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無限の価値の暴走

前線は、まだ煙と埃で覆われていた。

瓦礫の山、焦げた木材、散乱する死体。

兵士も魔族も、次に何が起きるのか予測できない――地獄のような戦場。


ヒロは立ったまま、掌を見つめる。


(……これで、全部終わらせる……)


《価値創成》


最初に生まれたのは、銀色に光る剣。

その次に、鋭利な槍が無数に地面から出現し、振るわれる。

矢の雨が、空を埋め尽くす。

弓、盾、槍、短剣、斧、重火器――瞬く間に前線は武器で溢れた。


ヒロが歩くだけで、戦場が破壊されていく。

踏み込むたび、魔族の兵は倒れ、飛び散る瓦礫と武器の嵐が残る。

兵士たちは恐怖と興奮で息を呑む。

魔族は混乱し、退路もわからず、互いに押し潰されていく。


「これが……価値、なのか?」


ヒロは自分の心臓の鼓動すら忘れるほど集中していた。

魔力を消費する感覚もない。

出す、出す、出す――すべての武器が瞬時に戦場を蹂躙する。


防御魔法結界ごと叩き潰す大剣。

逃げる敵の群れを薙ぎ払う無数の槍。

地面を滑るように飛ぶ短剣の雨――

戦場は、光と金属の嵐と化した。


ヒロが振るう手のひらから、

剣や斧が次々に生まれ、戦場を切り裂く。

誰も予測できない速度で、無数の武器が魔族を薙ぎ払う。

無数の剣が振るわれ、無数の矢が飛び、砲弾が降る。

魔族の命も、戦場の理も、彼の意思の前ではまるで無力だった。


(……減らない……)


魔力は無限のように残っている。

彼が生み出す武器の数は、どれだけでも増え続ける。

まるで、戦場そのものを操っているかのようだった。


そして、最後に。


光が掌に集まる。

周囲の空気が震え、魔力が渦を巻く。

ヒロの全神経が一点に集中する。


《価値創成――最大値》


生まれたのは、これまでのどの武器とも違う――瞬時に戦場を一掃する存在。

一振りで地形すら崩壊し、魔族の数は9割以上消えた。

破壊音が空を裂き、爆風が砂埃を巻き上げる。

兵士も魔族も、ただ呆然と立ち尽くすだけ。


戦場は、静寂の中で光だけが残った。

武器の山は崩れ去り、魔族は消え、空は青く澄んでいる――


上限の存在も、制約も感じられない。


(……これが、力……)


これだけの力を使っても

全体の、ほんの万分の一にも満たない魔力しか減っていない。


だが、ほんのわずかな魔力の喪失に気付いた時


ヒロは初めて実感した。


そらの姿が、そこにない。


無限に武器を生み出せても、守りたかったものは守れない。

どれだけ戦場を蹂躙しても、彼女は戻らない。


(……そら……)


胸の奥で、何かが崩れる。

力の快感と、失った存在の痛みが、同時に押し寄せる。


静寂の戦場で、ヒロの呼吸だけが響いた。

兵士たちは、恐怖で口を閉ざしたまま、ただ彼を見つめる。

戦場の英雄……いや、災害。

その目には、恐怖と称賛が入り混じっていた。


ヒロは、光に包まれた戦場を見下ろし、初めて思った。


(……価値は、無限なんだ……)

(でも、手に入れられるものだけじゃ、足りない……)


彼の胸に、そらの記憶が残る。


そして、戦場は、

彼の無限の力によって、静かに――終わった。

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