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第一話 召喚 その3

「…………ん」


「あ、おはようございますです。具合はどうです?」


「ふぁ〜あ。うん、さっきよりはマシかな」


 外は今も雨が降っているが、先ほどと比べれば弱くなっていた。


ちなみに今は朝じゃない、多分。そして(いま)だに寒い。早く止んでくれないかな。ここから出て暖まりたいよ。


「そうですか。ならよかったです」


「ところで、えとコトハちゃん、だっけ? ずっとここにいたの? 退屈しない?」


「ちゃん付けは止めてほしいです。わたしは二十五才なのです」

 今日の朝ご飯は食パンとりんごです、とでも言うような軽いノリで告げるコトハ。


「ーーふぁッ!? に、二十五!? 僕より年上だったの!? え、えーと! 勝手に子供扱いして申し訳ございませんでした!」


 うそだろ!? 本当に!? この衝撃発言で寝起きのウトウト感が一気に吹き飛んだわ!


「ふふーん、わたしの方がエラいのです。でも呼び捨て許可しちゃうです」

 コトハは『(・ω・)』みたいな顔でお姉さんっぽく言った。うん、色気なんて欠片(かけら)もないや。


「と・こ・ろ・で、わたしにききたいことがあるんじゃないですか? 何でも答えてあげるのです。えっちいこと以外は」


「あ、ああ! さっきも()きましたが、ずっとここにいたのですか? 退屈しませんでしたか?」


 コトハはロリっぽいけど、とりあえず敬語にしておいた。人は見かけに()らないからね。いや、人じゃないらしいけど。


「精霊機関にアクセスしていたから退屈しなかったです」


「精霊機関? なにそれファンタジーっぽい!」

 少女型の竜が生まれるあの作品に出てくるアレと同じようなものだったりするのかな?


「精霊機関とは全ての精霊の力や情報を司っている機関なのです。目には見えないけど、意識を集中させることによってアクセスすることができるのです。わたしたち精霊の力は普段、封印されているのですが、アクセスして申請することで使うことができるのです」


「へー、なるほどー。どうやるのですか? やってみてください。僕、気になります!」


「分かったのです。では少し待ってほしいです」


 コトハは若干下を向き、目を閉じた。どうなるんだろう。わくわくしてきた。


 でも、もし本当にただの厨二病なら怒っちゃいそうだな。さて、どっちなんだろう?


「…………我ハ……ん? えーと、うーんと……」

 コトハは首を傾げて天を仰いで、

「あれッ? 何だっけ? うそ、もう忘れたですか、わたし」

といった具合で焦り始めた。


 あれ? やっぱりここ現実なのかな。やっぱそうだよね。ふと気づいたら異世界にいました、とかそんなご都合主義な展開するわけないか。なに期待しちゃってたんだろう? 僕よ、現実逃避はほどほどにな?


「あのー名前ってなんでしたっけ?」

 コトハが気まずそうに尋ねてきた。


 あー、メディアに情報流して地元ニュースとかで『少女に誘拐された藤代語君(15)について何か知っていたら◯◯署のこの番号にご連絡下さい』って出るようにするのかな。嫌だな……。


 あっ、でもそれはそれである意味での人気者になれるかもしれないな。言って、みようか……。


「藤代語です」


「フジシロカタルですね。覚えておくです。ーーではもう一度アクセスし直すです」


 コトハは「スーーーー、ハーーーーーーーー。スーーーー、ハーーーーーーーー」と深呼吸を二回深呼吸をしてから、再び若干下を向いて目を閉じた。


 ん? もう一度? てか何で名前訊かれたんだ? それともちょうどいい呪文でも思いついたのかな?


「……我ハカタルノ精霊コトハ也。精霊機関ヨ、今コソ我ニチカラヲ与エタマエ。ーージャンル:基本的なこと(ベーシック)内容(カンテント)チカラの解放(リミット・ブレイク)That's all」


 約二秒後ーー

「うわぁぁぁああ……! なんか光ってるー! オーラかなにかみたい」


 コトハが呪文っぽいものを詠唱したら、僕とコトハがーーカッコイイ言葉で言うとーー紅蓮の光に包まれた。しかも眩しく感じない。

 ただ、光は彼女の方が強いかな。いや、それはそうか、詠唱したのは彼女だし。


「はいです。カタルの言うとおりこれは《聖力(オーラ)》なのです。精霊たちはこのチカラでこうげきしたり障へきを作るなど、色んなことができるのです」


「へー。凄いですね! オーラに包まれることが出来るなんて本当に異世界みたいだ」


「あ、信じてくれたですか?」


「うん。リアルでこんなことが起きるわけがないですよね。ラノベやアニメ、漫画じゃあるまいし。それと、色々なことができるってことは、このボロボロになっちゃった服をなんとかすることもできますか? 実は僕はずっと寒いんです」


「よく分からない単語がでてきましたが、信じてくれたのならまぁよかったです。それと、チカラを物につかうことはできないのです」


「そ、そうなんだ……」

 マジか……。どうすればいいんだろう? いや、今すぐにはどうにもできないだろうな……。


 それにしても!


 異世界なう、なんて夢みたいだ。現実逃避するときにしてた妄想と似たような世界を体感できるなんて! 例え夢でもーーというかそうなんだろうけれどーーこのまま覚めないでほしい。僕の今までの苦労、悲しみ、劣等感、罪悪感、情けなさ、エトセトラは全てこの瞬間の喜び、幸福感を得るための代償だったんだ……!


