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オーガとルーガ

  主と従の儀式を終えてから5日、俺の所持品となったルシアだが、普通に高スペックだったりする。封印を解いた直後は人の姿だったが、本体(剣)と別で行動する事が出来るし、思考も一時的だが別々に分ける事が出来るらしい。そして人の姿は、俺には普通に見えるのだが、他の生物には見えない様にする事も可能らしい。




  今は森を出るべくひたすら歩いている。

  と言ってもこんな深い森だ。正直1人で抜けれる自信は無かったが、ルシアが手に入れたユニークスキル【森羅万象】と【神察眼】のおかげで問題なく進めている。ルシア様々だ。

  ちなみに【森羅万象】は、『この世界に存在するあらゆる現象を理解する事が出来る』というスキルらしい。

  何を言ってるのか俺にはサッパリだが、例えば俺が名前の知らない木の実を持ってるとしよう。俺はその木の実を食べたい、しかし名前すら知らないし、もしかしたら毒が有るかもしれない。

  【森羅万象】は、そんな知りたい物や現象を、見ただけでどういうものかが理解出来る。そんなスキルだ。

  俺の中ではリアルな『RPGのアイテムコマンド』という事で納得している。


  そして【神察眼】、これは対象を見るだけで、特徴や心拍数……果てには感情まで読み取る事が可能という、普通にチートなスキルで、ルシアが俺に使った【解析】は、この【神察眼】の劣化版だそうだ。ちなみに【熱源探知】や【光線可視化】、【千里眼】など、名前からして明らかに『見る』事に特化したスキルも全て発動するらしい。


  この【神察眼】を使って危険そうな生物を避けて、【森羅万象】を使って食べれる物を探してなんとかやっている。


  あとは、ルシア自身が元から持っていたコモンスキル、【高速思考】という『考える』事に特化したスキルで、今日は何処まで行くかの計画を立て、安全に森を進んでいる。

  ……何だろう。剣というより知恵袋としてルシアを認識してる自分がいる。


「しかし、今の所は順調に行けてるけど、何か出たら堪ったもんじゃないな。ルシア、この森ってどの位の広さなんだ?」


『そうですね……御主人様の世界の単位でいう半径約212km前後ですが、この森自体現在進行形で広がっていますので正確な面積は分かりません』


  212キロ……凄いあるな。半径だぞ半径、歩いて出れるのか?

  そういえば気付いてるかも知れないが、俺はエクセルシアを略して『ルシア』と呼ぶことにした。これは本人も了承済みだ。


  なんてやり取りをしていたら、突然ルシアが止まる様に言ってきた。

  今までだったらこの場合、大抵は魔物や魔獣が現れたのだが……今回は違った。





『何か来ます……あれは、獣人ですね。それも二人』



  森の奥を指してルシアが言う。

  俺は称号【主と従】の追加スキル【共有】を用いて視覚を共有、歩いている人物を視界に捉えた。

  ちなみに【共有】は、主従関係になることで入手出来るスキルらしく、視覚や聴覚などの五感や、精神を共有する事が出来るのだ。

  距離は大体2、30メートルも離れているが、ルシアの【神観察】のお陰でハッキリと見る事が出来た。


  獣人

  人間と獣型の魔人の混血族。人の知能と獣の身体能力、魔人の特徴を受け継いでおり、亜人種としては一、二を争う程種類と数が多い。

  と、ルシアが説明してくれた。


  森を歩いている獣人は、180センチはありそうな身長で、犬の様な耳と尻尾の生えた男性と、見た目は高校生くらいの猫耳少女だった。

  本当にいたんだな獣人……流石は異世界。


『獣人族……と言いますか、彼らの言語を【森羅万象】にて習得しました。【共有】で御主人様の言語とリンクさせます』


「おぉ……本当にチートだな、その能力「能力がどうした?」…………って、へ?」


  たった今まで向こうで歩いていた獣人二人が、【神観察】で見ていたにも関わらず突然消え、俺の真後ろに立っていた。

  ルシアが驚きで固まっている。

  俺の会話を遮って話し掛けたのは、男性の方だった。猫耳少女は興味津々といった様子で俺を眺めている。


「じー……」


「子供、それに角と尻尾……龍人か。迷子って訳じゃ無さそうだが、この森にいて大丈夫なのか?」


「え、え?どういう事?(擬音……)」


  男性は、俺を心配そうな顔で見ながらそう聞いてきたが、ちょっと混乱していた俺は、咄嗟とっさに返事が出来なかった。


『言い忘れてましたが、この森には普通の人間だとその場で命を落とすレベルの魔酸素が充満してます。恐らくこの人物は、何故この魔酸素の中で無事なのか、という事を御主人様に聞いたのでしょう』


  固まっていたルシアが復活し、俺に「あぁ、そういえば」レベルの感覚で説明をし初めた。


  ちょっと待って、この森がそんなに危険なんて初めて聞いたぞ!?

 言い忘れたで済むのか!?

