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第二話 マジで厄日

 たっぷり時間を使って自由に書いたら…長くなっちゃいました。

 それでも…ね?

 読んでもらえたら…ね?

 …お願いしまーす!

 

 エレベーターがB3を指すと、扉が開いた。


 入った途端に薄暗い、空気も濁っているようだ。

 さて、とりあえず少年の所へ行かないと…行かない…と。

 

 …………。


「てめぇ看守っ!仕事しろよ!!」


 警備室に押し入り、階の全ての明かりをつけ、換気扇をフル回転させた。

 警備員兼看守の秋山マキノは自分で持ってきた布団で爆睡していた。

  

「おいマキノ!朝の6時には電気つけろっていつも言ってんだろ!朝飯は7時!希望者には8時!っていうか起きろバカ!」

 

 オレが怒鳴るとマキノがずるずると這うように布団から出てきた。  


「あーうー…眠い~お腹減ったー!あ、黒田ぁ食堂のおばちゃんから朝ごはん貰ってきてー…ついでに留置場の皆にご飯あげてきて…」


「なんでだよ!いや、だから仕事しろよ!お前ホントクビにするぞ!」


「えー!?いーーやーーだーー!ブーブー!」


 いつもいつもなんなんだこいつは…!頭も体も子供じゃねえか!こんな奴がなぜ留置場最終階の警備員兼看守をしているんだ…っていうか任せんなこんなガキに!まったく理解できない。


「いつもなら折れてやるとこだがオレは今からカウンセリングだ。さっさと起きろガキィ」


「あーーっ!ガキって言ったガキって言ったー!もう言わないって言ったのに黒田がガキって言ったー!」


 ふとんの中から元気よく飛び出してきたマキノがなにやらぎゃーぎゃー喚いている。


「うるせえ!お前の方がガキガキ言ってんじゃねえか!指をさすなっ」


「あーあっ言っちゃお言っちゃお!カヤ姉に黒田がガキってまた言ったって言っちゃおーっと!」


「なっ!それはダメだ!それだけはやめっ…てかさっきから呼び捨てだな年下ァ!!」


「それが嫌ならぁ~今日もマキノの仕事を手伝え黒田ー!わっはっはっはー」


 ぐおおおーっ!生意気の上にガキの分際で呼び捨てかよっ!!

 このクソガキがぁ2×歳なのになんでこんなにガキなんだ!高らかに笑いやがって!

 絶対屈しないぞこんなガキにっガキにガキにガキにガキにぃいいい!!



「あー今日は朝からぼーっとできていいなぁ」


「そーだなー黒田の奴もこねぇし…あいつ今日も休みだといいのになぁ」


「バーカバーカバーカ共ォ!(怒)出勤しとるわぁああい!!」


「あっ黒田居るじゃん」


「おーいみんなー黒田が居るぞー」


 ざわざわざわざわ…。


「なぁ黒田さーん最近飯がずっと冷めてんだよーせめてレンジでチンしてくれよー」


「おーいオレいつんなったらここから出してもらえんだよー」


「肩凝ったから揉んでくんない?」


『うぅううるせぇええええ!!!!!』


 キィイイイイン…!


「う、うるせーのはアンタだ!こんな響くところでメガホンなんて使うなよ!」


『黙れィこの軽犯罪者どもがぁああああ!!飯配ってくから受け取れェエエエエエ!!!』


 キィイイイイイイイイイイン!!


「ぎゃああああああっ!耳がぁああーーー!」


「なんで今日の黒田こんな怒ってんだ!?」


 パァンッパァンッパァンパァンッ!!


「パンを叩きつけるなぁああああ!!」


「わはははははー!これおもしろーい!」


「マキノちゃんやめてぇえええ!!」


  

〝遠くから、悲鳴が聞こえる。


 なんだろう…なんだろうな…なんでもいいか。


 ここはどこなんだろう…薄暗い檻の中だけど…そうだ…きっと悪い人たちが入るアレだ。


 だからボクも悪い人…そうだ…ボクは悪いことをしたんだった…そうだった。


 だからきっと…首を絞めて、電気を流して、銃で撃たれて…処刑されるんだね。


 殺して…貰えるんだね〟


 ……………やったぁ。



 ゾクッ!


