集落での出来事
遅くなって申し訳ない御座いません。
リアルな方が忙しかったのでこのタイミングの投稿になってしまいました。
朝、明るくなり始めた頃に目を覚ます。ルシアによると今は5時頃だった。久し振りに横になって寝れたので熟睡できたと思う。
前世は早く起きて飯を作ったりしてたからこの時間には基本起きるのだが転生してもこの生活リズムは極力崩さない様にしている。
昨日までは俺が最初に起きてルシアを振ったりしていたのだが、今日は先にオーガが起きて本を読んでいた。どこから取り出したんだし。
「今日は早いんだな」
「少しソウガと話をしていたからな」
詳しく内容は教えてくれなかったが、十年も会ってないんだもんな、話したい事もあるだろう。そういう事らしい。
オーガが本を閉じて外に出たので、俺も習って外へ出た。
既に数人だが人が歩いている。そういえば昨日は真夜中に来たから、見張りの人にしか会ってなかったな。
住民は『THE 村人』といった服装で、異世界に来たんだなぁという実感が強まった。
「おぉ! あんちゃん久し振りじゃねぇか! 帰って来たんなら声位かけろや!」
通り掛かった初老の男性が、オーガを見て驚いた様子で話し掛けてきた。どうやらオーガがこの土地で過ごしてた頃の知り合いみたいだ。
朝からよくもまぁ大声で喋る人だ。
「昨日の夜遅くに来たから挨拶なんてできなかったさ。それより、生きてたんだな」
「ったりめぇだ! 10年やそこらじゃくたばってらんねぇよ!っと、そういやあんちゃんの隣にいるガキ、こいつぁ誰だ?おめぇの子って訳じゃあ無さそうだが」
今にも「てやんでぃ!」とか叫びそうな男性は俺を見ながら目の奥の眼光を光らせている。
一応自分の名前を言おうと口を開きかけたのだが、それをオーガが遮って言った。
「俺の弟子だ。それと、男じゃ無いからな?」
俺は別に拾われた訳じゃ無かったみたい……じゃ無くて。
オーガさん? 貴方はどうして俺の性別を強調した言い方をしたのかな?
「チッ、そうかよ……。まぁなんだ、歓迎するぜ! それとあんちゃん、後で俺の家「断る」……つれねぇな」
「それと、そんなに長くは居ないからな」
急にテンションが下がった状態で来た道を帰る男。
……やっべぇなあの人。つまり、うん。あれだろ? っていうか、こんな見た目の俺を対象として最初見てたと?
背中に冷たいものが走った気がした。
「……オーガ、ありがとう」
「……この集落の長だ。性格は良いやつなんだがな……そういう事だ」
その後も様々な人物と出会っては軽く挨拶をしていたオーガ。出会う人全員と顔見知りだったのだが、オーガってわりと人気者だったのな。会話の内容で理解できる。
……変なのは集落の長だけだったみたいで安心した。
「さて、俺は少し体を動かすつもりだが、お前はどうする?」
気付くと、集落の出入口まで来ていた。
「俺も行く。一人で覚えるよりも誰かに習った方が良いと思うしね」
それから一時間
「ふぁ~……ん、もう朝れすかぁ?」
ごしごしと目を擦りながらルーガが起きた。起きたばかりなので寝癖が酷く、呂律が回っていない。
「おはようございます。もう少しで朝食が出来ますので待っててくださいね」
「んぁ……、はい、お構い無くぅ。くぁぁ……」
欠伸を噛み殺しながら寝惚けているルーガを見て苦笑しながら、ソウガはスープ作りを再開する。
彼女は昨夜、ファルから分けて貰ったエトッフラワーの葉を調べる為に部屋に引き込もり、一睡もしていないのだが……。見事と言うべきか疲れた様子を一切見せない。
「昨日は申し訳御座いません……一度熱中してしまうと周りが見えなくなってしまって、この癖は治さなければいけませんね」
「いえいえ~。私達こそ勝手に寝てしまって、更には朝食まで作って頂いてますもん。感謝こそして文句を言う理由なんて私達にはありませんよ」
素早く寝癖を直して普段と全く変わらない状態に戻ったルーガ。
