13地区 (1)
アキとユフィーが暮らしている13地区は、人口およそ10万人。規模としては中くらいの都市である。人々の居住区は地上20階以上、それより地上に近い場所は全て娯楽施設、ショッピングセンター、病院など公共の施設。街としてはあまり歴史がないため、若者が多い。
「アキ、たまには下にいかない?」
ユフィーはアキを誘ってみる。アキは極端に外出を嫌うため、この誘いに良い返事が貰えることはあまりない。
「ユフィーが行きたいなら行くと良い」
今日もアキは引きこもりに徹するようだ。
はあ、とため息をつく。ユフィーのパートナーがだいぶ普通と違うと理解したのは、パートナーになって割とすぐ。それからずっと、このアキの性格に付き合っている。
「…わかった。夜には戻るよ」
玄関を出ると、廊下の上からアナウンスが響く。一方向性でユフィーにしか聞こえないように調整されている。
『ユフィー、外出ですか?』
「ええ、ちょっと運動したいの。今はどう?」
『今の時間帯、スイミングでしたら空いています』
「じゃあ、手配をお願い」
廊下の端まで歩いていくと、降下用のカプセルが浮かんでいた。壁のパネルに触れると、カプセルの上部の蓋が開く。今日は4人乗りか。途中で誰かを拾うかも。一人がよかったユフィーはちょっとガッカリする。ユフィーが乗り込み、ベルトをした直後にカプセル内にアナウンスが響く。
『本日はご利用ありがとうございます。これから3人同乗予定があります。ご了承下さい。到着は15分後…』
ちょっと泳ぐだけが、行きに15分もかかるなんてツイてない。ユフィーは目を閉じた。