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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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パピーとリンクスの虚実

作者: 夏代唯
掲載日:2026/04/07

─利用規約および同意書─

本規約および同意書は、○○大学寮を運営する山猫軒株式会社(以下「当社」という)が運営する食堂(以下「本食堂」という)の利用に関する重要な法的文書です。本食堂を使用する前に、以下の内容をお読みになっていただき、本書に同意していただく必要があります。

1.食堂の目的

本食堂は、寮生の健康的な食生活の支援および生活環境の向上を目的として、朝食および夕食を提供するものとします。

2.利用対象者

本食堂を利用できる者は、当社が運営する〇〇大学寮に居住する学生に限ります。

在寮資格を喪失した場合は、以後の利用はできません。

3.利用時間および方法

 a.利用時間および提供内容は、別途掲示または通知するスケジュールに従うものとします。

 b.支払いは、当社が指定するカード決済方式によって行うものとします。現金での支払いは原則として受け付けません。

4.禁止事項

利用者は、以下の行為を行ってはなりません。

 a.飲食物の持ち込み。

 b.提供された食事の食べ残し。

 c.本食堂の運営や他の利用者に関する事項を、許可なく外部に口外すること(他言無用)。

 d. 体が著しく汚れている状態、または不衛生な状態での入室や利用。

 e. 武器、刃物、その他の危険物の持ち込み。

 f. 帽子、コート、靴の持ち込み。

 g. 、ネクタイピン、カフスボタン、メガネ、財布、金属製の物品や尖った形状の物品の持ち込み。

 h. 自社用クリーム類を塗布しない行為。

 i. 自社用香水を使用しない行為。

 j. 塩分の不足を生じさせるような行為。

 k.その他、職員の指示に反する行為。

5.マナー遵守

利用者は、他の利用者や職員に迷惑を及ぼさないよう配慮し、清潔で秩序ある利用を心がけなければなりません。

6.免責事項

 a.当社は、利用者の過失または不注意による事故・紛失などについて一切の責任を負いません。

 b.食物アレルギーなどによる健康被害については、利用者の自己責任とし、事前に食材情報を確認のうえ利用してください。

 c.感染症予防のため、当社が定める衛生管理や健康確認に協力するものとし、これに従わない場合は利用を制限することがあります。

7.利用停止

利用者が本規約に違反した場合、当社は当該利用者の食堂利用を制限または●亡することがあります。

8.規約の改訂

本規約の内容は、当社が必要と認めた場合に変更することがあります。

改訂が行われた場合は、食堂内掲示または寮内掲示をもって利用者に通知するものとします。

附則

本規約は、3756年4月1日より施行します。


▫︎同意します

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同意の承認を確認。

今月の退居者

佐藤 翔太(行方不明)  鈴木 悠真(その他)  

高橋 蓮(事故)     田中 陽斗(自●)

伊藤 大輝(病●)    佐々木 美咲(行方不明)

山田 彩花(事故)    中川 葵(その他)

石井 結衣(事故)    前田 琴音(行方不明) 

藤田 紗羅(自●)    小野 優奈(事故) 

渡辺 颯真(行方不明)  中村 悠人(事故)   

小林 航平(その他)   加藤 蒼(自●)

村上 真央(事故)    青木 美月(自●)   

林 花音(病●)     山本 隼(行方不明)

吉田 圭介(事故)    井上 智也(自●)   

木村 涼介(病●)    松本 湊 (行方不明)

森 莉子(その他)    岡田 結菜(事故)   

原田 陽菜(行方不明)  藤井 実桜(自●)

長谷川 楓(行方不明)  斎藤 陸(事故)



子供とも大人ともレッテルを貼られる大学。自由があり、まだ人間一人の社会からの責任が押し付けられない生活の保証が許容されるモラトリアム。曖昧で中途半端な中で、存在として一つと数えられる大学生が顕在した。いつも左手に文庫本を持ち、数刻の時間があればオフホワイトの海を泳ぐ墨色の魚が蔓延る世界を開いた。

名は戌亥亜能(いぬいあの)。彼は悪魔の色素を着色した服を着て、何の変哲もない顔で街を練り歩く。問題があるとすれば精神の方である。九年の義務教育を終え、三年の追加期間を得たにも関わらず、知能は他より低く倫理観または道徳心が欠如していた。指摘する友は不在であった。叱りつける先人は誰もいなかった。反面教師として敬う年下もいない。表立って嘲笑うものも失笑するものもいない。孤独であり暇であった。

