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ダクファン  作者: 遠山 凛久
プロローグ
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プロローグ

上を見れば澄み渡る空、下を見れば綺麗に整っている道。


それは、いつの頃だったろうか…

体を焼き切るかのような真夏の太陽、


一歩歩くのも億劫となる岩と砂利の悪路、そこに僕とカイトはゆっくりと歩いていた。


「何ボーっとしてんだ、レン!大丈夫か?」


と、カイトに小突かれる。

真夏日のせいか、小突かれたところが汗でぬるっとしていた。


大丈夫だと右手を上げる。


カイトは、退屈そうに続けてこう言う。


「つーか、まだ着かないのかよ。こちとら汗だくで脱水しそうだぜ。」


「仕方ないじゃない。キャンプまで、遠いんだからさぁ。」


カイトは相当疲れているのか、さっきから立ち止まって呼吸を整えている。


太陽と逆方向にある、繁々とそびえ立つ 一本の大樹を見つけた。


「じゃあ、あの木の下で休んでから行こうか。」


垂れていたカイトの顔が休むという言葉でパッと顔を上げ勢いよく、首を縦に振った。


僕たちには自分たちの「家」がない。


正確に言うと、少数で住むマイホームではなく多数で住むシェアハウスなのだ。


この国から自分の「家」という概念は消滅した。


それは、十年前から魔物と呼ばれる異形な生物が突如現れたからだ。


魔物の種類などは、未だ殆どが不明なままで、分かっているのは、動物を合成したようなキマイラであると言うことだけだ。


そして、視界に入った人を襲い、物を壊すということだけだ。


そうして現れた魔物によって、かつて地上にあった建築物は次々と破壊されていき、今では人びとの住処は「キャンプ」と呼ばれる地下壕へと移り変わっていった。


「キャンプ」は、地上は大抵目印となる赤い旗が立ってあり、地下はアリの巣のような形状で、住人は一つの「キャンプ」につき約40~50人程である。


その中で、半数以上が日中、神出鬼没の魔物による襲撃に備え完全武装している。


しかし、「キャンプ」とて100%安全という訳ではない。


故に、こうして別のキャンプへと移動している。


幸い、僕とカイトは逃げ切ることができた。


が、今まで一緒にキャンプで共にしてきた、仲間たちの消息は不明だ。


「おっ、あれか!」


カイトは、呑気にゆらゆらとなびいている赤い旗を指差した。


喋る気力もなく二人はホッと胸を撫で下ろす。


二人は、赤い旗の横に立っている門番の男に、前のキャンプでのことを話す。


すると、門番の男は、


「そうか、それは災難だったな。まぁ、とにかく今日はゆっくり休んだらいい。部屋は案内する。」


と慣れているかのようにキャンプへ入れてくれた。


僕らみたいなのが多いのかな…。


どのキャンプでも同じだが入り口付近は、血痕や建物の傷など、魔物との戦闘の跡が残っている。


キャンプの中は、以前住んでた所よりもとても広く比べものにならなかった。


カイトは、あまりにもの広さにパニックで、ホェ~と連呼している。


先導していた門番の男は、立ち止まり空き部屋と書いているドアを示した。


「ここが君らの部屋だ。皆への挨拶は、後でいい。あと、このキャンプは迷路の様になっているから迷わないよう気をつけろよ」

 

と門番の男は言った。


と、その時ダダダッダダッと銃声が聞こえた。


一斉に音の方向に振り向き、門番の男は、大広間の方だと言い走りだした。


ニ人も後を追う。


事態は予想よりも酷いものだった。


地面には、何人もの人が横たわっている。


それ以外は、生き残っている数名の人間とたった一匹の魔物そして魔物がそこから出て来たであろう約半径7メートルものぽっかりと空いた黒い空間だけだった。


その魔物は、ライオンのような容姿だが禍々しい色の翼を持ち目に瞳は無く深い赤色で染まっている。


ある者は、魔物の胴をめがけて銃を乱射しているがその攻撃も虚しく弾かれ、その魔物に一撃で屠られた。


「そ...そんな...どうしよう。」


あまりにも悲惨な光景にその場に座り込む。


魔物はコチラに気付き、目が合う。


奴の目は、殺気に満ちている。


――気付かれた!!


「逃げないと!」カイトはそう言おうとした。


しかし遅く、カイトが言う前に魔物は吠えた。


ただ吠えただけだったのだ。


それだけで、大広間は大きく揺れ、壁にヒビがはいっていく、そして「ズドォォン!!!!」という音と共にたった1つの出入り口が瓦礫で埋もれてしまった。


前には、凶暴な敵、逃げ道はない。


人と言う名の、はびこる虫を蹴散らし血の海に凛と立つ一匹の魔物。


人間相手ということのみを忘れれば、魔物の戦いぶりは勇ましい。


逃げ遅れた僕達の目の前前には、その魔物がいる。


そして、後ろは出口を塞がれた瓦礫の山。


戦力はない。


危機に僕達は瀕している。


雄叫びと共に、魔物は、鬣を揺らしながらコチラに突進してくる。


突進から回避しようとしたがそれは叶わなかった。


出来ない…動かない…足が。


何度も、自分の足を叩くが、一歩も動かない、あまりの恐怖に足が硬直しているのだ。


――動け!......動けよ!......動いてくれっ!!


そんな時の横を何かが通った。


――カイトだ!――


カイトは、地面に落ちていた手榴弾を手に取り無謀にも魔物に立ち向かおうとする!


震える足で、でも後ろ姿はどっしりとしている。


カイトの行動に唖然とした。


カイトは、まるで火のついた猛牛の如く突進してくる魔物に向かっていき、手榴弾を投げる。


おそらくカイトは照準など全く考えずただ投げただけなのだろう。


しかし、手榴弾は予想と反し綺麗な放物線を描き奴の頭部に命中して、爆発した。


すると、弾丸をものともしかった魔物だが、奴はカイトの数メートル手前で立ち止まり甲高い悪魔のような悲鳴をあげる。


魔物の体に傷は一つも付いていないが、前足を地面につき体を震わせ始めた。


カイトは、倒したと思ったのか満面の笑みを浮かべて両手を振りながらこちらに向かってくる。


と、その時魔物に異変がおきた。


魔物は再び悲痛な叫びをあげ、表皮がライオンのような黄色から悪魔のような黒色に変わり、また一段と巨大になる。


そして、背中を向けているカイトに爪を立て襲いかかる。


ブシャッ、凄惨な血しぶきが上がった。


―――門番の男の背中から。


門番の男は、カイトを庇ったのだ。


カイトの表情から笑みがなくなる。


「大丈夫かおじさん。しっかりしてくれ!」


「心配するな、君たちはもうすぐ助かる。」


背中の傷を思わせないような表情で、カイトに語り掛ける。


魔物は、大きな牙で二人に止めを刺そうとすろと、後ろで爆発音がした。


先程までふさがっていた出口がすっかりと開いている。


そこには、門番の男とは違う一風変わった装備をしている三人の兵士が立っていた。



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