Part8
キラービーは、単体での戦闘能力はあまり高くない。ただ空を飛ぶ、大きめのハチなだけだし、動きも遅いので楽に対処できる。短剣装備の僕でも、簡単にHPを削れる相手だ。
しかしそれは単体ならの話。キラービーの特性は、群れで行動する事。少なくとも2~5匹で行動するのが普通だ。だが、今目の前にいるキラービーの群れは、少なくとも2~30匹は居る。普通にエンカウントする量じゃない。つまりは・・・この本か?
鑑定しないと詳細は分からないけど、これが宝物だとしたら、これを取得した事でトラップが作動した可能性がある。
ダンジョンやフィールドで、宝箱を発見したりアイテムを取得したタイミングで作動するトラップというのがある。このモンスターは、多分その関係でエンカウントしたのだろう。普通じゃあり得ない。
「あれ?このキラービー達、弱ってる?」
じっと見ていた白夜は、キラービーの群れが、黒ずんだオーラを出しているのに気がついた。
これは確か、異常状態【弱体化】だ。特定の手段をすると、敵のステータスに弱体化を付加する行動があるとは、攻略wikiに載っていたから知っている。
例えば、動物に対して毒の入った餌を食べさせる、人型の敵に弱体化の魔法をかける、スケルトン等のアンデッドに聖水などのアイテムをぶつける、などだ。
これなら倒せるかもしれない。と、白夜は短剣を構えると、キラービーの群れに突進した。横薙ぎに振った短剣がキラービーに当たると、キラービーの身体が真っ二つに割れ、HPを0にして消えていく。やはり、いつもより防御力が大幅に下がってるな、いつもなら一撃では倒せないし。
「――【スピードスラッシュ!】」!
短剣の初期攻撃スキルを連発しながら、少しでも早く群れを撃退しようと攻撃を繰り返す。
スキルを使わなくても、弱体化したキラービーなら一撃で倒せるが、スキルも併用した方が、殲滅力が上がるからだ。
数分後、キラービーの群れを全滅させる事に成功した。こっちは思ったよりダメージを受けなかったからよかったものの、よくよく考えれば危なかった。
レベル10を超えた事で、初心者ポーションは無くなっており、あるのは初期に買った、回復量があまり高くない薬草だけだ。弱体化がかかってなかったら、死に戻りしていたかも知れない。
「あ、危なかったな。だけど、何で弱体化してたんだ?」
まあ、結果オーライだからいいけど。
後、ステータスウィンドウを開いてみたら、地味にレベルが上がってた。まあ、結構な数狩ったし。
さて、後は帰るだけか。とりあえず、鑑定屋に本を持って行って・・・って、あれ?ちょっと待って、あそこにいるのって・・・
「嘘だろ・・・?あれ、キラービーの大群じゃないか・・・!?」
くそ、まだ居たのか!いつの間にか現れていたキラービーの第二陣が入り口付近で蠢いていた。
この群れも弱体化しているようだが、こっちもだいぶ疲労がたまっている。さっきは勝てたが、まともな回復アイテムがない今、正直勝てるかは微妙だ。
「ええい、男は度胸だ!いくらでもかかってこい!」
白夜が短剣を構えて、キラービーの群れに斬りかかった。ーその瞬間、凄まじい炎の渦が群れを襲った。
って熱い!凄く熱い!ちょ、魔法がもろに直撃してるんですけど!?
周りのキラービーは、炎の渦をまともにうけて全滅していた。・・・僕のHPを見ると、残り1割を切ってた。誰だよ!危ないどころの騒ぎじゃない、下手したら死んでたぞ!?
「ちょっと!戦闘の音が聞こえてるのに、いきなり広範囲の攻撃魔法をぶっ放す馬鹿が何処にいるの!?」
「ご、ごめんなさい。だって、キラービーの大群のど真ん中に人がいるなんて思わないじゃない」
「下手したら、PK物だったかも知れないんだよ!?あー、謝らないとなあ・・・」
白夜が薬草を口に入れて回復していると、入り口に人影が見えた。影は・・・2つか。多分、あのどっちかが炎の渦を使った魔法使いだろうな。文句言ってやる。
「おい、危ないだろ!死にかけたぞ!?」
「ごめんなさい、パーティーメンバーが迷惑をかけて・・・って、あれ?ビャクヤ君?」
「あれ?リーナさんじゃないですか?」
「あ、やっぱりビャクヤ君だった!」
そこには、銀色の鎧を着たリーナさんと、黒いローブを着た、ショートボブで水色の髪をした女の子が居た。
【スピードスラッシュ】短剣スキル/攻撃
通常の120%の攻撃力で攻撃を行う。相手の回避失敗率+5%(クールタイム10秒)