1/14
プロローグ コンサート会場の歌声
エントランスから会場まで、熱を帯びたざわめきが満ちていた。
あまり人混みを好まない玲子は、場違いな場所に来てしまったような気がして小さく息を吐いた。
半ば強引に誘われたライブ。
お詫びにと友人が買ってくれたペンライトを握り、ただ静かに前方を見つめる。
照明が一斉に消され、さっきまでのざわめきが鎮まり返った。
ステージを囲む色とりどりの照明が天井まで伸びる。
次の瞬間、爆音と空気を揺るがす割れんばかりの悲鳴と歓声。
ステージに現れた8つの影。―――CRAQだ。
――
テンポのいい曲が続き、玲子も周りに倣って、ペンライトを小さく振った。
ふと、隣の友人を見る。
喜びの悲鳴を上げ、目を輝かせる友人に、玲子は小さく笑った。
眩しいくらいだった照明がトーンを下げる。
激しく振られていた観客のペンライトが、ゆったりと揺れる。
雰囲気ががらんと変わったバラード曲。
(あ…この曲聞いたことあるかも…)
玲子は、ペンライトを振るのも忘れて聞き入っていた。
鼓膜に優しく流れ込んでくるメロディ。
息を吸い込むと胸に入ってくるよう―――
玲子は、そっと目を閉じた。
喉は震えない。
――― けれど、確かに歌っている。
声にしないまま。




