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4 会議

「はい!」

「桑鶴」

 会長がカレンさんを指名し、皆がカレンさんに注目する。

「私は、現実を知らしめることが大事だと思います!」

「ほう……詳しく聞かせてもらおうか」

「まず、役員が学校施設──例えば、グラウンドや部室を占拠します。そして、当然部活ができなくなるわけなので、部員は困ります。そこで、施設の利用券を用意して、役員と小テスト勝負して勝てば利用権を一週間獲得することができるという風にします。そして、グラウンドや体育館などの重要度が高い場所については、会長やひなたが戦って、私やレンのような成績が悪い組と勝負することにします。こんなところでどうでしょう?」

「ふむ……なかなか考えられている。赤穂、メモを──っと、用意がいいな。いい心がけだ」

 そこでカレンさんの意見をメモしていたらしい玲子が手を止め、顔を上げる。

「その程度のことで褒められても嬉しくありませんから」

 満面の笑みで応える玲子からは、どことなく修羅を感じさせるほどに、敵意むき出しだった。理由は……よく分からない。

 玲子は昔から何を考えているか分からない時がある。しかも、十中八九僕関連のことで。

 どうかしたのかという視線を送ってみるけど、無視された。

「それでは、他に意見がある者は?」

「はい」

「赤穂」

 今度は肩の高さで手を挙げた玲子が意見を言うようだ。

「私は、HRの前に読書時間を設け、その本についてのレポートを提出する義務を課すという取り組みを提案します」

「詳しく聞こうか」

「人間というのは、必ずしも興味のあることというのは存在します。ですから、興味のある本を読むことで読解力をつけ、さらに知識を増やします。また、レポートを提出する義務を課すことで文章力をつけることもできますし、一石三鳥だと思います」

「なるほど。これはすぐに取り組めそうだな……。とりあえずメモしておいてくれ。ほかに意見のある者──と言っても、神崎と益城しかいないわけだが、なにか意見はあるか?」

 会長に視線を向けられ、顔を見合わせる神崎さんと僕。

 神崎さんは「私の意見なんて大したことがないので、先に言ってください」と、自信なさげな様子。

 仕方がないので、僕も意見させてもらうとしよう。

「僕は、生徒会主催で勉強会をするというのはどうかと……」

「ほう? 続けたまえ」

「はい……。これは完全に僕個人の希望なんですけど、会長や神崎さんが要点を分かりやすく教えてくれたら、テストでいい点が取れるのかな~なんて……」

「そんなだからいつもいつも悪い点ばかり取るのですよ、蓮は」

「うっ」

「そもそも、テストの為だけの勉強をしていては、テストが終わった次の瞬間には忘れているでしょう。それではなんの意味もないのですよ?」

「………………」

 玲子が言っていることが正論過ぎてぐうの音も出ない……。

「意見としては申し分ないが、赤穂の言うように、そのような付け焼刃ではなんの意味もないから、残念ながら却下だ」

 可愛くて頭もいい生徒に教えてもらえるとなれば、学習意欲が少しは上がるかなと思ったんだけど、どうやらダメなようだ。

「あの……私の意見もいいですか?」

「構わんぞ、神崎。聞かせてくれ」

「はい。私は、進路希望調査の紙をもとに、明確なビジョンを一人一人が持ってもらえるように手助けするのはどうでしょう?」

「続けてくれ」

「はい。突然なんですけど、私は将来獣医になりたいと思っているんです。それで、獣医学部に入るために日々勉強しています。だから、みんなが私みたいに将来に対して明確な目標を持てるようになれば、自ずとやるべきことが見えてくると思うんです」

「素晴らしい意見だ。では、最後にどれから実行に移すかだが、赤穂の案は告知すればすぐに始められそうだな。神崎の案は教師との打ち合わせがあるだろうから来月くらいからか。桑鶴の意見はとてもいいのだが、生徒の反感を買いそうなので、しっかりフォローしつつ、三学期から始めよう」