 心の中に深く深く沈むような、ドス黒い感情が流れこんできた。

 子供のような〝声〟だ。きっと捕まっている少年だろう。

 

 不安、恐怖、絶望、悲しみ、苦しみ、後悔、嫌悪、狂喜。


 最悪の感情をごちゃ混ぜにしたかのような気持ちの悪い感覚だった。


「マキノ、これやっぱ頼むわ」


 それだけ言うとオレはパンが入った荷をその場に置いて、走った。


「あー黒田サボったー!」


 これだけしっかり伝わってくるということは、もうすぐそこのハズだ。


 そう思って走ってみると結構長い…この分だと一番奥の留置場か…?


「ここじゃ、ない…ここでも、ない…くっ!どこだ!?急に何も聞こえなくなっ…」


「お兄さん…今、何時ですかァ?」


 探していた少年は自分から声をかけてきた。

 牢の鉄の棒に手をかけオレをニタニタと笑いながらじっと見ている。

 ずっと聞いていた〝声〟だったが、なんとなく想像していた姿とはかなり違っていた。

 

 目にはクマがあり少し濁っている。


 髪の毛は灰色、白髪にも見える。


 一見子供らしからぬ風貌だが、身長と声色から幼さを感じた。


 だがそんなこと取るに足らないくらいに…。


 

〝…して…殺して…殺して、殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺「し兄殺して今殺して殺して殺して何時殺してです殺して殺してかァ殺して殺して殺して?殺して殺」して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して早く殺して〟



〝殺して〟しか…聞こえねえ…!


「ぐっ…う…は、はは…わっはっはっはっは!!」


「え…どうしたの?お兄さん」


 シン…。


 狂喜の雨が止んだ。

 危なかった。あんな状態では会話なんてできる訳がない。

 カヤの戦闘レクチャーを聞き流しといてよかったぜ。


〝ヤバイ時には…笑え!!〟

  

 それにしても…こいつは手ごわそうだ。


「はっはっは…!なんでもない…っていうか少年、鋼鉄の枷はどうした?」


「鋼鉄の枷?アレのことかなぁ…?」

 

 少年が指差した方向にバラバラになった鋼鉄の枷とイスがあった。

 見た目と反してパワー系統のウェルズか。


「なるほどね…まあそれはいいんだ」


 オレはしゃがみ込み少年の目をじっと見た。少年もオレの目を見た。

 そして口を開いた。


「なぜ一般人相手に能力を使った?」


「…相手からボクにぶつかってきたからだよ」


〝…殺して〟


「…少年はぶつかってきた人全てに能力を使うのか?」


「そうだね」


〝殺してよ〟


「悪いとは…思ってないのか?」


「うん…思ってないね」


〝もう殺して…!〟


「………!」


 オレは少年の胸倉を掴んでいた。

 少年に驚きはない。 

 オレを怒らせようとしているから当然だ。


 だが、残念だったな少年。



「オレはお前を殺さないッ!!」



「……………え?」


 ここで初めて少年の表情が変わった。

 目を見開き口が丸く開いている。


「お前がしたことはDAF・超常能力取締り法第22条〝超常能力による傷害〟に値する!それによって年齢関係なく超常能力者はDAF付属留置場にて、拘留後に超能力取締り課・WCDの専属の超能力カウンセラーのカウンセリングを受けることになっている!」


「………えぇ!?」


「そしてこのオレ黒田は、DAF中佐及び、デッドウェイズ指揮官兼参謀及び、超能力カウンセラー第一級者だ!つまり日本の超常能力者・ウェルズ達の犯罪等には必ずオレのようなカウンセラーを通すことになっている!!」


「は、はあ…」


 完全に話についていけず思考停止している少年をよそにオレは続けた。


「言い換えれば全てオレに一任されているということだ!つまりオレがお前を殺さないと言えばたとえ上層部であろうとそれを覆すことは不可能!世界的大犯罪者であろうとウェルズであればオレは無罪放免に

