城内
<城門前>
門番:何者だ、ここは皇帝陛下の居城である。
速やかに立ち去れ。さもなくば。
アレン:これを見よ、西部守備隊隊長アレンだ。 皇帝への謁見をお願いしたくこちらへ参った。
門番:これはこれは、左遷、クスッ、栄転なされたアレン様ではないですか。
アレン:私をご存知でしたか、それでは速やかにお通し願おう。
門番:待って下され。皇帝陛下に合われるとあれば、騎士団の許可はいただいておられるのだろうな?
アレン:それは、無い。急を要するのだ。
門番:それは困ります。ルールを守っていただかないと、私目もカーン大臣から罰せられてしまいます。
アレン:そんな事を言ってる場合か!貴様のせいで西の村が滅びてもいいのか?
門番:村の生き死には、私が感知する所ではありません。
私が守るのは陛下がいらっしゃる城の門を預かり、規則に従わぬ物はここを通さないことでございますゆえ。
アレン:何が来ても通さぬのだろうな?
門番:通しませぬ。例え百の敵兵が攻めて来ようともです。
アレン:よし、分かった!天晴れな心掛けだ! 絶対に通すんじゃねえぞ。
命ある限り、いや、命を失っても、この門を守り切れよ!
門番:言われずとも、そのつもりでございます。
アレン:そんじゃ、また会おうな。
門番: ご理解頂き、恐縮でございます。次は許可をもらって来てください。
...私は貴方に憧れてここに今ここに立っているのです。
ここをすんなり通しては、多分、貴方に叱られることでしょうね。
大臣の指示とはいえ、私の笑いの演技など、簡単に見透かされて居ましたね、多分。
アレン:さあて、久しぶりだな、腕がなるぜ! また、少し苔が増えたな。
壁の痛みが、少しずつ酷くなってきてる。
早く直させないと、俺みたいなのが上がって来ちまうぜっと! ほっ!ほっと!言い眺めだな、ここは。
<城壁の上>
皇帝:ヒョイ、ヒョイっと!
皇后:またそんな危ない事を!
ギルモア:大丈夫ですよ。
皇帝陛下、さすがですね!バランス感覚は超一流です。
皇帝:でしょ!大丈夫なんだって。そして、こんな事も出来るよ、母上様、見て下さい! はーっ!(ツルッ)うわぁー。
ギルモア:おっと、少し足を滑らしましたか? 陛下らしくないですね。
皇帝:今のはわざとだ!ちゃんと助けられるか、確認しただけだ!
皇后これ、助けてもらったら、ありがとう。でしょ?
皇帝:うーん、嫌だ!
また、聞き分けの無い!
皇帝:うるさい!アレンならもっと早く、足を滑らす前に助けてたよ!
また、アレンはもう遠くに行ってしまわれたのですよ。
ギルモア:アレン殿にはかないませぬな。
カーン:これ、何を惜しい、いや、コッホン。何を騒いでおられまする。
皇后いつもの事ですわ。
皇帝:うー。
皇后ほら、カーン大臣にもご挨拶なさい。
皇帝:おはよぅ。(小声)
カーン:おはようございます陛下、今日もお元気の様ですね。
皇帝:ああ、元気だぞ。
ギルモア:あれ、急に元気がなくなってしまったね、
皇后:あらあら後ろに隠れてないで、ちゃんとご挨拶なさい。もう。
カーン:まあ、良いではないですか皇后様。
皇后:ごきげんよう、カーン大臣。本日もこの子以外は平和なようで。
カーン:そうですな、皇帝陛下はいつも元気に、そしていつか凛々しくなって、
この国を繁栄へと、導いていただく事になります。
隣国を次々と平定し、この国を世界一の国家へと成長させた暁には。
アレン:暁にはどうなされるつもりかな?
カーン:その声は、アレン!いや、曲者だ!誰からおらぬか!
皇帝:アレーン!ヤッホー(抱きつく)
アレン:皇帝陛下、今日もお元気の様ですね。
皇帝:アレンも元気?アルマスも?エリサねぇも?
