とある狩人の話
初めて投稿します。
よろしくお願いします。
とある村の、どこにでもあるギルドだった。
いつのことかは覚えていない。覚えるほどの出来事でもない、はずだった。
朝のギルドは静かだ。
掲示板の前に立つのは、たいていが仕事を探す狩人か、仕事を終えたばかりの疲れた顔だ。
その日、掲示板の前に二人、並んで立っているのが目に入った。
この地域は大型の依頼が多い。
張り紙も大きく、内容も荒い。
人数が揃っていなければ、最初から話にならないものばかりだ。
狩人は自分の仲間の力量で受けられそうな依頼を探していた。
無理はしない。無理をする奴は、長く生き残らない。
それは狩人の鉄則。
ふと、目に止まった一枚に手を伸ばそうとした瞬間、隣に立っていた青年が、先にそれを剥がした。
縁に押された印は赤。
この一帯で張り出される中では、最も危険な部類だ。
反射的に、狩人は声をかけていた。
「……他にいるのか」
青年は狩人を見て、短く答えた。
「いねぇ」
その言葉と同時に、青年のすぐ後ろに立つもう一人の男が目に入る。
人間離れした整った顔。
一つにまとめた長い髪の隙間から、尖った耳が見えた。
――エルダー。
そんな種族を、どこかで聞いたことがある。
長命で、力を持つ、と。
だが、目の前の二人は仲間というにはどう見ても噛み合わない。
茶色の髪の青年は若すぎる。
エルダーの男は細く、携える武器も軽そうだった。
大型魔獣を相手に出来るようには見えない。
狩人は一瞬、自分の仲間を振り返る。
人数は足りている。役割も埋まっている。
空きはない。
確認した後、狩人は青年にもう一度、声をかけようとして、やめた。
無謀なやつは死ぬ。
それが狩人の世界だ。
狩人は一度は声をかけた。
さらに引き止める義理はない。
二人は依頼を提出し、そのままギルドを出ていった。
青年は楽しそうでも不安そうでもなかった。
エルダーの男は、ただ静かに隣を歩いていた。
数日後。
狩人が依頼から戻ると、掲示板の前で足を止めた。
そこには、あの依頼の討伐完了の通知と共に見慣れない二つの名前があった。
ただ、その日以降、
掲示板の前に立つ二人組を見るたびに、
あの時の背中を思い出すことがある。
何者だったのかは、今でもわからない。
わからないままでいい。
狩人の世界では、それが一番安全だからだ。




