? なぜ私の手を引きながらなのです?」
「俺の妻だからに決まってるだろ! それに、お前も連中から殺す対象になっている。お前も俺の仲間なのだから一緒に生き延びることは当たり前だろうが!」
次々と打ち込まれていく弾丸。しかし狙いはことごとく外れていく。そして、二人はそのまま陣の外へと出た。
「とりあえず、どこかに隠れるか。奴の狙いが俺たちだけなら、そのままやり過ごすのが無難だろう」
「......」
「どうした、叶?」
秀介は息を切らしているが、隣にいる人への配慮は欠かせない。
「秀介様は、不思議なお方ですね。いつも未曾有の危機に巻き込まれているのに、瞬時にするべき最善の事をなさっている。私はただ茫然としているだけなのに......」
叶は少し微笑んだ顔で語りかけた。明るさで言えば、坂本決戦前並みだ。
「俺は、今できることをしているだけだ。あの未来人相手では焼け石に水なのだがな。それでも、あらがい続けることが俺の為に死んでいった者たちへの弔い。止めるわけにはいかないのだよ」
「そう、ですか。貴方は、一つの意味で哀しいお方なのですね......」
「そうなのか? まあ、別に俺は好きでこういう風にしている訳だからな」
秀介はあくまで淡々としている。自分が哀しい人という認識はもちろんない。
「自覚がないのは十分承知しております。しかし、恐らく今の無理が将来のご自分を苦しめることでしょう。私の直感がそう語っているのです」
「お前の直感は信じてもいい気はするが、流石にぼんやりとし過ぎていて答えようがないな」
秀介は苦笑して妻の顔を見る。それでも、叶の微笑に変化はなかった。
「お前は本当に謎だな」
「秀介様、それは貴方が優れている証拠なのですよ......」
「秀才と呼ばれている俺だが、そんなの多くて百人単位の中での話。世間に出れば凡才さ。ってか、ここでする話でもないと思うのだがな」
秀介は息を整え辺りを見渡す。カラスの銃撃がこのまま終わるとは考えられないので、いち早く対策を練らなければいけないのだ。
その時だった。
「先輩伏せて!」
「長政様、危ない!」
二つの悲鳴に反応して前に伏せた秀介の真上を一本の矢が通過する。
「......黒木君、じゃなくて直経と高虎? そして後ろに居る貴方は......織田の人間ですね?」
「その通り。初めましてですよね、成川叶先輩?」
小振りな弓を構えて姿を現したのは明智光秀役の松野晴彦。坂本決戦の裏側で高虎と攻防を繰り広げ、ヒバリと手を組んでいる掴むことのできない一年である。
ふう、ようやく晴彦を再登場させることができました。次は本格的な戦闘になる予定です。里見レイ