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使命の槍と宿命の刀  作者: 里見レイ
終局 序
102/153

切り裂かれた停戦

「結論を、出さない? 秀介様、それは一体どういう......」


 叶は困惑を隠せず、再び秀介に縋りついた。愛す、愛さないの双方への覚悟は固まっていたが、保留にすることへの覚悟はできていなかったのだ。


「そのままだ。お前は俺に愛されても愛されなくても同じことをする。だったら、どちらでもないと答えるしかないんだよ。お前は俺を中心に物事を考え、周りにいる大事な者たちを躊躇なく殺していくだろ? だったら、お前のその意思を挫く。傍にいてもいいが、最低限の事しかするなよ。特に、あの特殊能力は使用厳禁だ。いいな」


「そ、そんなぁ......」


 叶にとっては、この秀介の発言は死刑宣告よりも酷かった。愛されるどころか、愛することすらも否定されたわけなのだから。


「お前をこれくらい制御しておかない限り、俺の精神に安らぎなんてない。もう嫌なんだよ、周りにいる大事な人が死んでいくのは。例えそれが作り物だとしても、生き返るとしてもな......」


 秀介は一瞬だけだが悲しげな、そして寂しげな俯きを見せる。それを見た叶はすぐに彼の心情をくみ取った。


「秀介様、発はいい娘でしたね」


「当たり前だ。俺たちの子供なんだからよ」


「......」


「......他意はない。お前は俺の妻なんだからな」


 不意に表情が明るくなった叶に対し、秀介はすかさずくぎを刺した。それがくぎになったかは別としてだが。



「へー。意外にお熱いんだな、お二人さん。色々と安心したな!」


 突如上部から聞こえてくる男の煽り。弱気になっていた顔を引き締める秀介と奈落に落ちたような表情をする叶。


「まあ、そりゃあいるよな。カラスさんよお......」


 そう答えながら秀介は空を仰ぎ見る。郡山城の天守の上に銃を担いでカラスは立っていた。


「ふ、久しぶりというにはまだあまり時間は立っていないな。まあ、俺ゃ長い前置きは嫌いだ。一言で言うとお前らを皆殺しにするよう指示が出たんで迎えに来たという訳よ」


 カラスの残酷な笑みは地上にいる秀介と叶にも見て取れた。


「......心境データは十分にそろったという事かい、非人道的な実験者さん?」


「ま、この実験場も色々と都合が悪くなったらしくてな。原因が分からない分早めに始末するようにとの話だ。もちろん、死に際のデータを取った上でだけどな」


 皮肉と事実が入り混じる二人の会話。それを叶は何かと葛藤するような表情で見守っている。


「あ、そうそう。二人ほど今回のゲストを紹介するぞ。何、一人はお前らもよーく知っている人だ。最期に会う人物としては申し分ないはずだぜ」


 カラスはパンパンと手を叩いた。


「あのねえ。なんで私があんたのアシスタントみたいな登場をしなければならないんかしら? サプライズなのは別にいいのだけど」


 カラスの後ろから一人の少女が文句を言いながら現れる。しかし、何故だか動きは遅い上にフードを被っているため顔を確認できない。


「おいおい、ここにまで連れてくんのか? 相変わらずの狂気ぶりじゃないか」


「あら、あなたの為にわざわざ出向いてあげたのに何かしらその態度? しかも、あなた一人の申請では攻撃許可が下りていなかったのではなくて?」


「はいはい。俺が悪うござんしたー。で、早くその愛しの彼をお披露目したらどうなんだ?」


 秀介と叶を置いてけぼりにして会話をするカラスと謎の少女。秀介からは殺気がどんどん出てきている。


「そうね。では、お待たせしましたお二人さん。私の追い求めていた伴侶を紹介しますね。私の名はヒバリ、お二人の義姉となるべく時を超えてやって来た未来人です」


 フードを取るとそこには濃姫、いやヒバリがいた。そして、彼女のひざ元には。


「!? 成川......」


「お兄ちゃん!?」


 そう、まどろみの中を彷徨っているリョウの姿があったのだった。

またまたお久しぶりです。そろそろ最終決戦に向けた勢力統合が始まります。

里見レイ

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