表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍人転生~苦労の絶えない異世界道中~  作者: 白玉蛙
三章 デイペッシュ
39/146

蹂躙

  先制攻撃を放ったのは大地。手に持つ拳銃で二人の胸目掛けて発砲した。

  しかし、二つの弾丸は目標を撃ち抜く寸前で、ルーガの剣に弾かれた。


『おわっ! 銃弾を弾くか!』


  銃弾を見切って弾く身体能力に対する驚きと、そんな殺し甲斐のありそうな相手に遭遇した喜びで大地の心は舞い上がっていた。



「じゅうだん……この鉛の玉はそう言うのですか。それにしても、こんな塊をあの早さで打ち出されたら、流石のルーガさんも耐えられませんね」


「あれ、ものすっごく痛いですからね」


  銃弾という単語をルーガが弾いた鉛の塊と判断して冷静に分析するソウガと、銃弾に対して純粋な感想を洩らすルーガ。



『拳銃は弾けても、マシンガンは弾ききれるかな?』


  右手を掲げた大地。すると虚空から新たな武器(六二式機関銃)が発現した。それを乱射する大地にルーガは顔をしかめるが、ソウガは、


「連続で打ち出す事ができるんですね。しかし」


『なぁにペチャクチャ喋ってん……何ぃ!?』


「おぉ、ソウガさん……凄いです!」


  秒速800メートル以上のスピードで向かってくる数十発の弾丸は、ソウガ達の数メートル手前で、まるで彼女らを嫌うかのように全て逸れていった。


「金属なら、どんなに速くても軌道を逸らす事なんて造作もありません」


  パチパチッとソウガの周辺が放電しはじめた。



「ルーガさん、申し訳ありませんが、この男は私にやらせてもらっても宜しいですか?」


  そう言うソウガから出てくる、静かだがとてつもない圧迫感を秘めた何かが放出され始めた。

  あ、これは怒ってますね……と、ソウガの怒った所を見たことが無いルーガでも分かる位の怒気を発しているソウガに、何かゾクッとするものを感じたルーガ。


「大丈夫ですか?」

「任せて下さい」


「ピンチになったら言ってくださいね」

「はい」


『てめぇらなに呑気に話してんだよ! んでもって何で当たらねぇんだ!?』


  先程から銃を変えつつ撃っている大地は、徐々に苛立ちを覚えて叫ぶ。

  近接戦闘に持ち込めば良い話だが、SVD(スナイパーライフル)M134(ガトリング)電磁砲(レールガン)と、様々な武器兵器を撃ちまくり、全てが無効化する様子を見て大地は「絶対に遠距離武器で殺してやる」とムキになっていた。


