表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Seek out  作者: ami
16/17

烽火

受信BOXをクリックすると、数字ばかりの奇妙なアドレスが目に入る。キースからだ。風呂上がりだというのに、手に嫌な汗をかく。手を拭い、唾を飲み込んでからメールを開封する。




各プレイヤーのPCアドレスと提供金額のお知らせ



お待たせ致しました。プレイヤー全員の提供金額が決まりましたので通知致します。なお、この金額はゲーム終了まで変更することはできません。

希望するプレイヤーのアドレスを買う場合は、私にメールでお知らせ下さい。

この取引では、相手プレイヤーの任意は必要ありませんので、自由に買うことができます。ですので、最初に私の口座に振り込んでもらい、後に私がプレイヤーの口座に振り込む形となります。もちろん口座見れば自分のアドレスを買った人数を確認することはできますが、誰が買った等の内容は一切御教え致しませんので御了承下さい。

詳細は下記の通りです。



P-51 ムスタング 15万円

F-86 セイバー 13万円

B-45 トーネード 11万5千円

FJ-1 フューリー 14万円

XB-70 ヴァルキリー 13万5千円

F-35 ライトニング 12万5千円

F2A バッファロー 18万円

P-36 ホーク 16万円

F9F クーガー 10万円



皆さんお気づきでしょうが、このメールを受信した今からが本当のゲーム開始です。お互いの交流手段を手に入れた今、あなたの足元に一筋の光が灯されたのです。死にたくなければその光を辿ることです。迷っていては前に進めません。

皆さんで私を楽しませてくださることを期待しています。


それともう一つ、皆さんに吉報があります。

私、クレメントキースを見つけたプレイヤーは、無条件でゲームから抜けることができます。不足したマネーも、お支払い頂かなくて結構です。それどころか、こちらから報酬として一億円をお支払い致します。

どうでしょう、少しはやる気が出ましたでしょうか。しかし、あなた方の敵は私ではないということを忘れませんように。

どうか、私の期待を裏切らないように頑張って下さい。


それではGAME STARTです。




遂に始まった。

今日までの二日間は、単なる余興にしか過ぎなかったということは、キースが自ら口にしていた。改めて思い返すと、今まで経験したことのない、とてつもなく膨大な恐怖感に苛まれる。この二日間だけでも、精神的な疲労は相当なものだった。これからゲームが進展していくというのに、果たして僕の体は保つのだろうか。


希望通り、僕のアドレスは一番低い金額になっているが、正直こんなに高い金額設定になっているとは思わなかった。

こう考えると100万円は決して高い額とはいえない。

しかし、この高額設定は僕にとってかなり好都合だ。

そもそも僕が一番低い金額設定にした理由だが、僕の狙いは最初からプレイヤー全員のアドレスを手に入れることだった。

しかもできるだけマネーを使わず、且つ利益を残すことが大前提だった。

プレイヤーの中に必ず一人は接触したがる奴はいる。

顔も性別も知らない相手と接触するとしたら、当然値段で決めるのが定石。

そうなると、最も安い僕に喰らいついてくる確率は高い。そして僕にメールを送れば、当然相手のアドレスを手に入れられる。勿論多ければ多い方が良い。後は残りのプレイヤーのアドレスを僕が買えば、全員分のアドレスが手に入り、利益が残る形になる。今回金額が予想以上に高騰したことが追い風となり、まさに理想形を生み出したといえる。


最良の結果に一先ず安慮するが、抑えきれない恐怖と興奮は、汗となって体外に溢れ出す。

しかも今回一番驚いたのは、キースを見つけたら一億円という意外な進展があったことだ。

他のプレイヤー達はこれをどう受け止めるのだろうか。

互いを脅かし合うのはやめて、手を組んでクレメントキースを探し出そうと言い出すプレイヤーも出てくるかもしれない。僕はそのようにチームに勧誘された時に、協力するかしないかを未だに決めかねている。人一倍人見知りな僕は、本音を言うと一人で行動したい。だが、こんな状況で勧誘を拒否したら一瞬にして敵視されるだろう。勿論協力した場合は、僕の持っている情報を全て教えなければならないのだろう。

しかし顔も知らない相手を信頼するなど、はっきり言って無理がある。自分からチームを組もうとも考えたが、こういう時は言い出した奴が一番怪しまれるのが相場だ。それに目立った行動は極力避けたい。最終的にはチームに入ることになると思うが、その中でどう行動するかをこれから考えていく必要がある。


所詮人間なんて信用できない。感情を生まれ持った生き物なのに、それを上手くコントロールできない。この世で一番醜い生き物。


「約束は裏切りを生む。即ち、約束をしなければ裏切りは生まれない」


と、どこかの国の有名な哲学者が言っていたような気がする。


いや、傑だったかな。

烽火(のろし) 苛まれる(さいな)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