 ーーん? 待てよ? なんで僕も一緒に光ってんだ? まさか僕は召喚される過程で精霊化したのか?

 僕は頭頂付近を触ってみた。が、そこには耳は存在せず、本来あるべき場所(ところ)に本来の形であった。


「ん? 急に頭なんかさわってどうしたのです?」

 コトハは小首を傾げて言った。うん、この子……じゃなくてこの(ひと)は可愛いなー。合法ロリってやつかな? 合法ならセーフだよね。犯罪者予備軍と呼ばれなくても済むよね。ーーじゃなくて!


「あ、ああ、そういえばなんで僕も《聖力(オーラ)》に包まれているんだろうなぁって思いまして」


「おっ、いい質問ですねー」

 コトハは某ニュース解説者のように言った。あれ? ここホントに夢の中あるいは異世界だよね!? ま、まぁとりあえず都合良く『偶然だった』と楽観視するとして。


「ありがとうございます。それで、なんでなんですか?」


「それはですね、あなたを召喚する際に《力の連結(コネクト・アビリティ)》という術もつかったからなのです」


「コネクト・アビリティ?」


「はいなのです。これはわたしたち精霊と人間を目に見えないナニカでつなげるものです。この術をほどこすことによって精霊はチカラをより強く、より(なが)くつかえるようになるのです」


 は……? どういうことだろう? 今の説明だけだとちょっと、というか全然理解できないよ。

「それってどういうことですか?」 


「えーと、ですね……そもそも人間にも《聖力(オーラ)》が宿っているのです。ですが、人間にはこれをあつかう機関がありません。たからのもちぐされってやつです」


 えーと……………………人間は、電池みたいなものってことかな?

 ほら、電池の中ではずっと電気が作られ続けているけれど、ぽんとそこら辺に置いても何も起こらない。それと同じような状態なのかな?


「あのー、今の説明で分かったですか?」


 しばらく僕が黙っていたため少々不安になってしまったのか、コトハが問いかけてきた。

「あっ、ごめんなさい。なんとなくですが分かった気がします」


「んーなんだか不安な回答です。……ま、まぁじっせんしてみればきっと分かるようになるです」


「実践? どいうことです? ……それと、今まで忘れかけていたけれど、そういえばなんで僕は召喚されたのですか?」


 なんでこんな大事そうななことを忘れかけていたのだろう。

 そういや異世界召喚された主人公が異世界でのほほんと生活する話なんて聞いたことないや。



「ーー姉様を救うために召喚したです。勝手なことをしてごめんなさい。でも、協力してほしいです」



「えっと……どういうことですか?」


 精霊にも姉妹って概念があるんだー。それより、救うってどいうことなんだろう? 病気になった姉のために幻の薬草を探すのを手伝ってほしい、ってことなのかな? 僕に出来ることなんてその程度だし。


「何ヶ月か前、姉様は突然ナゾの団体にゆうかいされてしまったです」


「え……。本当、ですか?」 


「はい、なのです。このナゾの団体は本当に何もかもがナゾです。誰がメンバーなのか、どこにあるのか、いつからあるのか、目的はなんなのか、すら……です」


「えっ……そっ、それって絶望的な状態、ですよね……。どうして……あんなに明るくいられたのですか?」


 そんな問題を抱えているのに……どうして『えっへん』とかってふざけられていたの? 僕ならとっくに心折れていてもおかしくないのに……。それともそれが『大人』ってやつなの?


「あー、わたしはもとからそういう性格なので……」


「そう、なんですね」


 そっか……心が強いんだな。(うらや)ましい。


「それでそのナゾの団体はどんな恰好(かっこう)だったのですか?」


「そのときは今よりずっと寒かったです。だから、コートを着て、ブーツをはいていたです。それからマフラーを首に巻いていて、口までかくれていたです」


 うん、そのへんの通行人と似たような服装をして、怪しまれないようにしてたのか。それなら捕まってしまうのも納得できる。


「ここまではいいんです。ですが……」


「ですが?」

 なんだろう? 一つだけ小さな目印があったからそれを参考に探している、ということなのかな? それで、探すのが大変だから、手伝ってくれそうな人を召喚したってことかな? ……うん、あんな現実から一時的かもしれないとはいえ解放してもらっているんだ。それぐらいの恩返しならしないとね。


「ですが、コートのボタンは全てとめていなくて全開だったです。その下はいきなり裸で、胸から毛がボーボーに生えていて、ネクタイをしていました。それから、パッ、パ、パンツをはいていなくて、つつを、そ、その……股のモノ、にかぶせていた、です……。さらに、頭にせ、せんじょー的な女の人の真っ赤なパ、パ……パン、ツをかぶっていた、です……あと、紫と黄色のキラキラしている仮面をつけてたです。」


 …………。それってーー



「ーーただの変態じゃないかぁぁぁぁああああぁぁッッッ!!」






お待たせしました。今回は前回ほど間を空けずに済んでよかったです。

ただ、次回もまたしばらく間を空けてしまいそうになります。何故なら来週定期テストがあり、その翌週には模擬試験があるからです。

次回かその次で第一話を終わらせる予定です。第二話ではいよいよ物語が動き出し、キャラも何人か増やします。

今後もよろしくお願いします。

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