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技能作り

『という訳で考えるのに協力してもらうわよ』


(どういう訳で何を考えれば良いのかを教えてほしいんだけど……)





  ライアンに温泉へ連行されルーガに弄ばれ、 時間も遅いという事で二人が帰った今日今頃、主に精神的に疲れてベッドに横になると同時に突然そんな風に話を切り出されて反応に困ってしまった俺。

  普通、なんの脈絡もなく「考えろ」って言われて瞬時に反応できる? ……いつの間にか聞き流してたりしたのかな。


『もおぉ、姉さんはいつも主語が抜けてるんだからぁ』


  別に俺が聞き逃していたという訳ではないようだ。代わりにオロチが説明をしてくれた。




『えっとねぇ……兄さんが復活したらぁこの島が大変な事になるじゃぁん? そうなるとボク達も色々困っちゃうんだよねぇ』


(それを何とかする方法を俺も考えれば良い、って事?)


  それなら寧ろ進んで参加するよ、と引き受けようとした俺は、ふとあることに気が付いた。


(でもそれって、俺よりもルシアの方が適役なんじゃないの?)


  魔力がどうのこうのという類いの話は俺にはサッパリであるし、作戦を練るにしても歩くG◯◯gle先生であるルシアの方が、的確な計画を立案する事ができるのではないのだろうか?


『いやいやぁ、ボク達は想像力豊かそうな君に頼みたいんだよぉ』


  という事らしい。想像力豊か、というのは少し引っ掛かりを覚えるが、俺にもできるものらしい事は理解した。


(それで、俺は何を?)


『ボク達にさぁ、新しい技能(スキル)のアイデアを色々考えて欲しいんだぁ』


(アイデア……)


『ほらぁ、ボク達って属性を司ってる龍だしぃ? 技能(スキル)を一から生み出せるんだよぉ』


  そういえば前にも似たような事を言ってたな。

  つまりは、俺にベヒモスの復活した時の被害を抑えられるような技能(スキル)を考えてくれ、という事か。


(これは無理……みたいな基準ってある?)


『ボクの()とか姉さんの時空(・・)以外の属性はちょっと無理かなぁ』


『私達の属性を使っているのなら魔力の消費量が増減するだけだから、突拍子のないアイデアでも大丈夫よ』


  ……簡単にいうと、魔力の消費量が技能(スキル)の性能に比例して多くなるだけであって、とてつもなく無茶なものでも技能(スキル)として創造できる……と。

  それでもって俺は【諸刃の剣】で魔力消費を抑える事ができるから……チートの度合いがとんでもなさ過ぎるな、これ。


(俺なんかの考えがヒントになったりするのかな……)


  俺なんか体を動かす以外に能なんて無いぞ。


『面白そうなものを考えそうなのよね、貴方』


(そんな理由だった……!?)


  能力を買われたとか思ってた訳では無いが、そういう理由で頼まれる事というのは、果たして喜んで良いものなのだろうか……。


『だって君っていつも面白い作戦を思い付くじゃぁん? 落とし穴とかさぁ』


  あのときはあれしか思い付かなかったんだもんよ、成功したから結果オーライだったけど。


(ちなみに、二人の考えてる候補としてはどんなものがあるの?)


