Part7
「ん?なんだあれ?」
森で狩りを続けていた白夜が、謎の光を発見したのは、もうすぐレベル10に到達する頃だった。
群れで迫ってくるワームやガードビートルに混じって、赤色っぽい光がふわふわと浮いているのを見つけたのだ。
その正体が分かった時、白夜はハッとして森に入る前に見たマップ説明を思い出した。
――旅立ちの森。
古くから、世界へ旅立つ冒険者見習いや旅人が、己を鍛える為に入る森。
森には野生動物も多いが、モンスターも多く生息している。
モンスターは、虫系と動物系、極稀に邪妖精が存在する。
「こいつ、邪妖精だ!」
極稀、と書いてあるのでレアモンスターだろうか?
と考えている間に、邪妖精は光の中から姿を現した。何というか、羽の色が赤と黒で毒々しい、不気味に笑いながら空中を漂ってる姿は、何というか・・・夢に出そうだ。
剣を振りかざして妖精に振り下ろすが、ただえさえ当てにくい空中に居るのと、結構速い速度で回避行動を繰り返すので、中々当たらない。
邪妖精の方も、たまに炎属性の魔法で攻撃してくる。飛んでくる火の球を避けながら懸命に攻撃を当てようと追いかけまわす。
・・・というか、ここ一応森の中だよな。火属性の魔法なんかやったら火事にならないかな?VRだから大丈夫だけど。
「いい加減倒れろ!」
と、ジャンプしながら叩きつけた剣が命中する。邪妖精のHPが一気に2割くらいになる。多分クリティカルヒットだ。そのまま妖精は目を回して地面に落ちたまま動かなくなった。・・・って、あれ?案外あっけない?
あ、そうか。多分これ、異常状態の【気絶】だ。
弱点部位にクリティカル攻撃がヒットすると、一定確率で気絶が付加される。
気絶の効果は確か、数秒間行動不能になる、だっけ。
それと、気絶の状態異常は薬とかじゃ回復できないんだよな、装備品とかで防止はできるけど。
動かない邪妖精にトドメをさした瞬間、何やらのウィンドウが目の前に現れた。
『レベル10になりました。初心者ポーションをインベントリから削除します。』
『レベル10達成により、ダンジョン作成機能をアンロックします。』
キター!レベル10になった!ついにダンジョンが作れるようになった!
だけどその前に、冒険者の洞窟に行ってダンジョンがどういう風なのかを見に行きたい。それと、洞窟をクリアするとDPが貰えるらしいから、それも欲しい。
「ダンジョンかぁ・・・。リーナさん誘ってみようかな?」
夜の狩りで会った、金髪の女性剣士さんを思い出す。誘ってみるか?と思ったけどやめておくか。あの人くらいの強さなら、多分もうパーティーを結成してるだろうし、レベル差だってありすぎる。誘ったって、迷惑にしかならないだろう。というか、絶対に寄生と疑われる。
さて、そろそろ森を出ようかな・・・という所で、奇妙な場所?を見つけた。
邪妖精と戦った付近に大きな大木があるのだが、その根元のすぐ隣に、人一人がかがんでやっと入れるくらいの穴が開いていたのだ。
好奇心にかられて、白夜はしゃがみながらその穴をくぐる。
少し進むと、急に開けた場所に出た。マップで確認すると、少しいびつな形の四角形の小部屋だという事が分かる。
あたり一面のお花畑で、奥の方は湖になっている。とても神秘的な場所だ。何か妖精あたりが飛んでそうだな。これ、多分隠し部屋の類だろう。
「うわぁ、凄い幻想的だなぁここ・・・。あ、そうだ、スクリーンショット撮ろう」
何枚かスクリーンショットを撮ってから、あたりを探索する。
VR空間だというのに、微かに花の香りとかが漂ってくる。最近のゲームは、本当にリアルになったよなぁ・・・。
こういう小部屋には、大抵レアアイテムとかが隠されている筈だ。
と考えてる傍からあったよ。マップのど真ん中に落ちてたよ、変な古めかしい本。手に取ってパラパラとめくってみたけど、なんて書いてあるのか分からない。象形文字みたいな文字が書いてあるのだけは分かるけど。
謎の本 【???アイテム・要鑑定】
鑑定屋にもっていくと鑑定してもらえる。現地点での用途は不明。
「???アイテム?ああ、これってあれか。鑑定すればアイテムが分かるよーみたいなやつ。」
鑑定にいくらかかるかは分からないけど、お金が調達できたら鑑定してもらうか・・・。って、あれ?何だあれ?
白夜が入ってきた穴から、何か黒い煙みたいな物が流れてくる。あれ、どっかで見たような・・・って、あれは!?
「うわぁ!?ちょっと待って、あれはマズいって!?」
と黒い煙の正体が分かった白夜は、剣を抜いて戦闘態勢を取った。
煙のように見えたのは、恐ろしい数が纏まって行動していたから。そして、あれは・・・もの凄い数のキラービーの大群だ!