白雨と去りし街

天降（あまくだ）る露（つゆ）の軒を訪（おとな）いし

日も潜みたる

午の頃就（な）りけり

吾（われ）独り

破果（やれは）てにける

家を見き

昨日の古家（ふるや）は塔と就り

今しもに

街は瓦を失えん

いと静けきや今日の街

人の少しは転ずるも

けどおし今日も過去（すぎさ）りぬ

静謐（せいひつ）と知人の面（かお）も消（け）ぬ世中（せちゅう）

有るものも

街と共に消えしはかなさ

美花も散去（ちりさ）り鉄の埋（う）む

道を蹴（け）す度

鉄の音よ耳の痛しに

吾去りぬ頃に街は変り行き

吾の帰るば

森と就らんや

雨の去りて今日の街

吾独り

潰（つい）えしさだめの家を目指しぬ