6 始動
「会長、計画書ができましたので、確認と判をお願いします」
「了解。──ふむ、では告知のプリントとレポート用紙の作成をし、明後日には配布できるよう、手配してくれ」
「分かりました」
「会長! 教師陣が思ったよりも手強いです!」
「お前の言い方が悪かったんじゃないか? 益城!加勢してこい!」
「分かりました!」
翌、月曜日。僕らは早速教師の許可を得たり、計画書(案)を作成したりと、慌ただしい放課後を過ごしていた。
「カレンさん! 先生になんて説明したんですか?」
「『生徒の闘志を燃やすために、生徒会が学校の施設を占拠して、役員が利用券を巡ってバトルします!』って説明したよ?」
「言ってる内容は間違ってないのに、想起されるのは血沸き肉躍る少年漫画のような光景だよ!」
「そうですか? 日本語ってムズカシイネ」
「ふざけないでくださいよ! そんなんじゃ誰も許可しませんよ!」
「えぇ~」
そんな会話をしていると、職員室に着いた。「失礼します」と一礼し、運動部総括の先生の席の場所に向かう。
「生徒会役員の益城です。カレンさ──桑鶴さんの説明が不十分だったようなので、僕が説明に来ました」
「おお、益城か。桑鶴の説明ではイマイチ分からなくてな。助かるよ」
ちらと桑鶴さんを見て、苦笑する先生。「ダメだ」と一蹴しなかったのは、きっとカレンさんの語彙力のなさと、彼女のスポーツへの愛ゆえに、他に意図があると信じてくれたのだろう。
「役員がグラウンドや部室などの学校施設を利用する際、利用者に申請を義務付けます。申請の際、役員と小テストの点で勝負をして、申請者が勝てば、一週間分の利用証を発行します。また、部活やグループ単位の申請の場合、二回目以降はそのグループの別の生徒が申請に来なければならないというようにすることで、皆が勉強するように仕向ける──ということなんですが、よろしいでしょうか?」
カレンさんが提案したものとは少し言い方が違うけれど、こちらの方が分かりやすいと思って、言い方を変えてみたがどうだろう……。
先生を見ると、少し考えるような素振りを見せて、僕らに向き直った。
「確かにそれだと学力向上を図ることは可能だ。だが、諸刃の剣だということを覚えておけ。あと、部活同士の諍いが起こった場合はどうするんだ?」
「その場合は──」
しまった! そこまで考えが至らなかった……。
答えに窮したその時、意外なことにカレンさんが助け船を出してくれる。
「その場合は、私が鎮圧します。そのための生徒会役員ですから」
「しかしな……」
「先生。リスクを恐れては何事も成すことはできないんですよ?」
「…………」
「先生、僕からもお願いします。確かに少々強引ではあります。しかし、部活と勉強をリンクさせて考える機会を設けることで、必ずすべての生徒が文武両道できるようになると思うんです!」
僕も、今が攻め時とばかりに、カレンさんに加勢する。
と、ついに先生が折れた。
「分かった。とりあえずやってみろ。ただし、暴動が起きたり、生徒の不満が多いようなら直ちにやめてもらう。いいな?」
「「ありがとうございます!」」
これで一件落着。先生にもう一度礼を言い、退室する。
廊下に出ると、カレンさんが屈託のない笑みを浮かべて、ピースサインを作った。
「やったねレン! 助かったよ! ありがとう!」
「いやいや、カレンさんが助け船を出してくれたからうまくいったんだよ」
「たすけ……ぶね? よく分かんないけど、めでたしめでたしだね! それじゃ私は早速会長に報告してくるよ!」
そう言って、あっという間に去って行くカレンさん。相変わらず身体能力が人間離れしている。
「……とりあえず第一関門はクリアというところかな?」
ぽつりとつぶやいて、僕もすでに見えなくなったカレンさんの後を追って、生徒会室に戻った。
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さて、次回更新ですが、14日(木)を予定しております。サブタイトルは「7 暗雲」です。
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では、また次回。