することができるッ!!」


「無罪…!?そ、そんな…」


「だからオレはお前を殺さないし、法もお前を殺さない!たとえ訴訟を起こされたとしても、和解金は全てDAFが負担する!」


「ちょ、ちょっと待って…!」


「待たん!お前が〝死にたがり〟なのは全部筒抜けだ!」


 少年の顔が苦悶に歪む。というより駄々を捏ねた時の子供そのものだった。


「強い力を持ったウェルズにはよくあることだ。こんな力を持った自分はこの世にいらないってな。だが大丈夫だ。能力は使いようによっては…」


「勝手なコト、言わないでよ…」


 オレの言葉を初めて少年が遮った。俯きながら震える声で。


「何が死にたがりだ…!こんな力に使いようなんてない…知らないクセに…何も…何も…!!」


 心の声も聞こえない。本心ということだ。

 

「知ったような口聞くなよッ!!!」


 バガァアアン!!!


 少年の振り下ろした拳がコンクリートの床を砕いた。


「………知ってんだから仕方ないだろ」


「うるさいうるさいうるさいッ!!!」


 その後何度も少年は床を砕き続けた。地響きが起きるほどのとてつもないパワーだ。オレはあえて止めなかった。少年も止めることは無かった。

 

 少年は座ったまま、オレはしゃがんだまま、時間が過ぎていった。


「はぁ…はぁ…」


 バンッ…!バン…!ぺちっ…ぺちっ…。


「パワー切れだな」


「っ!うるさい…!」


 どんな能力だって力は有限だ。

 このクマの出来方だと1日寝てないようだし、それはウェルズにとっては致命的だ。


「………よくあることと言ったのは悪かった」


 ずっと俯き続けていた少年がやっとオレの目を見た。涙で目が腫れ上がっている。


「それが気に入らなかったんだよな」


「………なんで、そう思うの?」


「オレもウェルズだからだ。お前と同じ…超能力者だ」


〝ホントかな…〟


「ホントだ」


「………心が読めるの?」


「ああ、能力の名は読心書籍メンタルブック。能力を全開にすればこの留置場のどこに居ても今考えていることが読み取れる。実際に人に触れれば本をめくるようにその人間の記憶を全て読み取ることもできる」


「へぇ…」


 

「おいおいテンション低いなぁ…お、そうだ!いいもん見せてやるよ少年!ジャッジャーン!」

 

 オレは左腕を巻くって銀色の腕時計を見せた。


「なにそれ…?」


 すごいジト目をされてしまった。元気づけようとしたんだが…だがオレはこのテンションを変えるつもりはない!


「聞いて驚け!これがDAFが独自に開発した腕時計型・超能力抑制装置!名づけてウェルズストッパーだァ!!」


「そ、それがあれば…能力を抑えられるの?」


 期待通りの反応をしてくれた。目を輝かせてやっと少年らしくなった。


「んー?そうだな。オレの場合は耳栓をするようなもんだ。だが能力はトレーニングを受ければ誰でもある程度まで抑えられる。これと併用すれば完璧に抑えられる奴もいるらしいぞ」


「ちょ、頂戴!それ頂戴!!」


「ダメだ!お前はまだしなきゃいけないことがある」


 少年の伸ばした手を軽くはたき、ストッパーをしまった。


「な、何をすればいいの…?」


「反省しろ」


「は、反省…?」


「あったりまえだ!オレたちはお前を全力で保護し助けるが、反省できない奴を助けてやるほどお人よしじゃねえんだ!後でちゃんと畳の部屋に変えてやるからそこで反省文を20枚くらい書け。ちゃんとお前が怪我させた奴にも書くんだぞ」


「に、20枚…う、うう…」


 少年の顔色がどんどん青くなっていく。作文は苦手らしい。


「なぁ…少年。お前は別に、相手を傷つけたくて能力を使った訳ではないんだろう?」


「う………」


「さっきも言った通りオレにウソは通じない。できればお前の口から聞きたいんだがな」


 少年は顔を伏せてしまったがそれでもゆっくりと答えてくれた。

 

 夜歩いていたら知らない男たちに囲まれてお金を取られそうになってしまったこと。

 抵抗したら殴られて蹴られてどうしようもなかったこと。

 怒りで自分の能力を制御することができなかったということ。

 そのあとの記憶がないこと。

 

