Part5
「ふわぁー、よく寝たーって、丁度いい時間だなぁ。」
仮眠から起きた白夜は時計を見た。午後11時、ちょうど人が減る時間かな?
簡単にカップラーメンとお茶で食事を済ませた白夜は、すぐにヘッドギアを装着してCDOへとログインした。
CDOの世界へと入った白夜は、早速旅立ちの草原へと足を運んだ。
プレイヤーは目に見えて減っていて、丁度良い感じに狩りができる気がした・・・のだが。
「モンスターの種類が変わってる・・・?」
確か、昼間はスライムとはぐれゴブリンだった筈だ。
だが今は、暴れコウモリというコウモリ型MOBとはぐれオオカミという動物型MOBになっている。
とりあえず白夜は、ルーキーソードを振りまわしてコウモリを狩った。
コウモリは防御力が低いらしく、レベル1の自分でも簡単に倒すことができたのだが、たまに見かけるはぐれオオカミの攻撃力がかなり高めに設定しているらしく、かなりの量の初心者ポーションを使ってしまった。
それでも、三十分くらいの狩りでレベル6まで上がった。あっという間に森の適正レベル超えちゃったよ、昼間のあの失敗は何だったんだと問いたい。
「ああそうか。夜になると、殆どのフィールドの敵が変わるのか。」
ヘルプを開いて、『フィールドの敵POPについて』を読んだ白夜は納得した。
夜間(夜7時から深夜4時)は昼間のエネミーとはうって変わり、好戦的なアクティブモンスターが配置されるらしい。
昼間よりも攻撃力が高く好戦的なモンスターが多い為、囲まれたりするとあっという間にHPが0になって死に戻りするらしいが、獲得経験値が高い上に夜間戦闘補正で、経験値が若干増加するらしいので、夜間の狩りは効率がいいらしい。倒せればの話だけど。
僕自身も、あっという間にレベル6まで上がったけど、これは初心者ポーションを使いまくった結果だ。50個もあったのが半分程度まで減っている。あれ?でも、確かこのアイテムってレベル10で消えちゃうんだっけ。それならまだ大丈夫かな?
それと、コウモリとオオカミのドロップアイテムがとても美味しい。コウモリからは吸血の牙、オオカミからは低級毛皮と固い肉が入手できた。何に使うんだろうねこれ・・・ってあれ?
「なんだこれ?《コウモリの核》?」
ドロップしたアイテムは、自動的にインベントリに保管されるシステムになっているが、その中で僕は見た事が無いアイテムを見つけた。
コウモリの核、と呼ばれるアイテムで、説明文には、コウモリの核。DPを消費してコウモリを配置できる、とある。DP?って事は、これはダンジョンに関するアイテムなのか?
「あ、君それコアアイテムだね。運がいいのかな?」
「え?」
突然声をかけられて、間抜けな声を出した白夜は後ろを振り向いた。あ、夜に狩りをしてる他のプレイヤーかな?
身長は普通くらい、金髪のショートヘアに青い目をした女性プレイヤーだ。銀色の鎧を着て、腰に長剣を刺してる所から見ると、剣士かな?
「夜間は効率がいいとはいえ、小学生が夜更かしするのは感心しないよー?」
「違う!僕は中学二年生だ!身長で決めるなー!」
また間違われた!まあ小学生だろうが中学生だろうが、夜更かしはオススメしない年齢なんだろうけどさ!
「あ、そうなんだ。でも、いくらゴールデンウィークだからといって、夜遅くまで狩りに没頭するのは良くないよ?」
はい、おっしゃる通りです。
「・・・ところで、君はコアを手に入れたんだよね。羨ましいな、コアの出現率はかなり低めに設定されてるからねー。」
「そもそも、コアって何ですか?」
「あー、君はまだ知らないかな?ダンジョンを作る時、大抵の人はモンスターを配置するでしょ?モンスターを登録する時に必要になるんだよね。」
ダンジョンにモンスターはつきものだが、このゲームでダンジョンを作る時は、モンスターを簡単には増やすことができない。
まず、そのモンスターの核を入手して、それと一定のDPを消費してやっとモンスターを配置できるようになるらしい。
モンスターを複数配置するには、《モンスターの核の破片》とモンスター毎に設定されてるDPを消費しないと増やせない。
つまり、ダンジョンに欲しいモンスターを配置したい場合は、そのモンスターを狩り続けて、核を入手しないと始まらないのだ。
「私は一応、ダンジョン持ってるからねー。モンスターを増やしたくて、ここら辺でバッサバッサと敵を狩ってるんだけど、コアが出なくてねー。」
「えっ、もうダンジョン持ってるんですか!?」
「ダンジョン自体は、レベル10から持てるようになるよ。DP的にすぐ作るのはちょっと厳しいけどね。」
この人、多分βテスターとかかな?ダンジョン持ってるとか羨ましいな、この人のダンジョンに行ってみたい。
「まだオープンしてないけど、公開できるようになったら公開するから、その時は是非来てよ。ここで会ったのも、何かの縁だしね。」
「あ、是非お願いします!えっと・・・」
「あー、一応名前言っておくね。私はリーナよ。クラスは剣士、レベルは今のところ19かな。」
「僕はビャクヤです。レベル6の初心者です。」
とお互い自己紹介をした後、フレンド登録をさせてもらった。
レベル19か・・・。もっといい狩場で、レベル上げとコア探しを両立すればいいのに、と思ってしまう。
「それじゃ、フレンド交換も終わったし、私は一旦ログアウトするね。ビャクヤ君も早く寝た方がいいよ?早く寝ないと、身長伸びないよ?」
「分かってますよ!もう少しです!」
ちくしょー・・・、出会ってまだ数分の女性プレイヤーさんにまで子供扱いされた・・・。早く身長改変を実装してください、運営さん!
リーナさんがログアウトしてからも、剣を振り回してコウモリとオオカミを狩り続ける白夜は、当分の間寝る事は無かった。