そのため、彼は大学で勉学を学び、暇に何かを探した。望郷のような眼差しを瞳に宿し、情熱のような一歩で宝探しを行なっていた。しきりに辺りを見回すものであるから、他の大学生は彼を奇々怪々的な視線を向けて避けていた。彼は意に返すことはなかったが、真相はわからない。決して怒らずいつも静かに笑っていたように見えた。

そんな彼にも住処はあった。大学寮。近しい年の大学の学生証を持った人々が、交流を自主的に持とうと思えば持てうる一つ屋根の下で生きる。同い年の寄せ集めを一つの空間に押し込めた高校に近い存在でありながら、高校よりも自由度が高くプライバシーの確保された場所であった。決して高校とは一概に断言できないような空間だった。

大学寮を彼は生きるためのエネルギーを補完するために活用していた。衣食住、風呂や便所、睡眠といった24時間を差し支えなく過ごすためである。大学寮の食堂もその一環だ。

ここから始まるのは、彼の大学寮に入りたての一週間を日記のように綴った文である。迷子の犬でも見るかのように優しい目で字を追うことを推奨します。

壱日目

『あなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。』

大学寮の食堂、ドアノブに掛けられた木製の看板に書いてある一言。どこかで見たような不思議で、疑問の残る文章であった。食堂のコンセプトかと思考を巡らせては走らせてみたが、一向に思い付かず後方から来た学生にことを急かされた。

防音対策の取れた扉をこじ開けると、感染対策を兼ねてか一人用のダイニングセットが仕切りで区切られ、挨拶も歓談も容認されることはなかった。そして、各席の人の有無は安全の青、危険の赤で表現されていた。建物内は木造建築でありながらも、現代の最新機器を取り入れるという良いとこ取りであった。

食堂は献立が自分の席に運ばれてくるという形式のため、入居時に配布された戌亥亜能という掛札を席の区切りにかけ文庫本を手に持ちながら食事を待った。ページを一枚開き、不意に気づいた。先程の一文のミステリを推理できた。喉仏に詰まった魚の骨が胃に入ったような納得を可能とした。

トレイに乗せられた優しく温かい栗ご飯を健康的に食す。感嘆符。口の中に不快感を感じ、咀嚼物を皿に戻す。アイボリーと黄のモザイクの中から一本の毛を目視できた。自分か自分以外かと思考の湖を泳いでみた。途方もないし、進むための筏も期待できないため、どちらでもいいかと思い湖を放り投げた。しかし、毛を放り投げることもできないし、食べ残しは規約違反になるため、パクリ。

弐日目

読書の秋、食欲の秋。人間が行動力を確保する季節に大学寮に入居した。引っ越しをする気力が湧き、引っ越しシーズンなどとうに過ぎ去った混雑しない期間。一人暮らしをするのも寂しくて、わざわざ大学寮の空きが確保される時を待った。蓋を開けてみれば、交流など一切立たれた絶壁の孤島だった。おかげで情報もなければ暇である。

今日は紅葉の敷物が地べたに広がった道を通り、寮に帰宅した。おかげで靴は真紅に着色された。しかし、雨を降らせ、真紅の靴は無地の靴へと退化してしまった。靴の色が真っ黒になった頃、食堂にたどり着いた。

本日の夕飯に脳内で社交ダンスパーティーを開催しながら、食堂の席に尻を置く。木製で製造されたダイニングセットは幾千の手によって製造された温かみがあった。

食事は猫型の配膳ロボットが運んでくれるため、作り手の顔を伺うことができない。農家の顔がパッケージングされた野菜みたいに顔を認識できれば消費者も嬉しいものである。

考える人のコスプレをしていると、自動人形が今日の食事である秋刀魚の塩焼きを配達してきた。いつまでも高級感のある魚に胸を躍らせていると、食器の上に虫がいた。無論、魂と乖離した死体である。今日は厄日であることに苛立ちを覚えつつ、秋刀魚の尾のような感触の虫をすり潰す。殊の外、美味であったことに厄日の怒気は闇に消滅した。

参日目

天気が悪天候な故に、野山は魑魅魍魎が悠々と跋扈しそうなほど気味の悪さを醸し出し、客引きでもするかのような追い風が吹いた。鬱蒼とした枝のトンネルが自分の顔を反射しそうなほど更に闇を孕んでいた。

