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ファル、飛翔

投稿遅れてしまい、大変申し訳ございません……。

リアルが忙しく、全然時間が取れませんでした。

『っつあぁぁぁ落ちるっ……?』


  ディメアが精神世界に戻ったと同時に、ファルが突然叫び声を上げだし、一瞬の()(のち)深い安堵のため息をついた。

  どうやら、精神世界で龍の体を動かす練習中に問答無用でオロチに魂を肉体へ移動させられたようだ。



『……オロチさ、せめて一声掛けて?』


『いやぁ君がどんな反応するのかなぁって気になっちゃってねぇ』


『わりと本気で死ぬかと思ったんだから……』


  飛ぶ練習してて、ミスして落下中に戻されて更に落下……ビルから転落とか、そんなレベルじゃなく怖かったぞ。


『生きてるんだから平気よ』


『そういう問題じゃ……っていうかディメア』


『?』


『出られたんだ』


  突っ込みをいれようとした俺は、声の主であるディメアが先程まで体を動かしていたのを思い出してそう口にした。

  だってほら、魂が俺の技能(スキル)に吸収されちゃったとか言ってたし、オロチとも話したけどどうして外に出られたのか分からないのだ。


『細かい事は私にもわからないわよ。とりあえず一時的に『外』に出られたって事以外は』


  ディメアも分からないのか……。


『それで、もう体は使わなくて良いの?』


  分からないのなら仕方無い、と話題を切り替えた俺。


  この体は元はディメアのものだし、戻れたのなら寧ろそのままの方が良かったのではないか?


『こっちの方が居心地良いのよ』


  居心地良いって……。


『私の事はいいから、先に面倒事を片付けちゃいなさい』


  そう言って無理矢理話題を終わらせたディメア。


  そういえばまだベヒモスの件が残ってたんだな、と物凄く肝心な事態をド忘れしていた俺は、軽く例えて地獄絵図状態の岩石地帯をキョロキョロと見回した。

  視界に映る範囲であるのは、戦闘の衝撃でボコボコになった地面と、かつてそこ(・・)に存在していたであろう岩石の残骸だけであった。


  ……これ、もう戦闘終わった感じなの?



『あの馬鹿が思っていた以上に馬鹿だったお陰で手っ取り早く済んだわ』


『あ、そうなんだ』


  もう既に封印も終わってしまっているのだそう。


  という事は、今俺がすべきはベクトリールに戻って事の顛末を報告するくらいかな。


『よし、そうと決まれば……』


  俺はこの姿の練習をするのも含めてベクトリールに向かうべく、意識を背中に集中させた。

  すると、身体中に衣のようにまとわりついていた薄い膜が剥がれ、宙に浮いて二つの結晶のような纏まりに変化した。

  そして二つの纏まりは、パズルピースのように不規則だがピッタリと重なる六つの破片となり、翼のような形状となってファルの背に収まった。


  いつかディメアが言っていた『翼に似たものならば創れる』というのを思い出し、先ほど精神世界の方で試した結果こうなったのだ。

  なんというか、第一印象がファン○ルなんだよな。


『まだ飛ぶのには慣れてないんだけ……どっ!』


  その場で軽くジャンプし、地上から離れた直後に『飛ぶ』事をイメージしつつ背中に意識を集中させた俺。

  次の瞬間、本来は重力に従って落下していく筈の俺の体は、そんな物理法則に逆らうかのようにその場で滞空しだした。


  後で聞いた話だと、時空属性で俺の回りの大気を含む空間の時間を停止させて……なんだかよく分からない原理でもって空中を自在に移動しているのだとか。


『やっぱり翼は飾りなんだな……』


『姿勢調整と飛行の補助って事でなら、しっかりと役割は担ってると思うわよ』



  そんな会話をしつつミスって何度か落下しそうになりながらも、なんとか空中を移動する事に慣れ始めた俺は、『それじゃあ行くか』と呟きつつベクトリールのある方向へと飛び立った。










