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幻想は程遠く  作者: しばしば星
嫌いな世界を愛すため
2/16

不死

スライムから逃げようと思い村へ帰ろうと後ろを向くと大きな岩で道を塞がれ逃げようとすれば殺されるかもしれなく、一度話し合いへ持ち込むことにした。


「えっと……逃がしてほしいです」

「逃がしてあげるよ、ただ約束して欲しい事がある」

(詰んだか俺?)


モンスターとの契約と言えば酷いものしか見た事がなく奴隷になれば殺さないでやる、玩具になれば殺さないでやるなどのどれもエネスの耐えられるものはではなかった。

だが逃げられるとしたらこの契約しかない、そうだ逃がしてくれると言っているんだきっと大丈夫だ。


「約束ってのはね、君の魂に住まわせて欲しい」

(マジで終わった、乗っ取られるわ)


魂といえば魔力の集中するコアだ、そこにスライムを住まわせればどんな風に魂をぐちゃぐちゃにされるか分かったものではない。


「何でですか?」

「僕の体が周辺の魔力に耐えられないんだ」


このままそこらに放っておけば死ぬのでは?と思ったが逃げたら死ぬかも知れない状況ではそういう思考は持つのをやめた。


「ちなみに僕に害とかはありませんよね?」

「うーん……君の人生をチラ見するくらい?」


そうだ、魂に住まれてしまえばエネスの見ている視界を共有する事ができる、契約した後に体を預ける事だってできる。

だからこそエネスは怖かった。


「契約しちゃいます?」

「僕はしたいなー」


汗を流しながら苦しそうにしているスライムを見て時間を稼ごうとも思ったが、これ以上時間を稼げば自分が殺されて魔力を奪われるだけと知ったエネスは潔く契約する事にした。


「じゃあしましょう」

「何か困ったら何でも聞いてね」


エネスの腹に吹っ飛んできて回避しようとしたが間に合わなく、内臓ぐちゃぐちゃになるんだろうなと思いなんとか耐えようと数秒待ったが痛さがない。


(契約成功か?)

(うん、言うの忘れてたけど僕の名前はライム、君は?)

(僕はエネス•ルペラ)

(良い名前だね、あれ?)

(どうした?)


何があったのか聞いてみようとしたがなんだかライムは悲しんでいる、というよりかは怯えているに近い様な感情で何かを見ていた。

ちなみに魂にライムがいる事によって魂の中を見る事ができる。


(いや、何でもないよ……本当に困った事あったら助言するからね)

(何を見たの?)

(いや、なにも?)


誤魔化す様に言ったライムをみて生前の自分を見られたのではないのかと焦ったが、誰かに言う様な性格はしていなさそうでこれ以上書く必要はないと考え深掘りはやめた。

家に帰ると家族はまだスライムの事を知らないのか笑顔でエネスを迎えてくれた。


「あぁおかえり」

「ただいま」


上の階にある自分の部屋へ入ると突然気を失い倒れてしまった。

こんな出来事は初めてで気はないはずなのに何故だか夢というのだろうか、そんな空間でエネスは意識がはっきりとしていた。


「んだここ!?」


純黒に包まれた空間で、何も見えず怖くなってきた自分が自殺しようと海の中に飛び込んだ時の様な暗さだ、それを思い出したからなのかさらに怖くなり走り出した。


(はぁ……過去を知るのは俺だけだってか?最悪だぞ)


走れば走るほど嫌な記憶を思い出していってしまう、自分の過去を断ち切ろうとした報いなのだろうか?

そんな酷い理由で今もこうして苦しんでいるのだとしたら、転生させた者を憎んでしまいそうだった。


「不気味だ……」


走っても疲れない事から本当に現実ではないと再確認ができ、一度立ち止まりその場に倒れ込もうとした。


(マジめんど)


地面に背中が触れたと、感じるはずだったそう今エネスが倒れ込もうとしたら突然地面がなくなりどんどん落ちていく、いや落ちていく感覚を覚えていてその感覚がフラッシュバックする様に襲ってきているのかも知れない。


「いつになれば帰れるんだッッ!」


10秒ほど落ちると時が止まった様にエネスは浮いていた、やっと夢から解放されるのだと嬉しくなった。

だが突然だけど目の前に白く四角いテキストが現れそこにはこう書いてあった。


貴方は転生者でギフトを手に入れられます、其方はどれを欲す?