『ボクの意思を別の器に移動させるとかかなぁ』


  オロチの話だと、やはりこの体の中ではやれる事が限られてしまうので、一時的だとしても自在に動かせる肉体が欲しいのだそう。

  それって【魂離脱(ソウルリーブ)】からの【反魂(リザレクション)】で簡単にできる事なんじゃないの? ……いやまぁ決して簡単という訳ではないが。


『君のやったあの方法はねぇ、無駄に手順踏まなきゃだし面倒なんだよぉ。そもそも【魂離脱(ソウルリーブ)】じゃあボクは出られないし』


  オロチ曰く、自身の魂は【万物吸収】のせいでこの体と一体化しかけていて出られなくなっており、肉体と魂を分離する【魂離脱(ソウルリーブ)】は意味を為さないのだとか。


『操る系統の技能(スキル)はボクの得意分野だしぃ、君の中から遠隔操作で操れば良いかなぁってねぇ』


  技能(スキル)自体は俺の中からでも遠隔操作で操れるらしい。


『魂と器の回線は私の力で何とかするにしても、貴方の魂を支えきれるような器を持ってる生物なんて多分絶対見つからないわよ』


『そこが問題なんだよねぇ……』


  問題点があるとすればぁ、とオロチが幾つか挙げていった。




  一つ目は『器』。

  前々からディメア達の口からも出てきたりしていたが、これは例えると『データの容量』である。

  これは大きく二つ、『肉体の器』と『魂の器』に分ける事が可能で、肉体の器には魂が、魂の器には技能(スキル)が入るらしい。

  簡単にいうとマトリョーシカのような感じだ。


  ちなみに、この器の容量が限界値を越えると器が崩壊してしまい、最悪の場合精神崩壊……良くても精神異常を引き起こしてしまうのだとか。


  と、器の説明はこの辺にしておいて本題に入るが、単刀直入にいうとオロチの魂は巨大過ぎるのだ。

  勿論神龍だから魂が普通とは違うのは当然だが、呪い(闇属性)を司るオロチの魂は更に特別危険で、それらに抵抗を持っていない器を使ってしまうと、オロチの魂に器が侵食されてしまい、色々もマズイ事になってしまうのだとか。


  俺個人としては「色々マズイ」という部分が物凄く気になったが、意味深な笑みを浮かべるだけで教えてはくれなかった。





  二つ目は『魔力』。


  万が一オロチの魂に耐えきれた器を得たとしても、オロチが技能(スキル)を放てなければ意味がない。

  というのも、魔力自体は宿主自身の保有魔力に依存してしまうので、魔力量の少ない宿主だったら戦力外確定なのである。





  そして三つ目、これが最も重要な事なのだが……。




(……そんな優秀な宿主が見つかったとして、その人物が「はい良いですよ」って快く承諾する訳が無いもんね)


『そこなんだよぉ』


  対象を操作する技能(スキル)、もとい闇属性の攻撃は、強力になればなるほど複雑化して抵抗され易くなってしまうのだとか。

  ナフール()がマグナさんに使用していた【意思勧誘】は意思を誘導するだけの単純なものだったのでルシアも気付く事ができなかった。これがその良い例だろう。


  つまり、仮に上記の二つの問題をクリアした器を持っている人物がいたとしても、オロチ程の力をそのまま使用可能にするような技能(スキル)は簡単に抵抗されてしまう可能性が高いのである。





『そう考えると、今のこの状態がベストなのよね』


『だよねぇ。一番身近で全部クリアしてる人物っていうと君くらいだしぃ、というか君が異常なだけなんだけどねぇ』



  確かにそうだよな。


  そもそも一つの体に複数人入るなんて事自体がまず有り得ないような状態なのに神龍が二柱も入ってるし、どちらも俺の魂の中で技能(スキル)として存在しているのだ。


  肉体と魂、両方の器に神龍の魂が存在しているなんて、普通は考えられないだろう。



(……ねぇ、操作するのって生きた肉体だけしか無理なの?)


『ん~? どゆことぉ?』


(いや、肉体とか魂の器っていうのを一から作って、それにオロチが乗り移れればな、って思ってさ)


  俺が思い付いたのは、魂を移しても差し支えがない生物を探すのではなく、新たに器を作ってしまえば良いのではないのだろうか? という事である。

  つまりは人形を作って、それにオロチが乗り移ってもらうという事だ。


傀儡(くぐつ)かぁ……ボクの魂に適応するようなものがあるのかなぁ』


(適応?)


  魂の存在しない器ならば、容量も関係無しに使用する事ができるし、魔力は外部から直接供給すれば済むのではないか?


