十六日目ーかくれんぼ
旧約聖書…
李理素の綴ったとされる原初の予言書、
それは、
この世界の始まりと終わりの叡智が描かれているとされるが、
誰にも読めない天使文字で書かれて居るため、
誰も知らない、
そして、
この文書の存在を知る多くの悪魔が解読を試み、
自身らの運命の程を知ろうとした。
馬頭の魔人、
蝗の王、
黄金の支配者、
そうそうたる顔ぶれ、
そこに、
僕の幼馴染の名も有った。
「瑪瑙!翡翠はまだ見つから無いのか!」
もう一人の幼馴染の声で我に返る、
そうだ!
僕らは翡翠を探して居たんだ!
☆
事の始まりは何時もと変わらぬ朝、
いつも通り李理素に祈る母ーーー本人は僕を産み落とした個体にすぎないと言っているが僕にとっては母さんだーーーを尻目に外に行こうとして居た時、
僕らとそう歳の変わらない李躪が騒いで居るのを見つけた。
「ねぇ、桜の産み落とした64体目の個体が行方不明らしいよ、確か男の奴」
「あー、知ってる、翡翠って名前だった奴!リリス様の存在を疑って居た奴」
「え~!ショックぅ!まだ味見もして居なかったのにー」
思い思い勝手な事を言っている、
確かに僕ら三人は他の李達に比べて李理素の事をより強く否定して居る。
だが、
今気になったのはそこではない。
「その話!詳しく聞かせて…」
聞いた話は予想以上のものだ、
曰く、
李理素の残した文書を解読しようとして居た夜に行方不明に成ったとのことだ。
しかし、
驚いた事はその後だ。
『探さ無いんですか?』
『え~なんで?リリス様の逆鱗に触れたからあぁ成ったんでしょ?ワタシらはリリス様の忠実な僕だしぃ』
理由に成って居ない…
僕は奥歯を噛み締めた、
それに、
例え李理素と言う存在が本当に居たとしても、
存在を疑われただけで部下を消す奴の僕だなんて反吐が出る!
「瑪瑙!聞いたか!」
僕の憤怒に燃えた心はもう一人の親友、
今一番会いたかった青年の登場で霧散する。
「うん!今聞いたところ!」
するべき事はわかっている、
翡翠を探す!
何か思い悩んでいるなら肩を支えるし、
本当に李理素に攫われたなら意地でも取り返す!
消されてしまったなら…
仇を取る!
僕らは翡翠のお気に入りの森を最初に探す事にした。
☆
そして今に至る、
翡翠は見つけるどころか手掛かりの一変も無い。
「ちくしょう!どこへ行ったんだ!」
本当だよ!
どこか出かけるなら翡翠だったらメモぐらいは残すはずだ。
だったらやっぱり…
「李理素…」
思わず口から漏れ出す最悪の可能性、
瞬間…
「馬鹿野郎!」
僕の身体が空を舞った。
「李理素なんていねぇよ!それに例え居たとしても…」
そうだね…
僕はどうかしてたみたいだ、
どうやらほっぺの内側を切ってしまったらしい、
血の味が暗雲として不安だった僕の意識を鮮明に覚醒させてゆく。
「悪りぃ…やり過ぎた…」
ううん、
あれは僕が悪かった、
琥珀が謝る必要なんて無い。
僕は決意も新たに、
翡翠を探そうとズボンに吐いた泥を払った時。
「ん~青春してる!でも私嫌われ過ぎじゃない?」
希望を打ち砕くような存在…
悪い方に裏切られた予想…
一目でわかる…
この女性は…
李理素だ。
男の子りりんは仲間意識も強いみたいです。




