表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

1 勧誘

ブクマ、評価、感想などなど、なんでもウェルカムカモーンです!

 さすがに霜月しもつきの屋上は寒かった。できるだけ日が当たる場所にいようと悪あがきをしているけれど、それすらあざ笑うように凍えるような風が吹いてくる。

「寒いなぁ……早く来ないかなぁ、先輩……」

 『放課後、すぐに屋上に来てほしい』。そんな、ラブレターというより事務連絡に近い文書を見つけたのは今朝のことだった。しかも、宛名に『椿姫つばき』と書いてあるなら、つい先日生徒会長になった先輩か、誰かがいたずらで書いたかのどちらかしかない。

 そろそろ屋上に来てから一時間が経とうとしている。いい加減に見切りをつけようと、あと三分だけここにいようと決意した。

「絶対来る!」

 一言気合を入れて、待つことしばし。扉を睨めつけるように見ていると────

 

キィ──────!


 耳をつんざくようなドアの開く音がしたかと思うと、ドアの向こうから一人の女子生徒が現れた。

 夕日を受けてなお漆黒に輝く黒髪と、すべてを見通すような瞳が特徴的な彼女の名は、椿姫千尋先輩。

つい先日行われた生徒会長選挙にて見事当選し、今は新生徒会発足のために尽力している人だ。

「遅くなってすまなかった。いろいろ立て込んでいてな」

「先輩も忙しいでしょうから、仕方ないですよ」

「ははっ。そう言ってもらえると助かる」

 そう言ってはにかむ先輩。その笑顔を見ているだけで、この一時間が報われた気がした。

「時間がないから単刀直入に言おう。キミ、生徒会に入らないか?」

「はいっ、喜んで!」

「すまんが一つ質問してもいいか?」

「? いいですけど」

「もし、私がここでキミに告白したとして、キミはそれを受けるか?」

 唐突に投げかけられた質問に、思わず先輩を見返してしまう。先輩の目は真剣だった。だから、意図はわからなかったけれど、真剣に答える。

「僕は……受けないと思います。だって、先輩と対等な立場なんて夢のまた夢の話じゃないですか。あと、この噂が広まって、たくさん敵を作りたくもないですし。こんな回答でいいですか?」

 もう一度先輩を見返す。すると、「そうか……」とつぶやいて何か思案する様子を見せてから、手を差し出してきた。

「合格だ。これからよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 差し出された手を握る。先輩の手はとても暖かくて、すべすべしていた。僕には、このくらいがちょうどいいのだ。ファンとアイドルのような、この関係が。

 と、そこで僕は、一つ疑問に思って先輩に聞いてみる。

「参考までに聞きたいんですけど、どうして僕なんですか?」

「くじを引いたら君だった、ではダメか?」

「数日前の僕の感動を返してください!!」

 どうやら僕は運で選ばれたらしい。

「まぁ、納得はしないだろうな。それについては生徒会室に移動してからにしないか? ここはどうも寒い」

「そうですね……」

いつの間にか僕らが立っていた場所も影になっていて、すごく寒い。

「これを使うといい。だいぶ待たせてしまったからな」

「ありがとうございます」

 カイロを受け取り、両手で包むように持つ。今まで先輩のポケットに入っていたからか、それとも元々使いかけだったからか、とても温もりを感じた。


次の投稿は、26日(土)を予定しております。更新時間など、要望がありましたら、できればtwitterでお願いします。


アカウント→@writenobel

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