アレン:はい、元気ですよ。
兵士:どうなされました、曲者はどちらに!
カーン:こ、ここじゃ!皇帝陛下が囚われておる!
兵士:うむ!こら!その手を放せ!って、うが!
兵士:なんと!ならば、これでどうだ!うわぁ!
アレン:どうした、どうした!
兵士:うむ!曲者めー!
アレン:おい、その剣抜くのか?後戻りはできないぞ。
皇帝:さすが、アレンは強いなぁ。
兵士:ハッ、皇帝陛下、早くこちらへ!
皇帝:何言ってるのだ!帝国騎士団団長のアレンだぞ!
兵士:戦場の不敗神と言われる、あの、アレン様。
ギルモア:陛下、彼は元、帝国騎士団団長ですよ。 そうであろう、守備隊長殿。
アレン:はい、私は西の防壁を守る守備隊の長に過ぎません。
兵士:西って、あそこはアルマス副団長がいる所だろ?
兵士:あの二人がいれば、誰も攻め落とす事なんか出来ないだろ。
ギルモア:すいませんが。今は代理とはいえ、このギルモアが団長をやらせていただいております。
アレン:おお、えらくなったな!
ギルモア:貴方よりもね。
アレン:おっとそうだったな。これは失礼いたしました。
ギルモア団長どの、失礼ながら、皇帝陛下への謁見を所望致します。
ギルモア:事後報告は今回までにしてくださいよ。 それに、断られて引き下がる貴方でもあるまいに。
アレン:そんな事はないぞ、規律は守るぞ!それなりにな。
ギルモア:そうだと嬉しいのですが。 で、どちらからここへ上がられて来たのです?
アレン:ああ、そこの壁をな、こうやって。
ギルモア:貴方は偵察能力にも長けているのでしようね。恐れ入ります。
皇帝:僕もやるー!
アレン:お、やるかー!しかし、落ちると痛いぞー。
皇帝:うーん、痛いの嫌だな。
アレン:よし、落ちても痛くないように、紐で体をくくって大丈夫な様にしてから登ろうな。
カーン:失礼ながら陛下にはこれから政治学を学んでいただく予定なのですが。
皇帝:嫌だ!こっちの方が楽しい!
カーン:楽しいか楽しく無いかの問題ではありません。国というものはですな、まず、内政を
皇后:まあ、良いではないですか。
皇后様ぁ。まあ、お妃様がそうおっしやられるのであれば、私はなにも言えませぬが。
カーン:そうだギルモア殿からも何か!
ギルモア:陛下の意向には逆らえませぬよ。 私は陛下あっての騎士団なのですから。
それに、私は所詮借り物の団長。 この団長の紋章が重過ぎて肩が凝ってしまいます。
カーン:ふううぅーむ、内政をないがしろにするとはけしからん!くっ!もどるぞ。
皇后:しかし、アレン殿は何をしにお城へ?
ギルモア:もう、城下まで降りられましたぞ。ほら、あの階段をご覧なってください。
皇后:相変わらず、こういう仕事は早いですね。
ギルモア:書類整理は最後まで私とアルマスの仕事でしたからね。
皇后:そういうちまちましたことは、あの人には合わないのよ。 机の前に10分と座っていられないかたでしたからね。
そして、十字模様の外套を纏うことも式典以外にはなかった。
ギルモア:いえ、戦場でもまとっていらっしゃいました。帝国騎士団の十字模様。
皇后:そうなのですね。
ギルモア:そして、その十字模様を傷つけることもなく、誇り高き立ち回りをなされた。
皇后:私は、戦いは好きではありませぬ。
ギルモア:何をおっしゃっておいでですか、今、この宮中も戦火の待った只中ですよ。
皇后:それはどういう意味で。
ギルモア:いずれわかります。いや、できればお知りにはならない方が幸せかも。
皇后:ギルモア!不安にさせないで頂戴!
