産まれ変わったら
お手に取って頂きありがとうございます。
初作品なので、誤字脱字あるかと思いますが楽しんで頂けたら感無量です。
私は今世で凄く幸せだったと思う。
近藤佳子はそう思った。
結婚は遅かったが3人の子供に恵まれ家事育児仕事に奮闘し、気付けば齢82の年になった。
孫やひ孫に囲まれて、苦労しなかったかと言われたらそんな事はなかったが、それでもいい人生だったとハッキリ言える。
そんな佳子にもついに終わりの時が来たようだ。
人は誰しも生きていたら必ず訪れる死。
死んだら何処に行くんだろう?と幼少期に友人と議論した事を思い出す。
それをかわぎりに流れる今までの思い出。
あぁ、これが走馬灯というやつか。
周りを見渡したいが、もうそんな気力も無く、医師が淡々とした態度で脈を測る。
薄れゆく意識の中で、声に出ていたか分からないが、死ぬ時は呟こうと決めていた言葉を紡ぐ。
「私は幸せだったよ。」
そうして、佳子は長い生涯を終えた、、、
はずだった。
意識が途切れたのはほんの一瞬。
重たい瞼を上げれば、見たことの無い女性が視界いっぱいに広がり目を瞬かせた。
「おはよう、シーア。よく眠れた?さぁ、オムツを替えましょうね〜。」
ニコニコ微笑む女性は、佳子の動揺も分からず濡れていたオムツを替えていく。
あれ?
これはどういう状況ですか?
私、今さっき死んだよね?
まさか、死んで早々、次の人生スタートですか?
てか、何で記憶があるの?
それとも育って行く過程で薄れて行くから記憶はあってものちに無くなるのかしら?
などと、目まぐるしく思考をフル回転させながら与えられるミルクを飲んだ。
甘くてトロリと美味しいミルクが胃の中に満たされていくのを感じながら、ゆっくりと睡魔が押し寄せてくる。
何にせよ、次の世も幸せになれますように、、、
薄れゆく意識の中で佳子はそう思った。
今ある記憶と別れを告げて。
しかし、佳子は気付かなかった。
満足顔で眠りにつく赤子を見つめる目がある事を。