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山小屋の少女

作者: 負人

昨日に引き続き短編3作目です。

気楽に読んでください。

では、また。

 最近、僕の住んでいる町で変な噂が流れている。

噂はどんどん広がり尾ひれが付きまくって、もはや原型をとどめてはいない。

僕が知っている中で一番古くて一番原型に近い噂話はこうだ―――


 『錦山を歩いていると何処からともなく気が遠くなるほどの異臭がしてくる』


 今では『日本政府の闇に埋もれた化学兵器が~~~』や『化学汚染された土から生まれた超生物の発する悪臭~~~~』とか原型に一番近いもの知っている僕からすれば呆れてものが言えなくなるほどの尾ひれが付きまくっていた。

何とも嘆かわしい事だなと噂話を嬉々として語る町の人々を見て、心の中でふと思ってしまう。

……まぁ、そんなこと絶対に口にはしないのだが。


 何で僕が確信を得たような話し方をしているかって?

そりゃまぁ、ねぇ?


 噂の真実を知っていたらそうも言いたくなるさ。

その時の様子でも今日は思い出そうかな、どうせ今日は風邪ひいて動けないんだし。



 一年前の春の事、学校の授業が昼までだったので特に部活にも入っていない僕はさっさと家に帰ることにした。

うちの学校は錦山と言うそこそこでかい山の麓に立っていて、まぁ特筆して言う事がないほどの普通の学校なので、これ以上は学校の事については話さない、へたに話してうっかり変な事を話すのも嫌だしね。

 家に帰るのにその山を越える……なんてことは必要なく、横目に『今日も大きいなぁ』とどうでもいいことを考えながら帰るのだが。

 魔がさしてしまったのか、遠回りだがたまには山を通って家に帰ってみようと思ったのだ、別に深い意味は無く『今日はあっちの道から帰ってみよう』みたいなもの。


 ハイキングコースをえっちらおっちらと歩いていく、山を登り少し下りくねくねとした道を通り少し開けた所まで歩いてきた。

 後ろを振り向くと自分の住んでいる町が見渡せて気持ちよかった、こんなに広かったんだな自分の住んでいる町って。


 お腹もすいたし帰ろうと山を下山しているときに何処からかツンと鼻に付く異臭がした。

キョロキョロと辺りを見渡したが何もないし自分を除いて誰もいない、しかし異臭は現在も続いている。

少し興味がわいてきた、臭いのする方向へとふらふらと歩いていく。

 異臭がどんどんキツくなってきた、それだけその異臭のする原因に近づいたと言う事なのかもしれない。

しかしこの臭いは強烈だ遠くなら『あ、変な臭いがするな』ぐらいで済むのだが、近づくと夏の日の生ゴミの入ったゴミ箱を開けたような腐った刺激臭が息をするたびに肺の中へ入ってくる、このまま帰ろうかとも考えたが、ここまで来たのだ正体を見極めてから帰ってやろうと考え直し更に臭いのする方向へ近寄ってみることにした。


 どうやら異臭の正体は目の前にある山小屋の中からするようで近寄りたいがこれ以上近づくと気を失いそうになるのでちょっと躊躇ったが、覚悟を決めて小屋の中を覗くことにした。



 やめとけばよかったかもしれない、今考えればと遅まきながらに思いつく。だれが想像できるだろうか?


 小屋の中で異臭のする缶詰を顔を赤く染めながら恍惚とした表情でその中身を食べている全裸の美少女がいるなんて……だれも想像なんて出来るわけがない。

 その女の子は年は多分僕よりも見た目1~2歳若いぐらいの女の子で艶やかな黒髪は全身を含めて缶詰を開けたときに噴出される液体まみれでドロドロなのだが、それでも息をのむほど美しかった。

 これほどの美少女が町に住んでいたらまず噂になるようなものだが……気になるが後で良いだろう、今現在一番気にしなくてはいけない問題は、


 目の前の美少女がこっちを見ておいでおいでと微笑みながら手招きしてくるのだ……どないしろと?



 今でも忘れないあの小屋での出来事は、簡潔に話すとあのあと臭いを我慢して小屋の中に入ると気を失い気が付くと件の美少女にひざまくらされていた……顔が真っ赤だったそうだ。

 で、こんなとこで何をしているのか?と一番気になっていたことを問うとこう帰ってきた。


 『この缶詰「シュールストレミング」って言うんだけどそれが大好きなんだけど家の中で食べるとこの臭いのせいで怒られるから、人目に付かないここで心行くまで食べていたんです』


 シュールストレミング、帰った後でネットで調べてみたのだが簡単に言うと発酵したニシンの缶詰だそうで、世界一臭い食べ物だそうだ、なぜこんな食べ物を美味しそうに食べるのか聞いてみた所『わからないわ、いつのまにか食べるようになっていたのだから』……何かもう見た目美少女なのに色々台無しである。


 ついでに裸で食べている理由を聞いてみた……彼女があまりにも堂々としすぎて照れてるこっちがおかしいのかと思ってしまうほど自分の体を惜しげもなく開けさらしていた。

 すると彼女はこう言った、


 『見知らぬ家で裸になるととても興奮するのよね、それにいつ人に見られるか解らないスリルもあってさ、それにこの缶詰を開けたときに出てくる液体を全身に浴びたかったからなのよね』


 ととてもいい笑顔で答えてくれた。

いやいやいや、おいおいおい……この美少女どうやらただの露出狂のド変態さんだった。

シュールストレミングを進めてきたが丁重にお断りしその場を後にした。

山を下りる最中に一つ心に決めた


 『もう二度と変な事には首を突っ込まないようにしよう』と。



 一か月後

 どうやらわがクラスに転校生がくるようだ、どっかのお金持ちのお嬢様で見たやつはすごい美人だったとうわの空で答えた。

 嫌な予感がする、こう虫の知らせ的な何かが告げる『何かヤバイ』と繰り返す。

 SHRの時間、ついに転校生がやってきた。

 しかし見覚えがありすぎるほどにあった、何せ彼女の全てを見てしまったのだから。


 いつぞやのシュールストレミングを素っ裸で食っていた美少女がクラスに転校生としてやってきて見る人全てを虜にするような笑顔でこう言った……


 『皆さん、これからよろしくお願いします……ちなみに一番好きな食べ物はシュールストレミングです///』

負人です。

今回初めて一人称視点的な書き方に挑戦したのですが……ちゃんと書けているのでしょうか?

では、また次回

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― 新着の感想 ―
[一言] 噂の真相がまさかそんなことだったとは、予想もつきませんでした… 読んでてとても引き込まれました、面白かったですよ。 途中でニオイを想像してウッてなりましたが…(汗)
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