人生とはいつも唐突である
ナーシさんに行先を詳しく聞くとまず先にルーナの村に行きそのあと首都に向かうらしい。ルーナの村はナーシさんの所有地で農作の出来を見に行くとのことだった。貴族でも自分の足で確認しに行くなんて珍しいこともあるなぁっと思ってしまった。ナーシさんは自分の所有地に住んでる方々をよく思ってるようだ。きっといい村なんだろうなぁ。
「セペラくんはどこの村出身なんだい?」
「僕ですか?僕はインシピッタっていう村です。」
「…それは申し訳ない。辛いことを言わしてしまったね。」
「全然大丈夫ですよ。もう昔のことですから…。」
「昔のことか…もう13年前の話か…」
「そうですね。そのぐらい経ちましたね。」
もう13年も前のことか…。随分時日はたったなぁと今更実感した。当時僕は5歳だったため何が起こったなんてあんまり覚えてない。ただ言えるのは村が真っ赤に染まり火の海だった。生き残りも僕だけ。
「しんみりさせてしまったね。」
「いえ。大丈夫ですよ。…こちらこそ気を使わせてすみません。」
しばらく無言が続く中外から人の声が聞こえた。
「……どうやら村に着いたみたいだ。私の村を存分に楽しむといい。」
「えぇ。そうしますね。」
馬車から出ると太陽の光が眩しく感じた。空気は新鮮で美味しく麦畑が段々畑に広がっていた。他の村とは違い皆生き生きとしていた。きっとそれはナーシさんが良い地主の証なんだろう。少し離れたところにいるナーシさんの周りには村人がたくさんいた。皆笑顔で村での出来事を次々と話してた。ナーシさんも楽しそうに話を聞いている。賑やかで良い村だ。最近は魔王軍が悪さすることが多くなり国全体的に空気が重いと聞いてたがどうやらここは被害がなく平和に暮らしているらしい。いい事だ。
1人で頷きながら考えてるとナーシさんが僕の名前を呼んだ。
「セペラくん!!どーだい、僕の村は?」
「とてもいい村ですね!」
「そうだろう!」
嬉しそうにはにかむナーシさん。僕もつられて笑った。
どうやらやることが終わったらしい。やる事って言っても税の麦を取りに来ただけらしい。いよいよ目的の首都に行くらしい。ルーナの村から離れるのは少し寂しいがムーブさんのお使いがあるので仕方ない。村の方々に挨拶をし明日の明け方出るらしい。村の方々はナーシさんに見送りをしたいと言ってたが断ってた。理由が朝早く出るから悪いって言ってた。ナーシさんは本当に村想いの方だ。
明け方ナーシさんの合図で馬車を出そうとした時村の方々の声が聞こえた。見送りに来てくれたのだ。地主の見送りなんて聞いた事ないから驚いた。しかしそれと同時にこの村なら有り得るなぁって思った。自然に自分の顔が笑っていたことにも気づいてたが顔を引き締める気もなかった。
「…いい村ですね。」
「当たり前だろ?私の自慢な村なんだ。」