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09:計画は実行されたその後は?

 私の担当は後方支援。だから、実際に何がどうなってこうなったのかを詳しくは知らない。知らないままでいい、とも言われているし。

 ただ、捕虜になった人たちがあまりにも我がままだった事だけは知っている。担当だからね。


 暑いだとか、食事が貧相だとか、本当にクレームが多かったので疲れたと言うよりも、腹が立った。


「食事に文句を言うなら、出しません。無料で支給しているものなので、これ以上のものは無理です。」


 きっぱりとそう言い切ったら、更に文句を言われたけど。

 そうか、そうだな。だから切られるんだ。こんな人、今自分が置かれている立場すら理解していない人は、これから作る国には必要ないから。


「早々に王都に送り返しましょう。」


 とアンネリーゼ様が言う。

 軍事行動の作戦立案に関わっているからそう思うのだろう。


「これ以上、ムダ金を使いたくないですよね。」


 とティルデ様は賛成する。

 けれど、ヴィクトーリア様だけは反対した。


「その前に、王都で号外よ。」


 とは?


「クーデターで捕虜になっているのに、クレームを入れているとね、王都民に知らせましょう。こっちは最低限ではなく、学園の寮の生活レベルにはしているのよ。それを基準としたから。だからね、貴族ではない人からしたら、かなり恵まれた生活になっているの。」

「学園の寮のレベルでクレーム?」


 驚いたようにアンネリーゼ様が言った。

 騎士団員は野外行動になっているから、そこまでの食事はしていないし、テント生活だ。彼女の父もそうだったりする。けれど、当然クレームなど無い。仕事だから、言われたらそれまでだけど。


「そうよ。文句を言われた時用に、この領地の平民よりもいい生活環境にしているの。」

「それはもしかして、自分たちの立場を理解していない、でいいのでしょうか?」


 説明をしてくれたヴィクトーリア様にティルデ様が確認していた。

 うん、気持ちは解るよ。あいつらどーしょもねぇな、とギルだけじゃなく、辺境伯様からも言われているからね。


「そうよ。だから、名前も書き添えて、どんな文句を言っているのか、それにどう対応しているのかを公表しましょう。その上で、こちらの対応もちゃんと書きましょうね。」


 実にいい笑顔でヴィクトーリア様は言う。

 完全に悪者に仕立てたいんですね、解ります。


「ビラをまきましょうね。よかったわ、王都の識字率を上げておいて。」


 もしかして、こうなる可能性も考えて識字率、あげました?

 怖くて聞けないけど。確かに少し前にもビラまいたわ。


「煽ったら、クーデターが起きそうですね。」


 ニッコリと笑ってそう言うアンネリーゼ様も怖いです。


「南にある公爵家辺りがしそうですね。」

「そうねぇ。」


 と笑顔で会話するヴィクトーリア様とアンネリーゼ様。

 それを見ながら、ティルデ様と私は黙っている。何と言うか、格の違いをね感じてしまうんだ。そうか、これが上に立つ人なのか、って。


 王都に首の皮一枚状態で独立した訳なのだけれど、ヴィクトーリア様の根回しでいくつかの国から承認を貰えるようだった。国名も王都の場所も決まっていないけど。それどころか、誰が国王になるのかも決まっていないけど。

 決して大国ではない国の半分弱での独立なので国力が問題かと思いきや、そうでもないらしい。


「国の半分にも満たない領地ではあるけれど、実際はそうじゃないのよ。」


 とヴィクトーリア様が説明してくれた。


 先ず、国内有数の穀倉地帯がこちら側なので、あちら側は確実に食料が不足するだろうと予想される事。それだけではなく、国内の流通がボロボロになっている事。そして、大きな商会の大半がこちら側にある事。


「要するにね、北の地は商売をする事で生計を立てている領が多いって事なの。」


 言われてみればその通りだ。

 実際に、伯爵領の悪徳商人も国有数の商会だった。


「南側は食べる事に困らないの。小麦が無理でも果物の多く実るわ。しかも、果樹園ではなく自生していたりするの。」

「自生!」


 驚いたけど、言われてみればそうだ。

 こっちは手を加えないと果実は実らない。けれど、食うに困らないと言う事が、この結果につながるというのが面白いと言えば面白い。


「何もしなくても大丈夫だったのに、これからはちゃんとしないと困る事になるのよ。領民はどう思うかしら。」

「確かにそうですねぇ………」


 そこまでは考えていなかったけど。

 でも言われてしまえば、考えるから。


「今後が楽しみね。」


 素晴らしい笑顔でそう言うヴィクトーリア様が眩しい。

 でも、本当に今後が楽しみだ。


「南の公爵様に期待かしら。」


 とアンネリーゼ様は言うけど。

 早々には難しいんじゃないかな。時流に乗れば別なのだろうけど。

 今回のこの件だって、辺境伯様が結婚する前から温めていたそうなんだよ。そう考えるとさ、本当に計画を立ててとなると数年越しじゃないと無理だと思うもの。


「それよりも、王都民がもたない気がします。」

「それも、そうね。」

「あら、否定出来ないわ。」


 そう言えるお三方が怖いですけど。

 でも、そう言えるくらいに王都は混乱しているでいいのかな。


「あ、忘れていたわ。関税の割合を決めないと。小麦が輸出出来ないわ。」


 って、ヴァルブルガ様!!

 忘れていたのではなく、先延ばしにしていると私は思ってますけどね。


「冬は越せるから、大丈夫でしょう。」


 物価が上がりそうだけど。

 でも、長年《買ってやってる》って態度だったものな、王都民。商会の関係者だったら皆知っている事だものね。作り手に感謝するのではなく、買ってやってる自分たちに感謝しろ、だったし。


 ま、もう関係ないけど。

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