ギルモア:心配なさらないでください。私はあなたの味方です。
皇后:私はどうなっても構いません。でも、あの子だけはなんとか。
ギルモア:分かっております。曲がりなりにも皇帝陛下であらせられます。
そうそう簡単に手を出すにはいきますまい。
皇后:守ってやってください。あの子は、まだ幼くて
ギルモア:分かっております、陛下は偉大なる先の皇帝の血を引いておられる方。
舐めてかかる奴がいれば、全て返り討ちに遇うことでしよう、しかも、アレン殿もおいでだ。
さてさて、そろそろ私たちも城下へ参りましようか。
<中庭>
皇帝:どうしてアレンはここに来たの?
アレン:はははっ、そう言われるとちょっとつらいですね。 ドラゴンを退治に行こうかと思いまして。
皇帝:ダメだよ、あぶないよ。 ドラゴンは、凄く強いんだよー。 がおーって言う奴だよ!
アレン:大丈夫ですよ。一人じゃないですから。
皇帝:前だって一人じゃ無かったじゃない。
アレン:そうですね。あの頃は若かった。 そして、若すぎました。
皇帝:でも、ぼくよりは年上だったよね。
アレン:それはそうですが。 周りが見渡せない餓鬼だったんですな。 単なる若造。
十字模様を背負う資格などなかったんです。まぁ、それは今も同じ。
皇帝:あのマントってそんなに重いのかな?
アレン:陛下の方がもっと重いものを背負っていらっしゃいますよ。 とんでもなく大きなものを。
私は守らねばならないんです。
皇帝: 西の城壁を?
アレン:西も東も、 全てを。 この国の全てをですね。先代皇帝の意志を引き継がねば。
<城門>
エリサ:通せって言ってるでしょ?
門番:通せません。
エリサ:エリサよエリサ、知ってるでしょ!
アレン:あいつー!声でかいんだよ!
エリサ:うわぁ!エリサ姉もきてるの?
アレン:もちろんですよ。
皇帝:僕も一緒に行きたい。
アレン:そうだ、陛下と同じくらいの少年もいますよ。
エリサ:これはアルマスなの。
門番:なにいつてるんてんすか、アルマス副団長がこんなに小さいわけないじゃないですか。
エリサ:ねえねえ、じゃあこれを見て! アルマス副団長の認識証!
副団長がこれを、この少年に渡した。この意味、わかるわよね?
門番:え、でも、こんなに小さい少年が
エリサ:アルマスの全権を今、この少年は持って居るということよ。
つまり、他の団員を貴方の代わりにここに立たせる事だってできるのよ。
門番:そ、そんな。
エリサ:その時、貴方は何処で何をしているでしょうね。考えてみなさい。
門番:あ、ええ、そんなことを。
主人公:無理しなくていいですよ、ここで待ちましょうよ。
エリサ:嫌だ、こんな面倒くさい習慣は早くなくせばいいんだわ。
アレン:ほーら騒ぐな、不良少女。
エリサ:だーれが不良少女だってぇ! あら、アレン。ぶじに入れたのね。
門番:アレン殿、何処から入られたので!
アレン:あそこからな。 あの城壁。
エリサ:貴方、よくトレーニングに使ってたものね。
アレン:最初は酔っぱらって、つい登っちまったんだけどな、癖になってしまったよ。
エリサ:落ちたら命は助からない高さってのに、まあよくやるわね。 さてと、早く通して!
門番:だから、ダメですって。
皇帝:通行並びに謁見を許可する。
門番:また、何を言ってるんですか。陛下!
皇帝:僕が言ってるのだ、良いだろ?
ギルモア:通してやれ。
門番:ギルモア様も!は、はい!
エリサ:さて、行きましょうか。
主人公:なんか門番の方には悪いことしちゃいましたね。
エリサ:ちゃんとお礼はするよ。融通は効かないものの、真面目に仕事してるだけなんだもの、彼って。
主人公:人柄が顔に出てますね。
エリサ:うん、そうね。真面目一本槍!って感じ。 で、アレン、ファイブスターは何処?
アレン:あ、向こうの木の幹に繋いだままだった!
