Part9
クリエイトダンジョンなのに、今までダンジョン関係の話がなかったり。
「ごめんなさい。危うくPKになる所だったわね・・・。」
「申し訳ありませんでした、ビャクヤさん。」
と、リーナさんと水色の髪の女の子が謝ってくれたので、まあよしとしよう。故意じゃないみたいだし、まあ仕方ない仕方ない。
というか、知り合いに対しては何か怒りづらいんだよね。分かるかなこの気持ち。
「あ、改めて挨拶をさせて頂きます。私はミズリと申します。レベル17の魔導師です。先程は申し訳ありませんでした。」
と、水色の髪の女の子がぺこりと頭を下げて挨拶をして来た。ミズリさんか、レベル17って僕よりもだいぶ高いな・・・。
「いや、いいよ。最初は少し怒りかけたけど、こっちもなんとか対処できたし。」
確かに死にかけはしたけど、そこまで謝らなくてもいい気がするけど。
わざとじゃないのなら、それは事故という物だろう。わざわざ怒る必要はない。
「ありがとねー。・・・全く、あいつはもう三度くらいマスターにしごかれた方が良さそうね・・・」
と、リーナさんが頭を抱えながら呟く。
「ん?あいつって誰ですか?」
「えっと、こうなった元凶なんだけどね。あいつ何処へ行ったのやら・・・って来たわね。」
リーナさんがそう言った時、隠し部屋の入り口から人が一人入って来た。
明るめの銀色っぽい髪をした、軽装の女の子だ。
「おー、何々?皆して私を見て。・・・ああなるほどね、私の美少女っぷりを見てるんだね、恥ずかしいねぇ。」
「レイ、貴方もう毎日エルザさんに半殺しにされてなさい。」
「え!?それは勘弁してよ!あの人の鉄拳制裁は、VR空間のみならず現実世界においても、身体に影響を与えるんだから!」
突然現れた銀髪の少女とリーナさんが言葉を交わすと、銀髪の女の子がこっちを見た。銀髪のショートヘア、目は水色。結構活発そうな女の子だな。
「おーっす!んで、そこの小学生君は誰なのかな?」
「僕は小学生じゃないって!ちょっと背が低いだけ!」
いきなり小学生扱いするのはやめて!って、この人が元凶の人だよね!?出会い頭にケンカ売るってどうなの!?
「・・・レイ。いい加減にしないと、エルザさんに報告するよ?」
「ちょっ!?分かったって!分かったから個人会話チャンネルを開こうとしないで!お願いだから!」
「はぁ、全く。それはいいとして・・・ビャクヤ君、一応紹介しておくね。このお調子者が今回の原因となったレイよ。」
「レイだよー、レイちゃんって呼んでねー。」
レイさんか。この謎に高いテンションといい、喋り方といい、なんと言うか・・・キャラが濃い人だな・・・。
「いやー、参ったね。正直使うか迷っていたけど、まさか奥に人が居るなんて思わなかったよ。」
「え?どういう事ですか?」
「んー、実はあるアイテムを使ったんだよ。これなんだけどさ。」
と、手に取って見せてくれたのは、なんと言うか・・・その・・・
「これ、蚊取り線香ですか?」
「いや、これは【虫避け線香】って言うアイテムなんだけど」
「どっちも同じじゃないの!?」
蚊よりも、対処できる虫の範囲が広がっただけな気がする。
「実はさ、私達は同じギルドメンバーでさ。ログインしてたのが、たまたま3人しか居なかったから、パーティー組んでここで狩ろうかって話になったんだよね。」
レイの話によると、森に到着して狩り始めたはいいが、途中で蜂の巣のオブジェクトが複数固まってる場所にたどり着いた。
突破しようにも、下手に破壊したらキラービーが沸いてくるから面倒だねーという話になり、なら蜂をどっかに行かせればいい、という結論に達し、虫避け線香を使った、という流れだ。
「蜂の巣って、キラービーのですか?」
「そうそう。下手に攻撃したりすれば周囲の巣と連携して、キラービーを大量にPOPさせる凶悪オブジェクトよ」
「うわ・・・」
想像しただけで寒気がする。さっきは、頭に血が上ってて気にしなかったけど、改めて想像してみたら、大量の蜂に群がられるのは絶対に嫌だ。
「それで、どうすっかなーって考えて、虫避け線香を使ってみようってなってさ。使ってみたら、蜂の巣からキラービーが大量に出てきて逃げ出したのよ。」
夏にテレビでよくやる、スズメバチ駆除の特集を思い出した。あれ面白いよね。
「ミズリの咄嗟のファイアーストームで数は減らしたんだけど、残った数十匹が小さい洞穴に入ってったの。」
「なるほど。その逃げたキラービーが、僕が相手した群れだったのか。」
うーん。偶然の事故だよねこれ。仕方ないんじゃないかな?
「だから言ったでしょ!広範囲に影響を及ぼすアイテムを使うときは気をつけた方がいいって!」
「し、仕方ないだろー!マップ見ても、周囲にプレイヤー居なかったんだから!まさかこんな隠し部屋にいるなんて想像できないし!」
まあ、その通りだよね。僕だって偶然見つけたんだし。
リーナさんとレイの言い争いをそろそろ止めようかと思いかけた白夜は、部屋の入り口で様子を伺う人影を見つけた。
NEW SKILL
【ファイアーストーム】炎属性魔法
一定の範囲に炎の渦を発生させて攻撃。
魔法攻撃力の150%の炎属性攻撃/回避率-50%
NEW ITEM
【虫避け線香】
少量、火をつけて持ち歩く事で、虫系MOBとのエンカウント率を極端に下げる。なお、効果を受けた虫系MOBは状態異常【弱体化】を受ける。
(レイの場合、少量じゃない量を地面に置いて火を放った為、一気に煙が出てキラービーが一斉に逃げ出した、というのが真相です。)