Part11
「所でビャクヤ君、今から冒険者の洞窟に行かない?」
「冒険者の洞窟ですか?」
ステータスウィンドウを開いて、割り振りをどうしようかと考えている白夜は、リーナさんの言葉で目を上げた。冒険者の洞窟って、確か最初に体験できるNPCのダンジョンだったよね。
「ええ、もうレベル10を超えてるのなら、ダンジョンを製作できるし。どういう風になっているのか見てみたいでしょ?」
「それはいいわね。大丈夫よ、何かあったらレイが盾になるから。」
「私はレンジャーですよ!?防御力紙みたいなモンですよ!?」
うーん、確かにレベル的に挑戦はできるよな。冒険者の洞窟を踏破できれば、多少のDPが貰えるからそれでダンジョンを作ってみようって最初の頃決めてたっけ。
というか、レイってレンジャーだったのか。弓とか持って無さそうだけどな。雰囲気的に、魔法使いじゃないよなーとは思ってたけど。
「分かりました。ですが、少し街の方で準備を整えて来て良いですか?」
「ああ、なるほどね。いいよ、じゃあ集合時間は1時間後ね。」
「なら、私も参加しますね。先ほどの魔法の誤射のお詫びとして。」
リーナさんとミズリさんも来てくれるようだ。
「うーん、私も参加したいけれど、他のギルドマスターにパーティーに誘われてるのよね・・・。」
エルザさんは用事があるようだ。
まあ、この人は多分、またお友達(廃人プレイヤー)と共に、爆速レベリングの道を歩みに行くのだろう。
「あー、なら私も行きますよ。暇だし。」
「ビャクヤ君に何かしたら、貴方の家族もろとも吹っ飛ばすわよ?」
「エルザさんじゃないし、そんな事しませ・・・って痛い!ちょっと待って、HPが減る!減ってるって!」
アームロックを決められたレイは、青い顔をして手をバタバタ振っている。
綺麗に決まったなぁ・・・って、HPの減りがやばいよ!?目に見えてゲージ減ってるし!
っていうか疑問なんだけど、何で僕はエルザさんに好かれてるんだろう?
「VR空間では、痛覚はかなり軽減される筈なんですけどねぇ・・・。」
「エルザさんは未知数ですから。」
妙に納得しているリーナさんとミズリさん。この人達も大丈夫かな、感覚麻痺してないだろうか。
HPが残り1割を切ったところで解放してもらえたレイは、すぐにポーションを飲んで回復していた。エルザさんもやりきった顔をしている。レイの扱いって、いつもこんな風なんだろうか。
1時間後に冒険者の洞窟前に集合と約束した白夜は、旅立ちの街に居た。
目的は、回復アイテムの補充と、謎の本の鑑定、それとSPの割り振りだ。割り振りに関してはどこでも出来るのだが、一度決めたら当然再度は決められないという事だったので、最後にじっくり考えてやる事に決めていた。
「いらっしゃい、何を見るんだ?」
鑑定屋に入ると、いかにも考古学者みたいな人が挨拶をしてきた。大学教授とかいう肩書きが似合いそうな人だな。
「この本って、ここで鑑定できますか?」
「鑑定料は250Sだが、どうする?」
「分かりました、お願いします。」
250Sを渡して鑑定を頼む。虫眼鏡とか小さいハケみたいな物とかを取り出してじっくりと見て、すぐに声をあげた。
「うーむ、珍しいな。こいつは『スキルブック』だ。」
「スキルブック?何ですかそれ?」
「特定のスキルは、このスキルブックでのみ習得可能なのだ。このスキルブックは、『サーチ』のスキルを習得できるぞ。」
と渡された本を見てみると、成程、確かにアイテム表記が変わっていた。
スキルブック【サーチ】 【スキル習得アイテム・一回限り】
本を読む事で、スキル『サーチ』を習得できる。
「うむ、いい仕事をした。」
と鑑定屋のおじさんが汗を流していた。いや、あんた仕事してたの数秒だろ。別にいいけどさ・・・。
「じゃあ、さっそく読んでみようかな?」
鑑定屋を出た白夜は、スキルブックを開いて中をパラパラとめくった。いや、だって読めって言われても、訳の分からない古代文字みたいなのがビッシリ書かれてるだけだし・・・
最後まで読むと(?)、本がパッと光の粒子となって消えた。そして、小さなウィンドウが表示された。
『スキル【サーチ】を習得しました。』
『新クラス【スカウト】を選択可能になりました。』
おお、サーチが使えるようになったぞ!それと、スカウト?っていうクラスにもなれるみたいだな。よく分かんないけど。えーっと、サーチの詳細は・・・
【サーチ】索敵スキル
使用すると、障害物の有無に関わらずプレイヤー、モンスターを感知できる。
成程、確かに名前の通りそのまんまの性能だな。
見渡しのいいフィールドとかは大して使え無さそうだけど、見通しが悪そうな場所でなら使えるのかな?
これから冒険者の洞窟に行くんだし、そこで試してみるのもありだな。
「さて、そしてこの新クラスの【スカウト】なんだけど、何なんだこれ。」
アイテム購入とスキルブックを手に入れた白夜は、SP割り振りを行おうとして、新しいクラスであるスカウトの存在を思い出した。
というのも、ステータス画面を開いたらSP割り振りができるようになっていたのだが、その下にチェンジ可能なクラス一覧という項目があったのだ。
そこにはスカウトについての簡単な説明が記されていた。
スカウト【scout-斥候】
条件-クラスが『ルーキー』である事。
・ルーキーの状態で、敏捷と器用にSPを合計45P以上振る事。
・スキルブックにより、『サーチ』を習得している事。
説明-様々な場所において、情報収集や偵察行為を得意とするクラス。成長させると、上位の特殊なスキルを習得できる。
とある。僕の未割り振りSPは55ある。45なら可能な範囲内だから、チェンジ可能ってなってるのか。
「折角だし、このスカウトってクラスになってみるか!後でリーナさんに聞いてみるのもありかな。」
敏捷に30P、器用に15Pを振り、残った10Pで攻撃力と運に振り込んだ。え?防御力?斥候に求める数値じゃないよね。
そして、クラスチェンジのスカウトをタップした。その瞬間に、クラスチェンジを完了したと伝えるウィンドウが表示された。
ビャクヤ Lv11【class-Scout】
おお、ちゃんとなってる!よし、これで準備は完了だ。時間は・・・っと、丁度いいくらいだな。なら、とっとと行くか。場所は、旅立ちの森の近くだったよな。
(SPとクラスについて)
このCDOの世界では、レベルアップ毎にSPが5Pずつ増えます。それを攻撃力、防御力、敏捷、魔力、器用、運の6つのどれかに振る事で、関連した能力が増えるシステムになってます。
本来なら、レベル10を超えた地点で、振ったSPの偏り、使用武器等のよって、最適なクラスが自動選定されます。