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第二話 居候 その5

 朝食を終えて、食堂の片付けも終えて、陽が割と高く昇った頃。

 僕とアヤメさん、コトハは外へ出た。今から街を案内をしてもらうのだ。


「えっと、どういうところから案内すれば良いのかしら。知りたい場所ってある?」


「知りたい場所、ですか……」

 んー、突然言われてもなぁ……特に思いつかないや。


「ごめんね。いざ案内するとなると、どうすればいいのか分からなくなってしまったわ」

 少しだけ申し訳なさそうだ。こんな表情もするんだ、へー。


「貸出屋の娘、今度やる大会の受付をする場所を教えてほしいです」


「あー、そういえばカタルが召喚された目的は大会に出て優勝するため、だっけ?」


「はい、なのです」

 ということでアヤメさんが歩き出したので僕とコトハも後を追う。


「そういえば大会って具体的にどういうものなんですか? なんだかんだでまだ知れてませんので」


「そういえばそうだったです。大会とはワース社というところがしゅさいするトーナメント戦なのです。ふんいきはうで試しみたいなものですが、数少ないごらくの一つとして民しゅうには人気な行事なのです。今回のぶ台たいはここーーヴォータであり、ゆーしょーしたときにもらえるのが精霊ーー今回の場合はわたしの姉様なのです。ルールなどは、まぁ、参加受付のときに説明されるはずなのです」


「……え? どういうこと!? 景品の精霊が……コトハのお姉さん!?」

 アヤメさんが驚いて声を上げた。コトハは細かい事情を説明していなかったらしい。いや、恩人とはいえそこまで話す義理はないのかもしれない。

 それともそんな暇すらないほどコキ使われていたのかな。もしそうならなら申し訳ない。


「コトハ、あなたはワース社から脱走した精霊だったの?」


「脱走?」


「ワース社のやる大会では毎回優勝景品として精霊を与えられるの。その精霊は《力の連結(コネクト・アビリティ)》を行えていなくて、且つ弱っていたため保護されたものよ。精霊の主なエネルギー源はーー詳しくは解明されていないけれどーー力の連結によってしか得られないから、景品になることは精霊にとっても良いことよ。なのに脱走したなんて、恩を仇で返すようなものだわ」


「へ? コトハから聞いたことと何か違う……」

 コトハの話とアヤメさんの話が噛み合っていない。


「そうなのです。今の説明おかしいのです」


「おかしい?」


「だって……姉様は、数ヶ月前にナゾの団体にゆうかいされたのです」


「ゆ、誘拐……?」


「はいなのです。あんな変なかっこうで保護とかありえないです」


「変ってどんな感じ? ワース社の全社員は制服を着ているけど、それではなくて?」


「コトハ曰く、誘拐しに来た男全員が裸の上にコートを羽織っていて、胸毛がボーボーで、パンツを穿いていない代わりにブツに筒を被せていて、頭には真っ赤な女性用下着をーー」


「ーーちょっと待ってそれただの変質者じゃない!? ワース社の制服はたしか水色のつなぎよ」

 アヤメさんはちょっぴり頬を赤らめた。さすがにこれは恥ずかしいよねー。


「ということはーー」


「ーーもしそのコトハの話が正しいのなら、大変な事態ね。弱っている精霊の保護活動と称して誘拐してから、景品にしていたなんて……虐待や差別だわ」


「しかも景品となった精霊の居場所は一切公表されてないから、優勝する以外に助ける道はない、だよねコトハ」


「そう、なのです……」


 そうこう話しているうちに受付をする施設に着いた。

 五階建ての建物で、外装には特に怪しいところは見つからない。そのまま扉を開けて中に入った。


「どうされました?」

 軽く内装を見回していたら、受付をしている女性が話しかけてきたので受付の前まで歩いた。


「大会のエントリーをしたいのですが……」


「はい、エントリーですね。少々お待ちください」

 受付の女性は名刺サイズのカードと説明書と思われる単行本サイズの薄い冊子を台の上に置いてーー


「ーーた、タブレット……ッ!?」

 建物の作りや人々の服装などは近世の外国みたいなのに、いきなりタブレットとかいう現代の機械を取り出して、何食わぬ顔で操作し始めた。

 雰囲気ぶち壊しだわ!!


「ちょっとカタル、何いきなり大声出してるのよ?」


「あ、すみません」


「それにしてもよくタブレットなんて知ってたわね? あれは二年程前に運用が始まったばかりで、皇都と一部の地方都市にしか出回ってないはずよ。あなたくらいの田舎者は名前すら知らないと思ってたわ」

 

「えっ……あー、た、旅人から聞いたんだ」


「へー、そうなんだ」


「ではご説明させていただきますね?」

 

「はい、お願いします」


「この大会には予選とスタジアムで行われる本戦がございます。ではまずは予選からです。このカードは大会に参加していることの証明書であり、予選における勝敗を記録するものです。予選には会場はございません。お好きな相手とお好きな場所で戦ってください。ただし、人々の迷惑とならないように注意してくださいね。本戦に参加する条件は十勝することですが、五敗した時点で失格となります。期間は今日から数えて、十八日後までです。ここまでは宜しいでしょうか?」


「はい、大丈夫だと思います」


「細かい決まり等をすべて説明致しますと大変時間が掛かりますので、この冊子を参照してくださいませ。では本戦のご説明へと移させていただきます」


「はい」


「本戦はトーナメント戦を予定しており、会場は街の中央付近にあるスタジアムでございます。組み合わせ等はこちらでランダムで決定致します。ルールは一般的な試合と同じでございますので、ご不明な点は冊子を参照してくださいませ。手続きなどの作業がございますので、試合のある日はスタートより一時間前にスタジアムの選手控え室にお越しください」


「はい」


「ご説明は以上でございます。何かご不明な点がございましたら、お申し付けください」


「あー、はい。……多分、大丈夫です。ありがとうございました」

 まあ最悪ここをまた訪れればなんとかなりそうだな。面倒くさいし、少し恥ずかしいけど。


「ではご武運を願います」

 受付の女性は最後にニッコリと営業スマイルを浮かべた。




約二週間ぶりの更新となりました。

今回は先延ばしをしていた説明をした回となりました。いよいよ話を動かし始めるので、次回も宜しくお願いします。

ちなみに無事に志望校に合格で着ました。

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