『魂が存在しないから、こそ難しいのよ』


『当たり前だけど人形は魂を保存するのには適してなくてさぁ、作られた器だと、ボクの魂と適応しなくちゃ器は粉々になっちゃうんだぁ』


  つまりは臓器移植(人形に魂を移す)をしても、それが適合しなかったら拒絶反応(器が崩壊)を起こしてしまうのだという。

  結構良い例えじゃなかった? 今の。


  とはいえ、そう上手くはいかないか。


『でもぉ、確かに傀儡を使うっていう考えは盲点だったなぁ』


  しかしどうやら、オロチ自身は反対ではないらしい。わりと本気で残念がっている様子だ。


『一つ(うかが)いたいのですが……』


  と、今まで静聴を決め込んでいたルシアが口を開いた。……剣なので口は存在しないが。


『オロチ様は現在、【万物吸収】で御主人様(マスター)の魂に吸収、およそ四割弱ほど技能(スキル)という形で統合されている……という事で間違いはございませんでしょうか?』


『そうだよぉ。だからボクが使う技能(スキル)の魔力は全部このコの魔力から戴く感じなんだぁ』


  ルシアが『魂が技能(スキル)に統合』と言っていたが、オロチは今、俺の中で【闇呪龍の誓い(ヤマタノオロチ)】という名前の神技能(ゴッドスキル)として存在している。

  俺が【諸刃の剣】を使用する事により発動が可能になるが、オロチの危険性から多分使わないと思う。


『という事は、現在のオロチ様は御主人様(マスター)の魔力にも適応している……と考えても宜しいでしょうか?』


『多分大丈夫だよぉ。でもさぁ、それがどおしたのぉ? 傀儡を使うなら長時間ボクかファルの魔力に馴染ませないといけないから、結局兄さんの復活には間に合わなくなっちゃうよぉ?』


御主人様(マスター)の魔力を長時間受け、自己修復能力を得る程に質の上がった素材がございますが、これを基に傀儡を作成できないものでしょうか』


(自己修復する布? そんなん持ってな……あっ!)


『……そういえばあったわね、あの森で採ったのが』


  俺はルシア言っている素材を察して声を上げ、纏っているマントを脱いだ。


  俺がこの世界に転生して、取り敢えず身に纏えるものというので採取した『エトッフラワー』という布のような植物、それを加工したマントである。

  今までは服のサイズを調整するために着用していてあまり意識していなかったが、このマントは一部が破損しても数分で復元するという性能を持っているのだ。

  これまで腕を持っていかれたり腹を貫かれたり爆発で服が消し飛んだりしたが、いずれもこのマントだけは無傷で手元に戻ってくるのである。


御主人様(マスター)の魔力を長時間浴びた結果品質上昇(グレードアップ)したものと推測します』


  ルシアがそう説明をしてくれた。


『なるほどぉ! その布を使って傀儡を作れば、確かにボクの魂にも耐えられるような器ができるかもしれないよぉ!』


  おぉ、途端に活路が見出だせてきたな。

  ちなみに、エトッフラワーの葉は【多次元収納】の中にそこそこの量が保管してあるので、少し大きめの縫いぐるみ程度の人形が作成可能である。


『それじゃあボク達は早速技能(スキル)の創造をするからぁ、使えそうな技能(スキル)のアイデアと傀儡作りをお願いねぇ!』


(任せて)







  久々の人形作り、腕が鳴るな。

オマケ





『器』


肉体の器=スマホ本体のストレージ容量

魂の器=スマホに使用するメモリーカードの中のストレージ容量


というように考えていただけると宜しいかと。





つまりは人形を作って、それにオロチが乗り移ってもらうという(ry



某殺人人形みたいなものです。





久々の人形作り、腕が鳴るな。



――前世の学生時代


(にい)! 私にも縫いぐるみ作って!」


「突然どうした、凌」


「須雅(にい)(にい)に人形作ってもらったって」


「店に飾るものが欲しいって事で作っただけなんだけどな……」


「それでも!」


「はいはい。犬? 猫?」


「ヘビ!」


「……」



この時凌はまだ子供、厨二病はまだ患っていなかったらしい。

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