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土砦龍

投稿遅れてしまい、申し訳ございません。

  オロチ人形が魔力を解放した直後、周囲の青や緑色に輝いていた鉱石が一様に紫色へと変わり、やがてオロチの発する魔力と同じような不快色へと変貌を遂げた。

  どうやらこの鉱石は魔力の違いで色が変化するらしい……。


  ってそうじゃなくて!


「ちょっ……(オロチ! 何やってんの!?)」


  はっと我に返った俺は、慌ててオロチ人形を拾い上げた。

  魔力を抑えた状態で少し触れただけで一時的な精神異常とか引き起こすような相手にとって危険な行為、流石に白ローブを今ここで殺す訳にはいかないだろう、という考えでの行為である。


『大丈夫だよぉ。別に攻撃に使う訳じゃあないからぁ』


『よく周りを見なさい』


  もう既に「この後どうしよう……」的なテンションになってしまっている俺に、二柱がそう言って心配ないという事を伝えてきた。


  周りをよく見ろって……。


「……あれ? アイツ平気なの?」


  明らかオロチ人形から発せられる魔力の範囲内にいる筈の白ローブだが、影響を受けていないのか平然と立っている。

  おかしいな……人形の状態で魔力を放出してるからかな?


『違うよぉ。闇呪龍(ボク)の魔力で土砦龍(兄さん)の魔力を打ち消しただけだよぉ』


(打ち消す?)


『兄さんのは周囲に影響を与えちゃうレベルで強力だからねぇ、ボクも同じくらいの魔力を放出してお互いの効果を打ち消したんだぁ』


  な、成る程。

  簡単に言うと、ベヒモス本体から漏れ出る超重力が働く魔力を、オロチの触れただけで呪われる魔力でもって打ち消し、この空間を『なんとか』人間が活動可能な空間に変化させたらしい。


  酸性(オロチの魔力)アルカリ性(ベヒモスの魔力)を混ぜたら中性になるという感じか。


「なん……こ、この魔力は……!? ベヒモス様の加護が……」


  白ローブがこれまでに無い程に驚いている。


  まぁ、そりゃそうか。


「俺も、あの空間内じゃ思うように動けないからね。……ね、念のために対策しておいて良かったよ」


『うわぁ、手柄の横取りだぁ』


(あ、相手を警戒させる為の作戦だよ!)


  ぶーぶー、ともっともブーイングを浴びせてきたオロチにそう言い、不本意ながらも納得させた俺。

  心理戦ダイジ。


「そ、その人形の持つ魔力……ベヒモス様と同等という事……?」


『いい加減その『様』付けを止めなさい。はっ倒すわよ』


  白ローブのベヒモスに対しての呼び名に、苛立ちを隠す事なく向けているディメア。


「……まぁいいや」


  俺は、オロチの活躍によって入れるようになった鉱石地帯へ足を踏み入れ、ショックからか項垂れている白ローブに向かって歩を進めた。

  ベヒモスの封印に神具の処分、やらねばならない事が山積みなのだ。


「……その人形は何?」


「うーん、ベヒモス復活の方法を知ってる、その手の専門家の乗り移った人形?」


  俺はトイドルの屋敷での会話を思い出し、そう適当にはぐらかした。

  なんというか、どこでベヒモスが聞いてるのか分からないような状況で軽々しく神龍(身内)の名前を言ってはいけないような気がしたのである。


「あの本はどこ?」


「……あるべき所にお返しした」


  あるべき所……ベヒモスの所だろうか。


「ベヒモスの魂は?」


「……」


  と、ここで沈黙モードに入られてしまった。

  やっぱりそればかりは言う訳にもいかないだろうな。


「……まぁどちらにせよ、見つけ出して片付けるつもりだけど」


  そう言いつつ、白ローブの目の前までたどり着いた俺は、未だにその場から動こうとしない白ローブに警戒しつつも、攻撃も回避もするつもりは無いと言わんばかりのその様子から、好奇心のままに【解析鑑定】を発動させた。






  名前:レフィス


  種族:天魔族


  技能(スキル)

  コモン:【光属性攻撃&魔法&耐性強化】【闇属性攻撃&魔法&耐性強化】【物理攻撃&耐性弱化】【高速思考】……etc.

  ユニーク:【読解者(ヨミトクモノ)


  称号:【土砦龍の祝福】【堕天セシ聖者】





  あれ……前は無効化されたのに、なんで今は普通に能力値(ステータス)見れるんだ?


『例の本による妨害が無い……あっ』


(どうし『彼女から距離を取って下さい』……っと、どうした?)