申し訳無さそうに謝るソウガだったが、気にした様子も無く感謝の言葉で返すルーガに微笑を浮かべる。
「そう言って頂けると私としても嬉しいです」
「すんすん……葉物野菜と鶏肉のスープですね!」
「匂いで具材が分かるって凄いですね……白狼族の私より嗅覚が良いのでは?」
その頃
「ゼー、ゼー……む、無理っ……! ハードとかいうレベルじゃ……無いぞ、これ……」
「ふむ、その年齢でこのスピードに付いてこれるなら及第点……といった所か。それだけ口が利けるならまだ大丈夫だな」
『およそ一時間で64キロメートル……御主人様、無事ですか?』
『―――! ――――――!』
草原に大の字になって倒れる俺と、そんな俺を本気で心配してくれているルシア。そして久し振りに聞こえた謎の声。
少し体を動かすと言って走り出したオーガだったが、距離とスピードが尋常じゃ無かった。一時間も軽トラと殆ど同じスピードで走ってみろ。というかそもそもの話、人間が時速64kmで一時間も走れる筈が無い。龍人の身体能力や体力が人間とは桁外れに高い事が今ので分かった。
しかしよく体壊れなかったな俺。
「少し休憩したら軽く戦闘のイロハを教えてやる。とはいえ体術しか教えてやれないがな」
「鬼、だなっ……!」
なんでこの人は息切れて無いんだ? 化け物?
内心そう愚痴りながら、素直に脱力して体を休める俺だった。
休憩を初めてから5分、何とか息を整えて立ち上がった俺だが、脚に負担が溜まり、猛烈な疲労が襲っているのでフラフラな状態だ。
そんな俺の状態を知ってか知らずか、オーガが「さて始めるか」と言いながら近付いてきた。
……体で覚えろってか。
「怪我しない程度に宜しく」
「出来るだけ心掛けるが、怪我しないかどうかはお前次第だな」
完全にバトルモードのオーガだったが、突然目線を俺から外して草原の奥を見据えた。
それとほぼ同時にルシアが俺に伝える。
『御主人様、約50メートル後方から我々に何らかの悪意を持った人物が三名、接近するのを確認しました』
「誰か来たみたいだな」
「ちょっ、俺まともに動けないんですけど……?」
ほぼ同時刻
「そろそろ出来上がりそうですね!」
鍋に顔を近付けて忙しなく尻尾を動かすルーガ。普段尻尾は動くのに邪魔という理由で服の内側に入っているのだが、建物の中で軽装という事もあって、黒い尻尾が顔を出しているのだ。
「あと少し煮込めば完成ですよ。しかし、オーガ様とファルさんは何処まで行ったのでしょうか」
「オーガさん、少し体を動かすとか言って運動量がとてつもないですからねぇ。結構遠くまで行ってると思いますよ」
私達で食べちゃいましょうか? とルーガが提案するが、ソウガが却下する。ぶっちゃけルーガは早く食べたいだけなのだ。
「みなさんが揃ってからでは無いといけませんよ」
「むぅ……じゃあちょっと呼んで来ます。10分くらいで戻りますね!」
そう言い終わらぬ内に家を飛び出したルーガ。
ソウガは苦笑しながら「もう一品作ろうかな」と呟き、食材を取り出すのであった。
「っと、呼んでくると言って飛び出したのはいいですけども……何処に行ったのかが分からないんですよねぇ」
外へ出て少し走った所で立ち止まったルーガ。あまり先の事を考えずに行動するタイプなのだ。
まぁ良いか、なんて呟いて歩を進めようとした時、目の前の光景におや? と首を傾げた。
剣を腰に下げている細い体型の男性と斧を持った筋骨隆々の大男が、集落の住民と思われる男性をリンチしていたのだ。
近くには女性が、蹴られ殴られている男性と思われる名前を発しながら震えている。
それを見たルーガは真っ先に、
「あのー」
「ひっ!?」
震えている女性に話し掛けた。
「これって、助けた方が良いですか?」
「…………ッ!」コクコク
最初は何を言われたのか理解が出来なかった女性だったが、暫くして首を上下に振った。
