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才能の価値

白石ヒロは、自分が「評価される側」に立つのが苦手だった。


テストの順位表が貼り出される廊下。

ざわつく声の中で、ヒロは自分の名前を見つける。


――中の上。


悪くない。

でも、誇れるほどでもない。


「ヒロ、今回も安定だね」


背後から声をかけてきたのは、星宮そらだった。


「安定って言い方、

 褒めてるのか微妙だな」


「褒めてるよ。

 だって、落ちないってことだもん」


そらは、当たり前みたいに言う。


ヒロはその“当たり前”が、

なぜか少し重たく感じた。


昼休み。

教室の隅で、将来の話が聞こえてくる。


「推薦狙えるらしいぞ」

「親のコネが強いんだって」


評価、偏差値、進学、年収。

数字と肩書きが、才能の代わりに並んでいく。


ヒロは無意識に、

自分をその中に当てはめてしまう。


(俺には……どれくらいの価値があるだろう)


そう考えてしまった瞬間、

胸の奥が、少しだけ冷えた。


放課後、部活帰りのそらと合流する。


「ねえ、ヒロ」


そらは歩きながら言った。


「才能ってさ、

 見つけてもらえないと、

 無いのと同じだよね」


ヒロは足を止めた。


「……どうした急に」


「なんとなく」


そらは笑ったが、

その目は真剣だった。


「私はさ、

 飛び抜けたの、ないから」


「そんなこと――」


「あるよ」


そらはあっさり言う。


「だから、

 使えるところで使ってもらえればいいかなって」


ヒロは、その言い方が嫌だった。


物みたいな言い方だ、と。


でも、否定の言葉が出てこなかった。


帰り道、公園のベンチ。


夕焼けが、空を赤く染めている。


「ヒロはさ」


そらはブランコを軽く揺らしながら言う。


「自分のこと、

 過小評価しすぎ」


「現実的なだけだ」


「それ、

 才能を値切ってるだけだよ」


ヒロは黙り込む。


値切る。

その言葉が、妙に残った。


「もしさ」


そらが続ける。


「ヒロが“すごい力”を持ってたら、

 どう使う?」


「そんなの、

 あったら困る」


「え?」


「ズルいだろ」


ヒロは真顔で言った。


「努力してる人が、

 バカみたいになる」


そらは一瞬驚いたあと、

困ったように笑った。


「ヒロらしいな」


家に帰って、ヒロは机に向かう。


参考書、ノート、スマホ。


どれも、

誰かが決めた価値で並んでいる。


(価値って……なんだ)


値段。

点数。

評価。


それらがなければ、

自分は何になるのか。


考えかけて、やめた。


答えが出ないことは、

考えない方が楽だった。


その夜。


夢の中で、

何かが呼んでいた。


「その価値、見届けよう。こちらへ来い」


声は、優しくも、冷たくもあった。


目を覚ました時、

ヒロはなぜか、そらの顔を思い浮かべていた。


それが意味することを、

まだ理解できないまま。

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