『そういえばルシア』


  時々早くなっては減速とスピードを調節しつつ危なげに飛行中の俺は、ふと気になる事があったのでルシアに話し掛けた。

  ちなみに、現在ルシアはシュッツァーと共に俺の甲殻の隙間に挟まっている。


『……ルシア?』


  しかし、普段だったら『いかがしましたでしょうか御主人様(マスター)?』的な反応を返す筈のルシアが、今回は珍しく何の反応も示さない。


『意識が無いんじゃないかしら? あの量の魔力を一度に浴びたんだし』


  気絶……まぁ俺も気持ち悪くなったし、ルシアが生きてるのは分かるから、多分そうなんだろうな。


  俺は少し前に魔力枯渇でルシアが気絶した事を思い出し、特に今知りたい事とかでは無かったのもあって、無理にルシアを起こすのは止める事にした。


『おっ、見えてきた。早いな』


  と、そんなやり取りをしている間に、ベクトリール城の屋根が遥か遠くに見え始めた。

  遠くとは言っても、俺がギリギリ視認できる範囲なのでそこまで距離があるわけではない。


『……うん? あれは』


  もっと速度を上げようかなと思い始めた俺の視界に、広い岩道を一人歩く女性の姿が入ってきた。

  俺の着てた子供用の服をピチピチに着ている……レフィスだ。


『戦いの邪魔だったから適当に(はじ)いておいたの』


  なんでもベヒモスとの戦いの際に、レフィスが互いの攻撃に巻き込まれて死にそうだったという事で、ディメアが攻撃の届かない範囲にまで転移してくれたらしい。


『おーい』


  何故こんな場所にいるのかという疑問も晴れた所で、俺はレフィスに聞こえるような声量でそう吠えた。


  吠えた……というのも、龍である現在の俺の声は、普通に喋っているつもりでもどういうわけか龍の鳴き声となってしまうのだ。

  ……龍の鳴き声というものがどんなものなのかはわからないが。


  まぁ、声が聞こえればひとまずは良いかなと思っているので、今は特に気にしてはいない。

  龍が龍の鳴き声を発するのに変な事なんて一つもないしな。


「……っ!?」


  比較的高めの俺の声を聞き取ったらしいレフィスが、ビクッとしつつ俺の方を見上げた。

  そして、危なげに地面に降り立とうとする俺を見て突然膝を着き、このまま五体同地するんじゃないかという勢いで頭を垂れた。


『えっ……何?』


此度(こたび)の無礼……お許し下さい」


『ちょっ……』


  俺が肉体操作の練習をしていた間に一体何があったのか……。

  思わず声が出てしまった俺は、多分外部からだと『ぐるる……』みたいな声に聞こえていたと思う。


  ……と、


「貴方様が神龍であるとは知らずに、二度にも渡って危害を加えてしまった事……」


  僅かに回復した魔力を右手に込め始めたレフィス。







「この命を以て償い致しま『ちょぉっとぉ!?』きゃっ!」


  何を考えてやがるのか、そんな魔力で強化した腕で自身の喉元を突こうとしたレフィス。

  あまりに急な出来事だったので、無意識的にディメアの技能(スキル)を使用してレフィスを停止、そのまま摘まみ上げてしまった俺。


  うわぁ危なかった……。


「な、何を……」


  意外にも可愛い声を上げたレフィスを自分の目線まで持っていった俺は、言葉が通じないので『馬鹿な事すんな』という意味を込 めて鼻先で小突いた。

  もう片方の腕(足?)で小突くのも悪くはないと思ったが、まだ力加減ができないので怪我させてしまいそうだったので止めた。


「……私は貴方様を冒涜(ぼうとく)したのですよ……ッツ!!」


  なんかまだ変な事を言っていたので、再びペチッとレフィスにアタックした。


『冒涜がどうとか知らんけど、罪滅ぼしとかで死のうとすんのはやめろよな』


  主に俺の心臓に悪いんだよ。


「……」


  二度に渡る俺の妨害(アタック)の意味を理解したのか、腕に込める魔力を解除したレフィスは、未だ煮え切らない表情で俺の顔を覗き込んでいる。






  ……どうしよう。


  自害阻止は出来たが、その後の事を全くもって考えていなかったので、現在指先にぶら下げているレフィスをどうしようか迷っている。


『……取り敢えず、連れていく? こんな場所に置いておいてもあれだし』


『どっちでも構わないわ』


  よし、じゃあ決定。


  特に反対意見も無かったので、俺は摘まんでいるレフィスを額に乗せてふわり、と飛び立った。


  そういえば、レフィスって翼あるから飛べるんだっけ……。




「えっ、えっ……?」


  理解の追い付かない様子のレフィスをスルーし、そのままベクトリールに向かって出発した。

  勿論、俺が今できる限りの安全飛行で、である。





『ビックリする位遅いわね……』


『ボクは飛べないけどぉ、絶対に追い抜ける自信があるよぉ』

オマケ。





第一印象がファン○ル。



破片のような翼一つ一つの見た目は、どちらかといえば『直球自由(直訳)』の名前を冠するアレのドラ○ーンみたいな形状です。





遠くとは言っても、俺がギリギリ視認できる範囲(ry



現在のファルの視力は、数キロ離れている物体を視認できるレベルです。

……自覚無しというのが恐ろしい。





『ビックリする位遅いわね……』



車の仮免許を取得したばっかりの人が高速道路を走っている、それをご想像戴ければ分かりやすいかと。

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