その反応を見届け後、リンチしている男性二人を前に言い放った。
「おじさん達! 弱い者苛めはいけませんよ!」
もう少し別の表現があるとは思うが、ルーガ自身遠回しに物を言うのが苦手なので、たまに年齢と口調が合わなかったりして今のような台詞になったりする。
「あぁ?……なんだガキか。てめぇには関係ねぇ事だろうが」
「いえ、そこの人に頼まれました。なので関係あります!」
「き、君……逃げなさい……!」
殴られていた男性がルーガにそう言ったが、大男が「うるせぇんだよ!」と怒鳴りながら殴って黙らせた。
そんな状況に顔を顰ているルーガを、細い方の男性が物色するように眺める。
「おい、見ろよ。このガキ獣人だぜ? 顔もなかなかだ。そこの女より上玉じゃねぇか?」
「確かに、奴隷にするにゃ申し分無いな。おい」
「あ、でもこれで私が手を出したら、私が弱いもの苛めをしている事になりますよね……う~ん」ブツブツ
嫌らしい笑みを浮かべている男達を無視して、独り考えに更けるルーガ、天然なのだ。
「チッ、聞いちゃいねぇ。取り敢えず身動きだけ封じちまうか?」
「ああ、それにしても良い手見上げになりそうだぜ。最初は俺に楽しませろよ」
そう言って懐から『隷属の首輪』と呼ばれる、装着者に称号【従と者】と、スキル【生権剥奪】を強制的に附加させる魔道具を取り出した。
これを付けてしまうと、持ち主に全てが筒抜けとなり、更には生死を握られてしまうという、主に奴隷に対して使用される魔道具なのだ。
そんな魔道具を男は、ブツブツ呟いているルーガに近付けて――。
目で確認する事が不可能なスピードで繰り出されたルーガの拳によって一撃で沈められた。
「ぶべっ!?」
「なっ!?」
「あ、反射的に……」
やっちゃった、みたいな表情で崩れ落ちた細身の男を見下ろすルーガ。
一瞬何が起こったか理解できていない様子の大男だったが、すぐに顔を怒りに染めて斧を振り上げた。
「このガキ! タダで済むと思うな!」
「あぁもうっ! なるようになれです!」
「がふっ……!」
振り下ろされた斧を軽く避けてボディーブローを叩き込んだルーガ。ニメートルはあるだろう大男が一撃で沈黙する。
男が三人転がっている(1人は殴られていた男性)という光景に唖然としている女性に向かってルーガが「……後はお任せますね!」と言い、脱兎の如くその場から退散した。
「ぅあ…………行っちゃった」
時を同じくして
「冒険者……じゃ無いな。俺等に何の用だ?」
「よく俺等の存在に気付いたな。だが、答える義理は無ぇ。あの集落に用がある……それだけは答えてやるよ」
「俺等はただの足止めさ」
「ったく、主人も良い性格してるってんだ。それより見ろよ。あのガキ龍人だぜ? 売れば金になるんじゃてぇか?」
オーガの言葉からして、俺達をずっと付けていたみたいだが、一体どうやって俺達のスピードに付いてこれたのだろうか?
『彼等から雷属性の技【電光石火】を使用した痕跡が見られます』
初めて聞いた技だが、簡単に説明すると自身の肉体に雷で負荷を掛けて一時的に身体能力を上げる、オーガが最初に使った高速移動が近いらしい。
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というか聞き流していたが、俺って売れるの? 人だぜ?
『ご安心下さい。既に【電光石火】は雷属性魔法を代用して使用可能です。それと、奴隷としてなら売買ができます』
自身の持っているスキルをフル活用して相手の技を見て盗む……ルシアさん、君はどこまでハイスペックなんだい?
「別にお前等が何かやったって訳じゃあ無いが、あの集落の人間共々死んでもらうぜ」
「……何言ってんのお前?」
思わず突っ込んでしまった俺は悪く無い筈。
だって初対面で「死んでもらう」だぜ? というか集落の人間共々、とか今言ってたよな。
大丈夫かこの人達?
