Part4
9/11…細かい文章の訂正を行いました。
旅立ちの森。
古くから、世界へ旅立つ冒険者見習いや旅人が、己を鍛える為に入る森。
森には野生動物も多いが、モンスターも多く生息している。
モンスターは、虫系と動物系、極稀に邪妖精が存在する。
「ふぅむ・・・。」
マップ説明を読んだ白夜は、目の前に広がる森を見た。
ここまで来るのに、道でたまたまエンカウントしたスライム数匹を軽くボコったが、レベルアップはしなかった。レベル2になればまた違ったかもしれないがしょうがない。
周りにプレイヤーは居ない。いや、見えてないだけかもしれないが。
マップを見ると、草原よりも森の方が二倍近く広い。その上、木や藪がそこら中にある為に視界が非常に悪い。プレイヤーが居てもすぐには気が付かないだろう。
それでも戦闘の音が聞こえないという事は、あたりにプレイヤーは居ない、もしくは、それくらい人が少ないという事になる。それはつまり、ここの狩場は空いているという事にもなる。好都合だ。
白夜はゆっくりと、森の中へと歩みを進めた。
「・・・痛い。VRの中なのに凄く痛い。」
森に入って数分後、入り口で短剣を地面に突き刺してぶっ倒れてる白夜がいた。
入って少し経った後、赤い目をしたデカいカブトムシ型モンスターの《ガードビートル》というモンスターと遭遇した。
動きはそこまで早くはなかったものの、手持ちの短剣は攻撃力が低すぎて効果が無い、相手の攻撃は痛すぎるのダブルコンボで、見事に死に戻りしたのだ。
街に戻るのかと思ったが、旅立ちの森では入り口に転移されるらしい。
ちなみにだが、レベル10までは死に戻りによるペナルティはない。
「・・・ダメだ、レベル1に初期装備じゃ、どう考えてもダメだよなぁ。」
改めて思えば、かなり無謀だと思う。レベル1の僕では、このフィールドはかなり難易度が高いんだ。
仕方ない、今日は早めにログアウトして仮眠を取って、深夜にまたログインし直そう。それで、いくらか人が減るであろう草原で大人しくスライム狩りでもしていよう。うん、それがいい。
深夜帯にゲームをやりたくない理由は、眠気が襲ってくる事(VRでは身体が眠気を訴えると、それを警告するアナウンスが出てくるので分かる)や生活が不規則になる事だ。
だけど今は連休中、それも初日だ。少しくらい遊んでいても問題はない。
「はぁ、なら今のうちに仮眠するか・・・。」
白夜はメニュー画面を開くと、ログアウトを押した。CDOの世界から、白夜というキャラクターが消えた。
「はぁ、何かゲームをしてたっていう感覚がないよ・・・。」
VR世界から帰ってきた白夜は一人、ソファに座りながらため息をついた。
だってそうだろ?キャラクリしたら身長は変わらないわ(これ重要)、何故か髪の毛は白いわ、一番弱い狩場はプレイヤーで埋まってるわ、仕方なく森行ったら瞬殺されて痛い思いをするわ、全く散々だった。
白夜は気を取り直すと、パソコンを開いてCDOの攻略wikiを開いた。
VRのゲームの攻略wikiは、情報が集まりにくい傾向がある。
そりゃ、レアエネミーが出現しやすい場所とか、珍しいクエストが受注できるNPCとか、一人占めしたいに決まってるもんな。
しかもVRの世界は、自分の身体を動かすように仮想世界のアバターを動かしているので、あたかも自分が世界に入り込んでいるかのような感じでプレイできるのが大きな特徴だ。
自分がやっと手に入れた貴重な情報を、わざわざ他人に渡すような真似をするプレイヤーは多くない筈だ。情報が集まりにくいのは、それが大きな原因らしい。
「うおっ、もうダンジョン開いてる人いるのか・・・!」
wikiを見ると、ダンジョンを開いた人と、それを攻略した人のページも公開されていた。早いなぁ・・・僕もいつか、自分だけのダンジョンを持ちたいな・・・まだレベル1だけど。
スクリーンショットが少しだけ公開されてたので見てみたが、洞窟っぽい場所で左右に松明が掲げられている道が映っていた。これは、多分ダンジョンの入口付近だろう。
二枚目のスクリーンショットは、スライムが数匹蠢いている写真だった。確かダンジョンでは、モンスターを自由に配置できたはずだ。つまり、このスライムはこのダンジョン直轄のモンスターという事になる。
「ダンジョンか・・・。クリエイトダンジョンオンラインって名前だし、早くダンジョン持ちたいな・・・。」
ダンジョンについての説明は、ゲーム内ヘルプや公式ホームページで見たけど、かなり充実した内容だった。
モンスターを自由に配置、トラップや宝箱の設置、内部構造を自由に変更、場合によっては人型NPCも敵として配置可能etc。
ダンジョンポイントが必要という制約があるが、それさえクリアしてしまえば、いろんなダンジョンが作れるだろう。もしかしたら、魔王城っぽいダンジョンも作れるかもしれない。僕にとっては夢物語だけど。
「はぁー・・・夢見ててもしょうがないし、夜に備えてもう寝よ。」
僕はパソコンの電源を落としてVRヘッドギアを横にどけると、ソファの上に寝っ転がって眠りについた。