Part2
「えーと・・・まずは読み込み用の端末をセットして・・・。この辺は、他のVRゲームと同じかな?」
白夜は家に帰ると、すぐに紙袋を開けてソフトを取り出して説明書を読んだ。
VRゲーム用の専用の端末を取り付けて、そこにソフトを入れて読み込ませる。その後、ソフトを立ち上げたままVR用ヘッドギアを接続、それを頭にかぶると睡眠誘導が始まり、ヴァーチャルリアリティの世界に飛ぶというシステムだ。
白夜はさっそく手順に従い、VRヘッドギアを頭に付けて近くのソファーに寝転んだ。ふっと周りが暗くなった瞬間、あたりが急に明るくなる。
催眠誘導によって眠くなり、意識が落ちたのは暗くなった時だろう。すぐに明るくなったのは、ゲームが始まった証拠だ。
『ようこそ、クリエイトダンジョンオンラインの世界へ。貴方の個人情報の読み込みを開始します。少々お待ちください。』
と機械的な女性の声が聞こえたと思った瞬間、自分の身体がスキャナーにかけられてるかのように透明になった。多分、自分の身体の体格とかを調べてるんだろう。
これは他のゲームにも搭載されてるシステムで、ソフトを他の人が使おうとしても体格が一致しないと接続できないようにする、一種の盗難防止システムだ。
『読み込みを完了しました。顔のパーツを変更しますか?』
僕はYESを選んで、パーツを選んでいく。
うーん、髪の色・・・は細かい色は面倒だし、そのままでいいや。瞳の色か。赤色って格好良さそうだし、赤くするかな?顔の形は・・・このままでいいや。あんまりいじると、かえってバランスの悪い顔になっちゃうんだっけ。
『変更を完了しました。身体のパーツを変更しますか?』
身体か。よし、とりあえず身長を・・・ってあれ?
目の前に現れた透明なボードに手を触れて、身長の欄を探すが、どこにもない。
嫌な予感がして、一応声に出して聞いてみる。
「・・・身長って変えられない?」
『――はい。身長は変更できません。なお、身長と選んだ顔パーツにより、ゲーム内年齢が自動的に決定されます。』
な、な・・・なんですとーーー!?身長が変更できない!?クソゲーじゃねえの!?
恐らく、この仕様は当然ながらプレイヤー達は知ってる筈だ。
つまり、僕はその中で低身長のままな訳で。
「・・・絶対・・・バカにされるって・・・」
ゲームをやめてしまおうか、とも思ったが、人気のゲーム、しかも夜遅くから並んでやっと手に入れたゲームを、身長が変えられないだけで止めてしまうのはいささかもったいない気もする。
なら、ゲーム内で上級者になれば、多少は馬鹿にされる事も少なくなる・・・かもしれない。よし、そうと決まればやってやろうじゃないか!
10分程かけて、僕はキャラクリエイトを完了させた。
多分、間違いはない。名前はそのままBYAKUYAにした。
『全ての設定を完了しました。ようこそ、クリエイトダンジョンオンラインの世界へ。』
そう聞こえた瞬間に、目の前が急に街の光景へと変化した。
周りには人が全く居ない。あれ?おかしいな、プレイヤーは多い筈なのに、人が居ないって事はあるのか?・・・えーっと、確か頭の中で念じて・・・っと、出てきたな。
出てきたメニュー画面から、マップを選択。目の前にこの付近を地形を表示するマップが出てきた。マップ名は、『旅立ちの街』とある。
「ふーん、旅立ちの街ね。っと、これは・・・なるほど、チュートリアルか。」
急に現れたウィンドウには、チュートリアルを行います、と書かれていた。なるようになればいいや、と思っていたが、結構新設設計だな。
『ビャクヤ様、こんにちは。チュートリアルをさせて頂きます。ではまず――』
と機械的な音声が聞こえて、チュートリアルが始まった。簡単な動作説明、メニュー画面について、戦闘の方法、ダンジョンについて等、結構細かく教えてくれた。
ダンジョンについてなのだが、これが結構細かい仕様だという事が判明した。
ゲームタイトル通り、ダンジョンを作る事が目的の一つではあるのだが、序盤からいきなり作る事は無理らしい。
ダンジョンを作るには、まず入り口となる場所が必要となる。当然、街のど真ん中とかは無理。街のすぐ外とかはできるみたいだけど。
そして、ダンジョンの入り口を作っただけでは、もちろんそれはダンジョンとは呼べない。掘り進めていく必要があるのだが、それはDP―ダンジョンポイントを使って、ピッケルを入手する必要がある。
DPはダンジョンを攻略したり、ダンジョンに攻め入った他プレイヤーやNPCを倒したりするともらえる。フィールドに点在するダンジョンも、一応魔物(もちろんNPC)のダンジョンという立ち位置という設定のようだ。
つまり、冒険者として旅をし、魔物の住むダンジョンをクリアして、DPを貯めてダンジョンを作って行く――そういうゲームらしい。RPG要素っていうのはこういう事か。
「成程ね。つまり、普通に冒険してモンスターを狩ったりする事も必要、という訳だね。」
チュートリアルを終えて、他プレイヤーが結構いる『旅立ちの街』に飛ばされた白夜は、これからどうしようか考えていた。最初の人が全然いなかったあの街は、チュートリアル向けの別エリアだったらしい。
とりあえず、最低限の武器と道具を買って、モンスターを狩りに行くか。
そう決めると、白夜はゆっくりと武器屋に向けて歩き出した・・・ところでピタッと止まった。
そして、隣にあるNPCの民家のガラスに映った自身の姿を見て絶句した。
―――髪の毛が真っ白!?え、ちょっと待って!?