 気づいたらカヤがいて、気絶するまで殴られたこと…。


「恐かった…あの女の人」


「ああ…それはマジですまなかった。オレの部下だ…」


 電話の件を思い出したオレも少年と一緒に沈んだ。


 会いたくねぇなぁ…。


〝会いたくないなぁ…〟


 偶然頭の中で被ったことに、オレは一人で笑みをこぼした。


「はっはっは…話してくれてありがとな少年」


「…なんで?」


「オレはこんな能力だから、使いすぎれば周りに疎まれ、恨まれる。お前にもそれをこれからゆっくりでいいから、分かってもらいたい。オレと同じ思いは、もう誰にもしてほしくない…だからお前がまだ死にたいと思っていても、だ」


 そう、こんな最初の会話だけで他人の心は変わらない。それはよく分かっている。

 オレと話している最中ずっと、少年の苦しみが伝わってくるのだから。


 ―それでもだ。


「それでもオレは、お前に変わってもらいたい。この世界を愛してもらいたい。力は使いこなせばいい

。辛い記憶は洗い流せばいい。それでも癒しきれない痛みは、オレにぶつけてくれればいい」


 オレは少年の両手を握った。

 小さな手だ。端から見れば、何も知らない子供の手だ。

 

 だがオレは分かる。辛く、苦しく、悲しい手だ。

 この痛みを癒すのは容易ではないだろう。

 だが…オレはお前を必ず…!


「キモい」


 ぺしっ。


 一言そう発するとオレの手を払いのけ後ろにずるずると下がった。


 え?


 は?


 ナンダッテ?


「キモいよお兄さん」


 大切なコトだから二回言いましたぁあああ!!?


「なんだとクソガキィ!!」


 オレは立ち上がりブチギレた。


「口悪ぅ」


 なんてこった。


 なんてガキだ。


 顔に似合わずひねくれてやがる…!!


「っていうかお兄さん触ったら記憶とか考えてること全部分かるんでしょ?何勝手に触ってんの?見たでしょ?ボクの記憶見たでしょ?」


「見てねぇわ!!こんないい話してるときに見るかバカ!」


「うーわー自分でいい話って言ったー」


「う、うるせぇ!ば、バーカバーカ!(泣)」


 くっ…!ガキなんて嫌いだ!オレよりガキな奴なんてみんな嫌いだ…!!


 プルルルルル…プルルルルル…。


「あ、ちょっと悪いな、ああ、ミナコちゃんか」


〝わあー仕事中に彼女と…〟


「違うわ!!あっ違う違うさらに違う!え?ナニナニ?何が来るって?」


『そ、それがっそれがががががががっ!』


「壊れたラジオかよ!」


〝どんな電話してるんだろう…〟


「とりあえず落ち着いて、あったことを言ってくれ」


『ブローケンです!ブローケンがココに!この町に降ってくるんです!!』


「………っええぇ~!」


 今日はマジで厄日だな。



 次回予告



 次回ついに登場する魔物たち…!

 モンスター1.ブローケン


ブ「地球をぶっ壊しちゃうぞ♥」


 モンスター2.千条カヤ

 

カ「黒田をぶっ殺しちゃうぞ♥」


 次回ついに登場するデッドウェイズたち…!


デ1「つーかいつまでも黒田喋り過ぎ!最初からあたしを出してればいいのよ!!だいたい主人公もあたしでいいじゃない!てか名前出しなさいよ!こいつが次回書くまでいったい何日かかるか分かったもんじゃないわ!だいたいこいつは(割愛)」


デ2「ん?ついに、俺の出番か…うん………ああ………とりあえず………むぅ…………………頑張る」


黒「やべぇ…やべぇやべぇやべぇ…!このままじゃオレ、確実に殺され…」


カ「見つけたぞ黒田ァアアアアア!!!」


黒「ギャアアアーーーーッ!」


 次回!「黒田VSブローケン&カヤ!

      〝じゃあな少年、オレはここまでだ…!〟」


少「ねぇねぇそんなコトよりさぁ…ボクの名前は…?」


 ………乞うご期待ッ!!


少「考えてないの…!?」

 

  第二話 マジで厄日 終

 上記次回予告はもう全部ウソです。

 とりあえず黒田が死にかけます。それでご了承ください。

 また見てくれた方、またチラ見してくれた方、また二度見してくれた方、ホントありがとうございます…!

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