昨日ぶりの野山にて、今や害獣とかした熊を殺害した。嘗ての森の王は、観光地を散策する観光客さながら街を徘徊し、邪魔者を排除するようになった。その風格は山神の名に相応しくなく、畑荒らしの猪と同格の存在だった。害をもたらすならば、排除しなければならないのは世の常である。だから、邪魔者を排除する。

鳥、獣、鹿、兎など野山にいる生物はあらかた地獄に誘った。害になり得る可能性があったから、一つ一つ丁寧に排除した。撲滅するごとに、野山は声を消失していった。また一つ、社会に貢献できましたね。良かったね。

自分の良好な汗を良質な液体で洗浄した。褐色のパンのような出来上がりになった自分と共に、生きるための義務を果たす。体の燃料であるため毎日三食欠かすことはできないが、早起きが不可能であるため大学寮の食堂の利用は夕食分しか食べていない。

自分と同様の色味をした食器の頭上に芋の子と無数の針が装飾されていた。はてと約束を放棄した有無を忘却の底から探索してみたが、三歩歩いた鶏の声さえ聞こえない。

裁縫も趣味ではないため、隣の仕切りにホールイン。

肆日目

二千四百円と二千八百円の命が天国に逃げてしまった。それを見て自身を重ね、自分の時間の無さに気がついた。再度、脈動を停止したそれを見て、次に遠方の野山を確認した。

遠目から見た観覧車のような速度で来た道を歩く。突然、突きつけられた現実に盲目的になる。帰路の途中で、街の掲示板に小学生が手掛けた二酸化炭素削減のポスターを認識した。

環境問題の観点からして、自分の元を勝手に去ったそれらがいなくなったのは、環境のためと思い直すことで気持ちを整理した。しかし、未だ残る蟠りが吐き気に似た何かを口から出そうとしていた。口を開閉しては何も出てこず、橋梁をただ一人で渡るような寂しさを感じた。

たけのこご飯に嗅覚を支配されては幸福に満たされていたにも関わらず、どうしても視界に映る赤を無視できなかったため悪態をついた。たけのこご飯のすぐ右側には比喩としてミネストローネがあげられるような汁物があった。出産地不明の汁物は比喩としてミネストローネがあげられるだけで、正体はミネストローネではない。トマトよりもとろみが潜在し、色彩も暗色である。

五感の五分の二が鉄で支配される感覚にノスタルジーを感じた。全く別のものを食べているに肉じゃがを彷彿とさせる味わいであった。同時に、もう二度と閉鎖された空間にて虚無感を抱えながら玩味したくないと思う。

伍日目 

蓑帽子を被った専門の漁師に出会ったというより、遠目から発見したと動詞を置く方が言い当て妙であった。現代において、蓑帽子を自分自身に装備させているのは希少であり、訳を問いかけてみようと近寄って見たものの、早々と魚と団子を持って何処かに闊歩して行った。

漁師内での最近の流行であると仮定し他の漁師を探索してみたが、一向に見当たらなかった。また、街で流行っているのかと思案し、街中を漁師同様闊歩してみたが、蓑帽子の蓑字も虚空へと消えてしまった。

海風にて体に塩分を十分に煮じみこませ、空調の聞いた暖房を体に浴びる。いつもの定位置に踵を擦ると、獣の視線の圧を感知した。普段とは違う立場に戸惑いを感じ、視線の先を一瞥した。しかし、目が合ってしまったからか、獣の視線はいかんせん感じなくなっており、正体を解明することはできず溜息を溢した。

今日は全ての事象が中途半端であったと猛省し、鯖の味噌煮のようなものを口に運行した。腐敗臭が鼻腔に溜まり、口の中に噛みづらい生々しさを感じた。戻すのも億劫になり、胃に物体の入室を許可してしまった。

食後、自身の部屋にて便所に立て篭もったのは言うまでもなかった。

陸日目 

なんの変哲もない静粛な河川。強いて特徴を掲げるのなら、イギリスのドーバー海峡の白亜の海岸のように青白い泥岩層があるくらいであった。雨や雪などでは水位が上昇し、透明度が欠乏した。一方、日本晴れが続く日であれば、河川の水底や魚が視認できるほど透明であった。

そういった河川を散歩する。もちろん、意味もなくではない。ここは獣探しにも体を神聖なものと変化させるのにも打って付けである。だが、何年も獣狩りを続行させているせいで、河川の周りは獣の足跡さえ消失した。安全な場所になったが、自分を必要としてくれない場でもあった。もう河川でやることも来る意味もないというのに、街を散歩すればイギリス海岸が見渡せる陸橋に来ていた。また、必要としてくれる日を今か今かと狩人の如く息を潜めて待っている。社会の役に立てるよう、忠誠心が伝わるよう。これからも野山を駆けては川を思う。