「ふむ、お前達がなにやら物騒な事を考えてる事は分かった。それに、お前達なら丁度良さそうだ。ファル、ちょっと戦やってみろ」
「オーガも何言ってんの!? いや意味は理解できるけども!」
さっきから俺、脚がヤバいって言ってるじゃん!
『【電光石火】で脚に負荷を掛ける事で一時的に疲労を揉み消す事ができます』
ソワソワした様子で俺にそう伝えた。何でお前もやる気満々なんだよ!
「舐められたもんだねぇ。まっ、あのスピードで移動する程度の能力はあるんだ。楽しませてくれよ?」
少し前もこの綴りをやった気がするが、前回と同じで逃げられないらしい。
「……分かってると思うけど、俺がマズイ状況になったら――」
「助ければ良いんだろ? 心配するな、行ってこい。」
そうオーガが言い終わった瞬間、三人の内二人が剣を携えて突撃してきた。左右に別れて動いているので狙いがつけにくい。
(取り敢えず【電光石火】を使ってみるかな)
『お任せ下さい。と言っても初使用なので体にどの様な負担があるかは把握していませんので、注意を』
えちょっ……初めて聞いたぞそんな事。
そんな突っ込みも虚しく【電光石火】が発動する。見た目に変化は殆ど無いが、とてつもなく体が軽くなった気がする。
物は試しと思い、突撃してくる内の1人との距離を縮める。
「ガッ!?」
「何だと!」
「痛ってぇ!」
少し距離を縮めようとした俺だったが、一歩踏み出した瞬間、いつの間にか男性の1人と激突していた。
早いというか、確実に生物が出せるスピードじゃなかったぞ…。
ってか制御出来ないじゃん!
ぶつかった相手は紙屑の様に飛んでいき、数メートル先で地面に激突した。
そして俺は、突然体から力が抜けて地面に倒れてしまった。
「あれ?動けない……」
『【電光石火】の影響ですね。成る程、体に疲労が溜まっている時に使用するのはリスクがあるみたいですね』
冷静に分析してんじゃねぇよ! ちょっと、本気で体に力が入らないんですけど!?
残る二人の男は、真っ先に飛んでいった男の元へ走っていった。そして何やらブツブツと呟いた直後、飛んでいった男が何事も無かったかの様に立ち上がった。
回復みたいなものだろう。是非とも今の俺に使って欲しいものだ。
「な、なんだこのガキ、化け物か!?」
「いや、今のが最初で最後みたいだ。動けないみたいだぜ」
「……あの野郎、【電光石火】を使った俺が把握しきれねぇスピードで体当たりをしてきやがった」
結構普通のスピードで突っ込んできた男達だったが、【電光石火】でスピードを上げていたらしい。
「オーガ、後は宜しく。俺は無理……」
「慣れない技は使うものじゃ無いぞ……。まぁ良いだろう、軽く遊んでやるか」
呆れた表情で俺に注意した後、オーガは男達に向き直って挑発した。
「舐めんなよ、おい! 出し惜しみしないで行くぞ!」
「「了解」」
先程よりも早いスピードでオーガに向かって動く男達。それを見たオーガは一呼吸置いてから――。
一瞬オーガの姿が霞んだと思った直後、男の1人の顔面を掴んで地面に叩き付けた。ゴスッと音がしたが、多分無事だろう。
『威力からして彼は恐らく、重度の脳震盪です』
相手のダメージを分析して報告するルシア。
「ジーン!? ……野郎、ザックはそこで寝てるチビを殺れ!」
「分かった。というかアイツに勝てる気がしねぇ、撤退した方が良いんじゃねぇか?」
あ、それ俺も思う。というか勝てる勝てない、逃げる逃げないとかいう話そっちのけで生きて帰れる自身が無い。
「あいつ等にはもう俺等の顔を見られてんだ。どちらにせよ殺さなきゃ俺等が殺される!」
「来ないならこっちから行くぞ」
「「なっ!?」」
バチッ! っと辺りが放電したかと思ったら、距離を取って会話していた男達の目の前にオーガが出現した。
そして男の1人の腹に拳をめり込ませる。メリッと変な音がしたが無事……かな?
『拳のスピード、深さ、音から察しますと肋軟骨の複雑骨折でしょう』
(知りたく無かった……!)
