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レフィスの嘆き

投稿遅れてしまい、申し訳ございません。

  ルーガがトイドルを無力化し、ベクトリール城を飛び出してから数分。

  大地を司る神龍ベヒモスは、自身の封印が完全に解かれたのか、地上へ向けて地盤を破壊しながら進んでいた。


  およそ生物とは思えないようなサイズ、水を泳ぐように岩盤を突き進む力……成る程神龍と呼ばれるだけの事はあるだろう。



(吾が輩があそこまで苦するとはな)


  圧倒的な速度で地上へと上っていくベヒモスは、ふとたった今岩の下敷きにした子供を思い返していた。


  自身の能力を打ち消す程の力をもつ、自身と同等の存在、闇を司る神龍ヤマタノオロチを身に宿す龍人(ドラゴニュート)の子供に少なからず興味を抱いたからである。


(吾が輩の僕を寄せ付けぬ強さも持ち合わせていた。下すには惜しかったやもしれぬな)


  神龍からしたらこの上なく最高の賛辞なのだろう。

  しかしそれでも目的は目的。大陸を新たに作り直すという目的を達成すべく、ベヒモスは上昇の速度を更に上げていった。










「……うぅ、んっ」


  ベヒモスによって破壊された洞窟の最深部で、岩の生き埋めとなっていたファルが目を覚ました。

  天井に潰される寸前に自身に残された全魔力を使用して結界を張っていた事が幸いし、目立った怪我は見られない。


(……どれくらい眠ってた?)


  【諸刃の剣】と同じようなリスクを伴う【代償強化】を解除して意識を失う、つまりは魔力が回復するまでは決して目覚めることがないという事だ。


  俺が寝てた間にベヒモスが地上で暴れでもしたらマズイからな、これは聞いとかなきゃ、


『およそ三十五分です』


(……あ、あれ? なんかそこまで経ってない気が……)


  ルシアから時間を聞き、それが予想していた以上に早かった事に軽く驚きを(あらわ)にした俺。


  だってさ、これまでは無傷で魔力切れた時でも半日近く寝てたんだぜ?

  流石にこれは早すぎというものではないだろうか?


『何回も使っているから、体の方が慣れちゃったんじゃないかしら』


(慣れるとインターバルが短くなるのか?)


『肉体の順応によって効果が上がる技能(もの)はございます。耐性系統のものが良い例かと』


  成る程な。

  確かに今思うと、リスクが高いとはいえ結構使ってたし、魔力の回復するスピードが増えるのは当然か。


  と、瓦礫の下でしょうもない疑問に納得したところで、ひとまず本題に入るとするか。



「……おーい、起きろ」


「んっ……ぅ」


  俺は懐の辺りで気絶しているレフィスを軽く叩いて起こした。


「っ!? ここは……」


「元洞窟。敵に介抱されてる気分はどう?」


「……どうして助けた?」


  軽くジョークを言って警戒を和らげようと思ったのだが、どうやら逆効果だったみたいだ。逆に警戒を強めさせてしまった。


  しかし状況が状況なので逃げたり暴れたりといった行動は起こさず、俺の方を軽く睨むだけに留めている。


「……こんな事をされても、私は君の事を信用なんてしないことは承知の筈」


「その辺は気にしないで。俺もアンタを信用してる訳じゃないから」


「ならどうして……」

「……取り敢えずさ、まずは此処から出ない?」


  俺の言葉にむきになったのか、ずいっと顔を近付けて俺にそう問うてきたレフィスに、ひとまず俺は広い場所に出ようという提案をした。


  それは勿論、この密閉された押入れみたいな狭い空間じゃあ酸素が足りなくなるのが時間の問題、というのもあるが……そんな狭い空間で目の前には素っ裸の女性という構図、これは色々な意味でマズイのである。


  ……胸押し付けられてるし、近いし。


「このままじゃ二人とも死ぬよ?」


「……置いていけば良い。どうせ私には魔力は残ってない」


「そんな事しねーよ。子供か」


  思わず突っ込みをしてしまった俺。


「上まで連れてってやるから」


「……「はいレッツゴー」っ……!?」


  何かを言いたそうな目で見てきたレフィスを完全にスルーして転移魔法を発動させた俺。

  目的地は、ひとまず人がいないだろう洞窟の入り口にしておいた。






「っと、到着」


「……山が」


  無事に転移を終え、同じ体制で長時間いて凝った体をコキコキと伸ばして(ほぐ)した俺は、レフィスの第一声に「うん?」と顔を上げた。


  視線を上げた先、ベヒモスの眠っていた山脈と見間違える程巨大な(バベル)があった筈のその場所は、今はその半分が抉れて崩れ去っていた。

  ほんの少しの衝撃でも崩れてしまいそうな程に酷いその有り様は、山だけではなく周囲の山脈にも見られた。


「地上に出ただけでこの被害か……。ディメアありがと」


『私は『止めた』だけよ』


  ディメアがマグマのエネルギーに干渉してくれなかったら、間違いなく終わってたな、と崩れかけの山を見つつそう感謝の言葉を口にした俺は、目の前にレフィスがいたことを思い出して慌てて口を閉じた。