「貴方に最初の一撃を譲ろうと思って待っていたのですが、何故か当たりませんので、私に当たるまでお話をしていただけですよ」


  まだ当たらないのですか? と挑発する発言をしたソウガに……いや、ソウガの挑発するような態度でだろう。プチっと中で何かが切れた大地は大声で吠えた。


『くっっそがぁ! ぶっ殺す! てめぇの腹をかっ切って内臓引きずり出してやる!』


  ギュン! と肉体強化系の技能(スキル)をフル活用してソウガとの距離を詰める大地。

  ソウガは変わらず微笑んだままである。


「あら、感情の昂っている人は嫌いなんですが……」


  大地が目と鼻の先まで接近しているのに関わらずその場から動かないソウガは、


「もう少し周りを見た方が宜しいのでは?」


『食らえおぁっ!?』


  ガクッと、急に消えた地面に足を取られてバランスを崩した大地。土属性魔法で大地の踏み込む地面の形を変えたのだ。

  体制が大きく崩れた大地はそのまま前のめりに倒れていき――。


『がふぁっ!』


  下がった頭にソウガの膝蹴りが炸裂した。

  後ろに吹っ飛んだ大地は、自然と顔を腕で守ったが、その際ガラ空きになった横腹に、ソウガが膝蹴りした勢いのまま一回転して後ろ回し蹴りを放った。


「うわぁ痛そう……」


  衝撃で二、三歩よろめいた大地に、更に次々と追撃を加えていく。

  自身の最も敬愛するオーガの戦闘スタイルに(なら)って体術を得意とするソウガは、流れるような動作で大地を翻弄していった。


『っはぁ!』


  最後に腹に掌底(しょうてい)を叩き込まれて吹っ飛んだ大地は、何回か地面をバウンドした後にザザッと体制を立て直して着地した。

  ソウガによって連続攻撃を食らったものの、身体能力が上昇する技能(スキル)を複数所持していたのが幸いして肉体的なダメージはあまり無い。


『もう許さねぇ……跡形もなく消し飛ばしてや「好き勝手させませんよ?」ああっ!?』


  核兵器でこの辺一帯ごと消そうと考えたのだろう。

  再び【兵器創造】を発動させようとした大地の言葉をソウガは遮った。




  そして大地の腕が、痙攣して動かなくなった。 見ると、パリパリっと大地の腕には電気が走っていた。


「先程から観察していると、どうやらその奇妙なスキルを使う時、右腕に魔力を集めていましたのでね。その状態では正確な魔力操作が困難でしょう?」


『てめぇ……』


「精々足掻いてくださいね?」


「ソウガさん……」


  うふふ……と微笑みながら指をポキポキと鳴らすソウガを見て、この人は絶対に怒らせてはいけない人だな、と改めて思ったルーガであった。







  一方その頃。


「なぁ、遠くの情報を見れる魔法とか無いのか?」


  椅子に座って何かを書いているシャロンに、近くの棚から適当に取り出した本を読んでいるジャックがそう質問した。

  現在、役目を果たした彼等は暇なのである。


「そんな魔法があったらとっくに使ってますよ……本当なんですか? ソウガさんが集落に来るなって言ったのは」


「嘘ついたのなら、わざわざこんな事聞かねぇさ」


「ですよねぇ」


  聞いた私が馬鹿でした。と結構失礼な事を言ったシャロン。ジャックは特に気にした様子もなく、本から目を離してファルの様子を見た。

  変わらずスゥスゥと小さな寝息を立てている小さなファル……。


「……ん? 小さい?」


「し、失礼な! 私はこれでもCはありますから!」


「いや、アンタじゃなくてファルだから」


  小さい、という単語に過剰反応を示したシャロンに「突然何を言い出すんだコイツ?」みたいな目を向けたジャック。


「ファルさんが小さい? それはまぁ、子供ですし男の子ですし……そもそも無いじゃないですか」


「なんの話をしてるのか知ら「あーっ! ファルさんが子供に戻ってる!」……だからそう言ってるんだが」


  いつの間にか、見慣れた幼い姿に戻っていたファルに驚くシャロン。一度この状態を見たジャックはそこまで驚かなかったが、とある疑問が頭に浮かんだ。


「ファルが元に戻ったって事は……」


  ジャックの言葉に呼応するかのようにもそもそと動き出したファル。






「ふぁ……ん?」


  目が覚めると、ジャックさんが俺を不思議そうな表情で覗き込んでいた。


  意識が無くなる寸前までの記憶を掘り起こして、此処がジャックの部屋だと理解するのにそこまで時間は掛からなかった。


「……早くないか?」


  前回は3日間寝たままだったのだが、半日で復活したファルを不思議に思ったジャック。そしてそんなジャックの第一声に疑問を持ったファル。


「早いって、どのくらい寝てたの?」

「半日だ」


「……早いね」


  この前の3日は何だったのだろうか……。


『恐らく、今回は魔力のみを消費したからでしょう』


  俺の復活をいち早く察知したのだろうルシアが、いつの間にか首から外されて机に置かれている状態でそう推測を立てた。

  魔力だけだったって、どういう事?


御主人様(マスター)、まず背中の傷をご確認下さい』


  取り敢えず言われるがまま背中に手を触れると、何も違和感が無い事に気付く。


『ここから推測するに、【諸刃の剣】は一時的な魔力の永続使用と肉体的ダメージの全回復がメリット、その時に消費した魔力の分とダメージの回復で使用した体力が一度に押し寄せるのがデメリットとして御主人様(マスター)に影響するのでしょう』


  (……ごめん、分かるように説明して)


『つまりは一度目に使用した際、御主人様(マスター)の背中の傷を回復した為、反動が3日間だったのに対して、今回は魔力の消費のみの反動でしたので、御主人様(マスター)は魔力回復の時間分休眠していたのだと思われます』


  ああ、そういうこと。


「……あのー、ファルさん?」


  ジャックさんの後ろからシャロンが声を掛けてきた。


「大丈夫、少し考えてただけ」


  どうしてシャロンがここにいるのかは分からないが、ひとまずシャロンの魂を移そうかな。


「そこの方から話は聞いています」


「了解」


  なら俺が何をするか分かるだろう。ジャックさん達と同じように魂をシャロンに移した。

  少しの間、目を閉じていたシャロンだったが、やがて誰から見ても興奮しているな、と思える程鼻息を荒くして俺の両手を握ってきた。


「この騒動が終わったら、色々調べさせて頂きますからね!」


「う、うん?」


  ……何を?


「ま、まぁファルが復活した事だし、後は向こうが何とかしてくれるだろうが……お前さん、動けそうか?」


  シャロンの急なテンション上昇に若干引いているジャックさんだが、気を取り直して俺にそう聞いてきた。


「問題は……うん、無いと思う」


  体に痛みは無いし、魔力も問題なく操作できる。大丈夫だろう。


「行くか」


  ジャックさんの声と共に俺達は集落まで転移した。


  しかし、この時のファルは知る(よし)も無かった。









  ……ルシアをジャックの部屋に置き忘れている事を。

オマケ






数十発の弾丸は、ソウガ達の数メートル手前で、まるで彼女らを嫌うかのように全て逸れていった。



原理は、

弾丸に電気の負荷を掛けて電磁石と同じ状態にした後、ソウガが周りに発生させた電気のドームに弾丸磁石が反発、銃弾の軌道を反らした。


という感じで考えています。

元ネタは、分かる人は分かると思いますが、原理の方は無理矢理これで納得した感じなので、間違ってるな、と思っている方は暖かい目で見守って下さい。





SVD(スナイパーライフル)M134(ガトリング)電磁砲(レールガン)と(ry


スナイパーライフル以外、まず人間が一人で持ち上げるのは困難です。

というかそもそもレールガンは、消費する電力や威力云々の影響で弾がプラズマ化したりするようなエネルギーで発砲するので、多分構えて撃った大地本人が発射の衝撃で蒸発する可能性があったりします。

……あまり気にしないで下さい。





「し、失礼な! 私はこれでもCはありますから!」



「……これ(↑)って、結局何が言いたかったんだ?」


シャロン「えっ?」


ジャックは、素で理解していません。

個人的には普通サイズだと思いますが、気にしている辺り魔族からすると小さいのでしょうか?






「子供ですし男の子ですし……そもそも無いじゃないですか」



一応【諸刃の剣】を使った時のファルの肉体年齢は19~20歳ですが、中性的な顔立ちに短髪と男口調(前世男だから)、それに大人の姿になっても無い……Aではなく『無』なので、二人はファルを男だと信じきっています。






大地が異世界語を話せない設定なのを忘れて、前話では普通に会話していましたので、不自然の無い程度に修正させて頂きました。

申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