「待ってください会長」

「どうした益城?」

「同時進行でやるんですか?」

「そうだが」

「少し時間を空けないと、役員の体力が持ちませんよ!」

「大丈夫だ、問題ない。各案の責任者は発案者に任せるとして、私たちは雑務やフォローにまわる。たったそれだけだろう」

「みんなはそれでいいんですか!?」

 あまりの怒涛のスケジュールに、皆に意見を求めてみるけど、

「私は構いません。自分で言ったことには責任がありますから」

 と、覚悟を決めた瞳で見返してくる玲子が。

「部活に顔出せないのは少し痛手だけど、問題ないよ? だって楽しそうだし」

 と、屈託のない笑みでピースを向けてくるカレンさんが。

「私なんかの意見が採用されたので、精いっぱい頑張ります!」

 と、意気込んで両手を握って気合を入れている神崎さんが。

「………………」

 僕の危惧をまるでなんでもないかのように言ってくれやがりました。

「皆大丈夫だと言っているから、信じようではないか。なぁ、益城?」

 とどめに会長の一言。

「分かりました……」

 これが多数決の原理という、数の暴力か……。そんなことを思いながら、僕はこれからの生徒会活動を思って頭を抱える。

 僕は、会長と同じような考え方を持っていると思われているようだけど、少し違う。会長は心の底からこの教育制度をよりよく改革したいようだけど、僕の思うことはたった一つ。


 やりたくもなく、かつ興味もないことは絶対にしたくない。


 ただそれだけの理由だ。

 苦手科目を勉強するよりは、得意科目をもっと伸ばして、その道に進めばいい。人間は、一部の器用な人間を除いて、全部を上手くできるなんてことは絶対にないのだから。

 今回の仕事はやりたくないわけじゃないけど、あまりにも器用な人たちに反抗したい気持ちや、嫉妬心があったことは否めない。

 反面、彼女らの足を引っ張るようなことをしてはいけないとも思う。

「なんだか嫌そうな顔をしていたようだが、キミが難しいというなら、キミのペースに合わせるよう善処はするぞ?」

 よし、決めた。僕は頑張る道を選ぶ。

「いいえ、もう大丈夫です。精いっぱいバックアップします」

「よし! 満場一致の賛成だ!」

 会長が高らかに宣言する。

 これでいいんだ。この生徒会は、僕みたいなただの交換条件で選ばれたような人間がでしゃばっていいようなところではない。

 ならば、協調するべきだろう。今は不満を押し殺し、精いっぱい繕うべきだろう。

「では、来週中に計画書を提出してもらう。今日の生徒会は以上! 解散!」

『お疲れ様でした』

 四人が唱和したところで、各々帰り支度を始める。

 と、そこで会長が僕に向き直る。

「益城。この後時間あるか? 少し話がしたい」

「僕はいいですけど──」

 僕は後ろから視線を感じて、意志を汲んで会長に申し出る。

「玲子も一緒でいいですか? 帰りが遅くなる時には、必ず送るようにと言いつかっていて」

「了解だ。では、行こうか」

「はい」

「神崎、施錠を頼めるか?」

「分かりました。お疲れ様でした」

「頼んだ。お疲れ」

 神崎さんが快く引き受けてくれたので、会長に続き、僕と玲子が廊下に出る。

 外はすでに日が暮れて、廊下はほとんどの空間を暗闇が覆っている。時計を見ると、短針が“6”を差していた。

「これからファミレスに行こうと思うのだが、二人とも時間は大丈夫か?」

「僕は大丈夫です。玲子は?」

「家には連絡を済ませました。蓮が一緒ならば9時までは問題ないです」

「では、行こうか」

 脱靴場に向かう途中、窓から外を見ると、空にはきれいな満月が浮かんでいた。

どうも。毎度お馴染み猫やなぎです。


次回の更新も未定です。

9日までには上げます多分。


予告です。

玲子が千尋のことを親の仇のように思っている理由が明らかになるとかならないとか。


例のごとく、進捗についてはTwitterなどでつぶやいていく予定なので、ぜひ確認してください。


あと、感想・評価・コメントなど、よろしければ残していただければ幸いです。



最後に謝辞などを。

読んでくださりありがとうございます。

本作は自由気ままに書いております。矛盾・感情の推移の分かりにくさなどが発生するかと思いますが、その辺は気づき次第修正していきたいと思っているので、疑問点などございましたら、コメントなど残していただければ幸いです。

まぁ、それではよくないとは思っているのですが、個人的にこの作品は、「プロットを作らず執筆するとどうなるか」という実験も兼ねているので、ご了承ください。


では、また次回。


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