  何やら発見したらしいルシアが、俺にそう言って回避を促した。

  俺も慣れたもので、「何かあった?」という疑問が浮かぶより先に体が動いた。


『相手から流れる魔力が大きく変化しました。これは……』


『ええ。『移った』わね』


「(えっ、移っ)……とわっ!?」


  二名の言葉に首を傾げるだけだった俺は、地面から生えるように飛び出し、俺に向かって襲ってきた岩石を紙一重で避けた。

  先が鋭利なアイスピックのように尖っている岩は、俺を外れたにも関わらずズンズンと伸びていき、やがて天井に激突して止まった。


「攻撃……油断させる為の作戦?」


『違うわ』





『……うまく隠したつもりなのだがな』


  先程まで全く動く気配のなかった……白ローブ改めレフィスは、これまでとは似ても似つかない重低音の声でそう喋り、ゆっくりと上体を上げた。

  相変わらずローブの下の顔は分からないが、レフィスの体から迸り始めた圧力を感じるような魔力に、俺は妙な既視感(デジャヴ)を覚えた。


「……【憑依操作】?」


  俺がライムの攻撃によって死にかけた際、オロチが使用したらしい技能(スキル)


  そのお陰で俺は窮地を脱する事ができた訳だが……成る程。


「魂はレフィスの中に潜んでた訳か」


  ゆらっとふらつくような足取りで立ち上がったレフィスは、口元を僅かに歪め、これまで以上に強力な魔力を放出した。







『我輩は七星龍が一柱、大地を司りし神龍【土砦龍 ベヒモス】(なり)


「はあ……」


  ……大仰な身振り手振り、そして台詞でもって自身の名を口にしたソイツは、俺達が封印する対象であり黒幕のベヒモスその人であった。


  なんというか、古いゲームとかアニメの魔王みたいな喋り方にとてつもない違和感がするんだが……。


『……ファル、奴を殺りなさい。速攻でカタを付けるわよ』


「ひっ……」


  かつてない程の怒気を孕んだディメアのその声に、思わず小さな悲鳴が洩れてしまった俺。

  身内(ベヒモス)が嫌いなのはもう十分()かったからさ、俺にその怒気を当てるのは勘弁してくれ……。


()の依代は使い勝手が悪いな』


  俺の中で起こっている事など知った事無しといった様子で(実際関係ないのだが)そう呟いたベヒモスは、何を考えたのかおもむろにローブを脱ぎ始めた。


「一体何を――ッッ!?」





  ローブを脱ぎ捨てたベヒモスを見て何をしでかすのか? と警戒を強めた俺は、次の瞬間思わず目を反らしてしまった。


  純白のローブの下から顕れたレフィスの姿は、白い髪に数束の黒髪が混ざったロングヘアー。背には巨大な翼竜のような翼と、天使のイメージに合った美しい翼が、左右に一対ずつ生えていた。


  ……だけ(・・)である。



  どうやら彼女の纏っていたローブは、その大きな翼を隠すと同時に、インナーとしての役割も担っていたらしい。

  ……つまりは、全裸なのである。


御主人様(マスター)、あれは決して彼女の意思ではないという事だけは覚えて下さい』


(言われなくても分かってるから!)


  俺が彼女に対して変な視線でも向けてたのか? ルシアがそんないらん訂正を入れてきた。


  いや……ね? 元男として別に何も思ってない訳では無いけどさ、場合を考えようぜ? 少なくとも俺は操られてる人物に対してそういう感情を向けるような人間では無いと断言するぞ。

  ……そもそも裸体くらいじゃ何とも思わないし。


「何をするつもり?」


『此の依代では我輩の力では耐えきれぬ(ゆえ)


  律儀にも俺の問いかけに答えるベヒモスは、脱ぎ捨てたローブに魔力を通しはじめた。






  と、魔力をローブに送るという不思議な行動を行っていたベヒモスが突然倒れ、同時にローブが独りでに宙を舞いはじめたのだ。

  そして不自然に膨らみ、黒いもやの様なものがローブを中に現れた。


『ベヒモスの魂が単独で行動を開始しました。ローブは……不明です』


『あ、それは気にしなくて良いよぉ。兄さんは見栄えだけはしっかりしなくちゃ気がすまないタイプなだけだからぁ』


  ……たかが見栄えで女性の服を、ねぇ。


  俺は、ディメアやオロチがベヒモスを嫌っている理由が少し分かった気がした。


『分かってくれたのなら何より。それじゃあ殺っちゃいなさい』




『……ふむ、多少は無理が効くだろうか』


  ふわふわと浮いているベヒモスは、そう呟いて魔力を腕の部分に集中させた。






『さて、神罰を受けるが良い』

オマケ





『なんとか』人間が活動可能な空間に変化させた(ry



属性の影響を受けないだけであって周囲に充満する魔力の量は変わらないので、普通の人間は相変わらず生きてはいけないような空間なんだそうです。





……そもそも裸体くらいじゃ何とも思わないし。



前世。


「おーい、風呂まだかぁ?」


「まだ入ってるぞ……って、普通に入ってくんなよ……」


「おっ、何だ? 興奮でもしてんのか?」


「馬鹿言え。もう見飽きたわ」


「うわぁ酷ぇ」


「ただでさえ狭いんだからよ……ゆっくり入らせてくれ」


「お前のゆっくりは滅茶苦茶長いじゃんよ。こうでもしなきゃお前は出ないし」


注:砂糖は女です。居候中の出来事なのだとか(吐血)





ローブが独りでに宙を舞いはじめた。



バッチリ見たら開眼しそうなフードのアイツみたいな感じだと思ってもらえると分かりやすいかと。

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