「敢えて1人残したが、どういう事か説明してもらおうか」
「ひっ……ば、化け物……」
尻餅を着いて動けなくなった男、最早どっちが悪者なのか分からない状態だ。
胸ぐらを掴んで凄むオーガを前に、最後の1人の心は簡単に折れた。
彼等はとある王国から命令でやって来た王国の暗部で、冒険者に混じって行動していたらしい。
目的はこの集落を消し去る事という、明らかにヤバい奴らで、理由は知らされていないが、国の命令だそうだ。
っていうかそんな事やっちゃって良いのか王国? そもそもあの集落は何をやらかしたんだ?
「それで、あの集落にいた俺達を先に口封じの為に殺そうとした……と?」
「あ、ああ。集落事態は今夜中に潰す予定だった。なぁ、もう言ったから良いだろ? 離してくれよ」
「絶対後で何かするだろ。主に集落に」
「そんな事は絶対しねぇ! 信じてくれ! な?」
動けない俺に向かって必死に叫ぶ男。ルシアに解析を任せたが、判定や如何に。
『心拍数の変化から推測……嘘ですね』
嘘だった。
「どちらにせよ、お前達を無事に返す訳にはいかないな」
「そんな……助けぶべらっ!?」
男の顎を狙って的確な蹴りを放ったオーガ。ベキッと、明らかに鳴ってはいけない音がした。…………かろうじて生きてはいると思う。
『角度と顎の変形具合から、脛椎損しょ(止めて! それ以上は駄目だ!)了解』
「今の話をルーガ達にも話さなきゃな。歩けそうか?」
「……無理、力が入らない。どうしよう」
「はぁ」
仕方無い、と言いながら俺を抱き上げて走った。
完全にお姫様抱っこの形だが……俺自身、もとが男なので全然嬉しくない。
『先程あの男が使用した魔法の解析が完了しました。回復魔法が使用出来ます』
(……その言葉をあと10秒前に聞きたかったよ)
案外乗り心地が良かった事は内緒だ。
「そんな事が……分かりました。この土地は私がいますので何とかなるでしょう」
あの後、抱き上げられた状態で、行きの半分の時間(先程)で到着したのだが、俺達を探して迷子になりかけていたルーガと遭遇、動けない俺がルーガの手に渡った。
そしてソウガの所へ戻った俺達は、朝食がてら先程起こった事を全員に説明したのだ。
そして腹の立つ事に、ソウガの家に到着した頃に体が戻った。
「俺達は明日発つ予定だが、確かにソウガに任せれば問題ないな」
「……もう行ってしまうのですね」
そう会話しながらスープ(ホウレン草と鶏肉のトマトベース)を啜る二人……真剣な表情なだけにシュールな光景だ。
「そうですね。事態が収まるまで暫く滞在しましょうよ……もぐもぐ」
「ルーガは飯目的だろ、絶対」
ふぇ?と反応するルーガ。肉料理(豚肉をニンニクと一緒に焼いたもの)を幸せそうに頬張っている。朝食……だよな?
……なんというかブレないな。
「……私の欲で留まらせる訳にはいきませんしね、分かりました」
その後、ルーガ以外が少ししんみりとした空気の中で1日を終えた。
翌日の早朝
「え~! せめて朝ご飯だけでも食べましょうよ~」
「今回はお前の成長が見れて良かった。じゃあ任せたぞ」
「お任せ下さい。これでも私、誰かさんの指導のお陰で結構強いんですよ?」
ルーガの提案を軽く無視しながら二人は言葉を交わす。悪戯っぽく微笑みながら喋るソウガが少しだけ色っぽかったりする。
「ルーガさんもファルさんも、本当に短い時間でしたが有意義な一時でした。またいらして下さいね?」
「近い内に必ず寄りますよ!」
「色々話したい事があったけど、それはまた後回しだな。元気で!」
別れを告げ、小さな集落から旅立つ俺達。
時速64キロメートルと言っておりましたが、これは『理論上人間が出せる最高時速』らしいです。
ちなみに現在の世界最高速度はウサイン・ボルトの時速約45キロメートルです。
・・・彼等の化け物具合がよく分かりますね。