「……ディメ「よ、よし、無事に脱出できたみたいだな!」……」


  物凄く訝しげな視線を向けてくるレフィスをスルーしつつ、俺はライムに連絡を取った。


『ライム、そっちの様子は?』


『皆避難させてる。龍はまだ来てない』


  どうやら、エグルフさんやグレイの協力もあって避難の方はかなり順調らしい。

  ベヒモスがまだベクトリールに到着してないとなると、まだ猶予は少し残っているみたいだ。


  ならこっちの方でも、ベヒモスに備えて準備とかを済ませちゃうかな。


「……取り敢えず服着ない?」


  思い立ったら動くが早いか、レフィスが何も着ていない事を思い出してそう言ったファル。


「私には必要ない」


「俺達にとっては必要なんだよ。ほら、ちっさいけど着て」


  寒さを感じないどころか、羞恥心までも感じないというのだろうか? と呆れつつ、俺は上着とズボンを脱いでレフィスに手渡した。

  ちゃんと下着(男子用)も装備してるし、裸じゃないだけ大丈夫だろ。


「せめて必要部分だけでも隠してくれ」


「……」


  つい先ほどまで敵同士であったのが嘘だったかのようなやり取りをしている二人。


  レフィスは嫌そうな表情を僅かに浮かべつつも、ファルの言うことを聞くように上着を羽織りズボンを履いた。


  ……子供用の服を大人が無理矢理着ているのでなんというか、とても奇抜なデザインの水着を着ているような感じになっている。


「胸が……」


「それは我慢して」


  恐らく標準以上の胸囲(比較対象無し)のレフィスが子供用の服を来ているからだろう。凄く窮屈そうにしている。


「さて、俺は今からベヒモスを止めに行くけど、アンタはどうする? 俺を止める?」


  俺のその一言に、白黒両対の翼をピクリと反応させたレフィス。

  そしてその後暫く(うつむ)き気味に、翼をはためかせていたレフィス。


  ……なんだろう。表情は殆ど変化無いのに凄い考えてるんだな、っていうのが翼の動きだけで分かっちゃう。


「一回はアンタを使い捨てにした相手だけど、まだそっちに着くっていうのなら、なにも言わずに立ち去った方が良いよ」


「……」


  あ、さっきよりも翼の動きが激しい。


「……君は神を信じる?」


「えっ、何突然?」


  翼をはためかせて考え抜いた末にたどり着いたらしい言葉は、何やら哲学的な質問であった。

  まぁベヒモスの件を言ってるのだろうが。


「私は信じていた。今もそう」


「まぁ、アイツ(ベヒモス)は神龍だろうけど」


  土属性の全てを司っているっていう点では間違いなく神だろうな。あんなんでも。


「神は……私達をどう見ているんだろう」


「それは本人に聞かなきゃ分からないだろうけど……」


「……神からしてみたら、私は道具のひとつだったのかな」


  後半になるにつれて弱々しくなっていくレフィスの声。


  もしやと思い【解析鑑定】を発動させると、ああなるほど、とレフィスの内情を察するには十分な結果が見えた。


  レフィスの称号の中から【土砦龍の祝福】が消えていたのだ。


『そこの鳥に同情する訳ではないけれど、分かったでしょう? 私達があれを嫌う理由』


  ……成る程、よく分かった。


  出会って早々からベヒモスに対しては苦手意識があったが、今のレフィスを見て、あの龍に対しての評価が改まった。




「……着いてきなよ」


「えっ」


  俺の一言に顔を上げたレフィス。

  ……前世も含めて、かなり久し振りだな。俺が本気でキレたのは。


「神がどうとか、俺達の扱いとかはどうだって良いさ。けども、あの龍はちょっと許す訳にはいかない」


  今にも溢れ出そうな怒りをなんとか抑えつつ、俺はそう口にしてレフィスに手を差し出した。


「アンタにとっての神っていうのを、再確認するには丁度良いんじゃない?」

オマケ





恐らく標準以上の胸囲『(比較対象無し)』


ファルがこれまで裸の付き合いをしてきた相手は、大体が貧nゲフンゲフン……サイズの(ルーガ)小さい(ライアン)相手(ライム)ばかり(砂糖)だったので、ファルは胸の標準サイズというものに関する知識を持ち合わせておりません。

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