エリサ:あーあ。知ーらないっと。 きっとー、かなりご機嫌斜めだよー。
ギルモア:私が代わりにいきましょうか。
アレン:ギルモア、いいのか?
ギルモア:私も久々に会いたいのです。私と共に育ったあの馬を。
アレン:ファイブスターも喜ぶだろうな。
エリサ:ねえねえ、なんでファイブスターっていうか知ってる?
主人公:え、白い模様が五つ入ってるからじやないの?
エリサ:たしかにそんあ模様もあるわね。でも、それだけではないの。
彼が三歳になった年、他の国も合わせて早馬の競争が開かれたのよ。で、 結果、どうだったと思う?
主人公:もちろん一番だったんでしょ?
エリサ:一番と言えば一番。ただし、五頭同時にね。
主人公:え、そんなこと。
エリサ:でしょ?でもそれがあったのよ。まあ、細かくみれば差はあるのかも知れない。
でも、そんなの些細な事。 五頭同着、しかも圧倒的な速さでね。 そして、着いたあだ名がファイブスター。
主人公:そうなんだ!凄いね。
エリサ:珍しいわよね。 名馬が一度に五頭も現れるなんてね。
そんでギルモアが育てたのがあの馬。 一緒に育ったというのがしっくりくるのかな。
主人公:だから乗りこなせるんですね。
エリサ:あの馬をとても大事にしていたのよ。 だから、帝国騎士団団長を引き継ぐ時、あの馬をアレンに託したの。
きっと色んなことを考えた上で、それぞれが最善になるよう、手筈を整えてるはずだわ。
だってアレンとアルマスが両腕ならば、彼は帝国騎士団の頭脳だから。
アレン:何を話してるんだ?
エリサ:お馬のお話。
アレン:そうかそうか。いい馬だろ? 乗りこなせるまで苦労したぜ。何回振り落とされた事やら。
エリサ:ギルモア以外はほんと近づかせない子だったものね。
アレン:ああ。今もあいつにデレデレしてるはずだぜ。あ、あいつもデレデレだろうな。
皇帝;よく来たね。
主人公:え、この子は。
アレン:おいおい、皇帝陛下の御前だぞ。
主人公:ええ!皇帝陛下、子供なの!
アレン:子供なんだよ、現在はな。
皇帝:何か文句でもあるのか?
妖精:皇帝陛下、ご機嫌麗しく。
皇帝:お、もしかしてこれ、妖精!? うわぁ、凄いねー本当にいるんだねー 欲しいなぁ。
妖精:ペットなどではありませんよ。 この少年と旅を共にしております、同志といいますか。
皇帝:へえー、不思議だなー
妖精:そんなに見つめられては、照れてしまいます。
皇帝:あら、お花なんかつけて、女の子見たい!
ハナカマキリ:カマー!
皇帝:あ、痛っ!
門番:なんと、皇帝陛下に、暴力を! このカマキリ、八つ裂きだな!
皇帝:まて、強く握り過ぎた僕が悪かったんだ。 ごめんよ、生きてるとは思わなくて。
アレン:この世界では、熊のように大きな動物も、アリのように小さな動物も。 全て命あるものでごさいます。
そして、このハナカマキリも。 棒っ切れも。
皇帝:え、まさか!
ナナフシ:ピーン!
皇帝:うわ、動いた!生きてるんだ。
アレン:そうなんですよ。気付かなければ風景に溶け込んでしまいます。
それは民衆も同じこと。 しかし、一度に一か所に集中すれば大きな力となります。
皇帝:アレンよりも?
アレン:私一人の力など、微々たるものにすぎませんよ。
皇帝:あんなに強いのに。騎士団のだれよりも強いのに、そうなのか?
アレン:皆が同じ方向を向いて進んで居れば、強大な力を生むのです。 同じ方向ならばですが。
逆方向になるとそれは抵抗となります。 抵抗の力の方が大きければ、物事は逆方向に向かう可能性もあるのです。
皇帝:アレンもギルモアも僕と同じ方向を向いているのかな?
アレン: もちろんですよ。
アレン:ほとんどの者達はそのはずです。極一部を除いては。