  まぁ、現に生きてるから大丈夫なんだろうけど、早めに教えて欲しかった。


  と、【共有】を使用して今現在の心情を共有、ルシアにそう言った。剣であるルシアに今話し掛けたら、独り言じゃあ済まないからね。注意も兼ねてそう言ったのだが。


『いえ、通常ならこの森に入った時点で身体に異常をきたしますので、問題の見られなかった御主人様には影響は皆無と判断したので報告しませんでした』


  なんて悪びれもせずそう言い切ったのだ。まぁ、実際大丈夫だったから良いんだけどさ。


此処(ここ)で話すのもなんだし、歩きながら話すか」


『【神観察】で確認しましたが、相手からは敵意、害意を一切感じ取れません。同行しても問題ないでしょう』


  ルシアがそう言ってるし、大丈夫だろう。


「じゃあ、お願いします。と言っても、分からない事が多過ぎて何を話せば良いのかは分からないんだけどね」






  深い森を北に向かって一直線に進んでいく男、歩きながら自己紹介を初めた。


「俺はオーガという白狼族の者だ。鬼人族(オーガ)と名前は同じだが、一切関係性は無いからな。それとこっちは――」


「……え?あ、私ですか?私は黒猫族のルーガです、宜しくお願いしますね!」


  どういう訳かずっと俺の方を見ていたルーガという少女はハッ、っと気付いて慌てた様子で自己紹介を初めた。


「俺は見ての通り龍人で、ファルディメアっていう名前らしいんだけど……どうしたの?」


  俺が自分の名前を言った途端、オーガがピクッと反応した。ルーガは相変わらず俺を見てる……何か顔に付いてるのかな?なんて考えてると――。


「ファルディメア、か。初対面の人物に言うような事じゃ無いが……あまりその名前は使わない方が良い」


  そうオーガが改まった口調で諭す様に言った。

  いつの間にか付いてた名前だから特に愛着とか無いから構わないけど、使っちゃいけない名前だったりするのかな?


「なんかあったりするの?」


「ああ」


  オーガは、俺の名前がどういうものかを教えてくれた。

  どうやら俺の名前、物語や伝説に出てくる神龍と同じ名前らしい。簡単に言うと今の俺の名前は、前世でいう『キリスト』や『仏陀』と同じ様なものらしい。神の名前だからあまり使ってはいけない。という理由もあるが、龍人である俺は、生まれ変わりとか言われて変な教徒に狙われる可能性があるみたいだ。


「そうだったんだ、そりゃ確かにあまり使っちゃいけないな。適当に略して名乗るかな、教えてくれてありがとう」


「じゃあファルちゃんですね!」


「ファルはまだしもちゃん付けは無しで」


  むー、とルーガが唸っている。……そんな初対面相手にフレンドリーで良いのか? なんて考えたりしたが、取り敢えず俺の目的を話すことにした。


「実はかくかくしかじかで、この森から出ようと思って歩いてるんだけど、全然出れないんだよ」


「それは当然です、この森広いんですよ?ファルちゃんの足じゃあ此処からだとあと3日は掛かりますもん」


  3日……さいですか。っていうかファルちゃん止めろ。

  自己紹介終わってから饒舌になったな。


「俺等も森から出る所だったからな、一緒に来るか?」


『先程も申しました通り、彼等からは私達に対する敵意を感じません。彼等に同行する事を推奨(すいしょう)します』


「(分かってるさ。)じゃあ頼む、色々聞きたい事もあるしね」






  その日の夜、道が見えなくなる程暗くなった森の中で、俺達は野営を行った。二人が狩った魔獣の肉を焼いたのだが、久し振り、尚且つ異世界初の肉だったのもあり、味こそ無かったが、物凄く美味しく感じた。


「へぇ、オーガ達って冒険者なんだ」


「とはいえギルドにも入ってないし、色々な土地を転々としてるだけだがな。しかし転生者か、話には聞いていたが本当にいたんだな。妙に大人びてる訳だ」


  軽く彼等の事を、聞いた範囲で説明しよう。


  まずはオーガ、さっきも言ってたが白狼の獣人で、各地を旅しているらしい。白い髪に碧い目、整った顔立ちと常に落ち着いた態度……、絶対この人モテる。

  いや、羨ましいとかは別に無い。あくまでも客観的に見た感想だ。そもそも転生して性別が変わってるから、イケメンに思う事は無いのさ。


「う~……」


「……君はさっきから何で俺を拘束してるのかな?」


「いやぁ、丁度私の腕に納まりそうだったので抱いてみた所、想像以上にしっくり来たのでつい。……放しませんよ!」


  ……ルーガは黒猫の獣人だ。物心付いた時からオーガに育てられており、自分の親は分からないらしい。

  先程からのやり取りを見ていて分かると思うが、超ポジティブで天然だ。こっちは髪も目も黒で『THE黒猫』といった感じだ。 パッと見た感じ清楚系美少女なのだが、性格のせいで残念な感じだ。


「あ、そういえば出会い頭に俺の背後に回ったやつ、あれって何なの?」


  突然視界から消えて気付いたら後ろにいた、ってやつ。ルシアが頑張って解析してるけど、未だに分からないらしい。


「別に、あれは俺自身に雷魔法を使って、筋肉に負荷を掛けて一時的に身体能力を上げてただけだ」


『成る程、だからスキルを感知出来なかったんですね』


  話によるとオーガの得意属性は雷なんだそうだ。詳しくは教えてくれなかったが、スキルも雷に関係しているものらしい。

  ちなみにルーガの得意属性は闇らしいが、本人は魔法を使えないらしく、闇属性の関係するスキルを所持しているみたいだ。


「ファルちゃんは、自分の得意属性とか知ってますか?」


「いや、知らない。というかそういう類いの物を使った事が無いから、把握する術すべを知らないんだよな」


「まぁ、知らなくて困る様なものでも無いさ」


  その後、これと言った特徴の無い会話をしていた俺達だったが、ふと気になることを俺は口にした。


「しかし、俺が別の世界から来たって事で納得してくれてるけど……変な事を聞くんだけどさ、本当に俺が転生したって信じてくれるの?」


「……昔同じ様な事を言ってた奴がいたからな。それに、そんな見た目で「俺は転生者だ」とか言われたら、嘘だと思う方が難しいからな」


「そうですよ。こんなに可愛い子が嘘をつける筈がありません!」


「おい」


  そんな会話をしながら、明日から楽しくなりそうだな、と考える俺だった。

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