御膳の上の洋皿にはどこの部位かも分からぬ赤、純白と漆黒を持つ球体、毛や爪、骨が混合した塊が出てきた。塊に若干の気味の悪さを感じつつ、ロボットから受け取らないという選択を取った。

受け取らずに数刻待っても、無機質な物体は微動だにしない。仕方がないので、仕切りとロボットの行間をすり抜けて自身の部屋でおでんを食べた。

漆日目

「どうして他人に押し付けた?どうして食べ切ることができた?どうして受け取らない?」

食堂のドアの鍵穴からギョロリと覗く二つの碧眼。正体を判明させるため開閉してみると、部屋を受け尽くすほどの山猫の大群がいた。一匹一匹の身長は私と等しい。

「食べ残してくれたら、規約違反で喰えたのに。なんの理由もなく、食わねばならない。理不尽だと呪うなよ。」

隣の猫を丸呑みできそうなほど大きな口を開けてこちらに近づいてきた。作り手は獣であり、斯様な容姿をしていると私は安心した。

大学寮は煙のように消え周辺には深紅の水たまりが残っていた。ちらほらとまだ、山猫たちに食べられていなかった命が恐怖の顔をしながら私を品定めする。私には危険の赤がべっとりと付着しているため誰も近寄らない。

あれだけ忠誠心を抱き、社会のために貢献したというのに誰も頭を撫でてくれなかった。

頑張ったのに、痛くても辛くても生きたのに。誰も肩を並べてくれなかった。誰もが優しい言葉を掛けては理解ができなくなった途端に興味を無くした。私はあなたたちと同じ命なのに心は違くても見た目は一緒。でも、心も一緒じゃないと無駄だった。個性が無くては、普通でいなくては無理だった。あなたたちに求めた瞬間から私は間違い探しの間違いだった。

これ以上、正解を、正論を、見ていたくなかった。赤も命も・・・そうだ。私はもう不正解だから、何をやっても未来永劫赤色のバツだ。なら、猫と同一の結果にしてやろう。ぐちゃぐちゃに殴っては食べよう。誰かの命を誰かにあげてもいい。食べなくてもいい。つまらなかったあなたたちが悪い。あなたが悪い。

鮮紅にして水溜りを拡大してやろうと思い、一歩進むと視界に純粋な色が見えた。この場に相応しくないので、不愉快に思い視界の全体に収めてみる。

・・・白熊のような犬がいた。深紅に染まった円の外にこちらを見ては微笑んでいた。犬の姿形に懐古した。犬は私にとって欠如した心であった。欠如した白であった。欠如した相棒であった。昔、猟師に着いていっては二匹で獣を狩った。山が物凄くて大変だった。けれど、今よりずっと楽しかった。

眼に温かさを感じ、気づいた時には犬に向かって走り出していた。やっと、会えましたね。


二匹の犬は野に去り、天使がいた場には読み古された文庫本が一冊置かれていた。めでたし、めでたし。

いかがでしたでしょうか。不思議な物語だったでしょうか。自分自身も体験してみたいと思いませんか。変わり映えのない毎日に飽き飽きしているのではないでしょうか。今回は大学寮のお話でしたが、社会人の方でもこのような物件をご紹介できます。

今後とも、山猫軒株式会社をご贔屓に。お客様を選り好みすることはありません。遠慮はもちろんありません。お部屋探しに困ったら、是非とも我が社をご活用ください。

お客様のご要望を十分に配慮し、災害や人災にも耐えうる物件をご紹介します。少々、猫が入り込みますが、ご愛嬌ということでお願いします。猫が戯れても我が社は責任を追いません。犬を優しい目で追えたなら、猫も平等に優しい目で見てください。差別が嫌いなあなたなら、きっと我が社のご注文にも応えてくれることでしょう。また、我が社は食事を重要視しています。美味しいご飯を毎日のように食べて、健康的なお体になりますようにこちらも努めさせていただきます。衛生面の管理に関しては、各所にて管轄を任せております。クレームに関しては、我が社ではなく各所にお問い合わせください。クレームの改善も各所に任せておりますので、ご理解の程よろしくお願いいたします。

そして、利用規約及び同意書の同意をお願いしています。長文にうんざりしたら、同意だけご記入していただいても構いません。これまで、ご注文は随分多かったでしょうが、どうか堪えてご協力お願いします。


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