不死-不老不死-自死可能


不死:歳以外で死ぬ事ができない


不老不死:死を超越した存在になる事ができる、何があっても死ぬ事は許されない。


条件付きの不死:自殺でしか死ぬ事ができない


「んだよこれ」


嘲笑うかの様に言ったが、これは現実だと考え直した。

これを手に入れられるかは分からない、半信半疑のまま好奇心も少し持ちながら眺めていた。


「まるで夢だな……」

(これは、試されてるのか?)


考えてみれば条件付きの不死なんて言うふざけた能力これはエネスの事を応援しているのか皮肉なのかあまり分からなかったが、試されていると言うのにはすぐに気づいた。


「ま、俺のためにある様なもんだしな」


条件付きの不死をタップすると目を覚ました、もしあの体験が現実に反映されなくともエネスは良い経験をしたはずだ。


目を覚ますと夜になっていて、家族はまだ気づいていないのかまだ扉の開いた状態で寝ていた。


「おはよう」

(マジで、エネスが死んだら俺も死ぬんだから気をつけてよ!)

(安心してよ〜)


エネスが気絶して日々の生活が酷いものと勘違いしているのかライムは怒りながらエネスを叱ったが、エネスは気の抜けた返事をした。


(まぁ死なないでくれれば僕は良いよ)

(うん、それに僕は強いからライムに心配されなくともなんとかするよ)


実際のところライムより弱い、天と地の差があるほどにだ普通のスライムならばエネスでも難なく倒せるがライムは鉱石を纏ったスライムであり、何年生きているかも分からない魔力を漂わせていた。

だが戦闘力では勝てないかもしれないが、不死であるなら勝てる可能性はある。


(もう僕は寝るよ)

(そうか)


魂の中にいても眠気が来ると言うことは、魂の中には時間が存在するのか?と思ったがこの世界で生きていれば魂も成長するんだ、時間があるに決まっている。

それもあるがスライムが寝るというのは意外だった。


(……まだこの歳だからなのかな、苦のない人生を送れてる気がする。)


生前を思い出し前が運の悪いだけだったと思いながら、なんだかこれが夢に見えてきて怖くなり扉を閉め部屋のベッドに倒れた。


「他の人間がこういう能力持ってたら怖いぞ」


もし他の人間も不死のようなチート能力を持っていると考えれば自分は特別ではなくなってしまう気がしてそれも怖くなり、徐々にこの世界が嫌いになってしまいそうだった。


「そもそも死ぬ前の俺の世界ではそんなの無かったはず……聞いてみるか」


下に行きまずはエネスよりも長く生きている母親のところに向かいギフトやユニークスキル、または個性などはあるのか聞いてみる事にした。


「お母さんって僕くらいの歳に突然新しい能力を手に入れたりしたことある?」

「突然ね、私の能力は魔力使用効率だったわ!エネスももしかして能力を手に入れたの?」

(嘘だろ……)


実際本当に能力がもらえるようで絶望して地面に崩れ落ちてしまった、母は自分の能力を知りたがっていたがこれは教えても良いものなのだろうか、なんらかの禁忌に触れたりはしないのだろうか、とも思ったが親なんだから言っても害はないだろうと思い言うことにした。


「僕の能力は不死だよ」

「え……マジか?」

(終わった〜!禁忌だこれ!それかなんだ弱いのか?)


リデスの以外の反応に今逃げた方がいいのかもしれないと思い扉に向かおうとしたらリデスは喜んでいた。


「凄いじゃないか!だが自分達の能力は秘密にしながら生きた方がいいぞ」

「それもそうだね」


すぐに人に能力を言えば自分の弱点を言ってしまうようなものだ、これからは信用できる者だけに言うことにした。


「あれ、でも終焉級冒険者の人達は皆んな不死持ってたけど最初から持ってた能力なの?」

「違うぞ、確か能力をもう一つ手に入れられるダンジョンで得たんだとか」

「ほえー」

「だがそのダンジョンは2人しか攻略していない、それも終焉級2人がパーティーを組んでだ」

「めっちゃ難しいんだね」

「そうだとも」


そう聞いてみると自分の手の届かない所に行ってしまっているんだと感じ取れた、その2人はそんなダンジョンも攻略し大英雄にもなっている、エネスじゃ辿り着こうとも思える事ができない。


「じゃあ自分の能力って弱くない?」

「そんな事ないぞ、俺より強いかもな」

「そうかねぇ……」


リデスの実力は分かっている、そこらのパンピーじゃ敵うわけがないそれにギルドマスターだ、知能だけでなく力もある。


「おやすみー」


そう言い部屋に帰って思い返してみると大英雄が超高難易度のダンジョンを攻略しないと手に入れられない能力を持っているほどなんだから、これはチート能力と言っていいものだろう。


(大英雄がやっとクリアしたダンジョンの能力の持ち主って事は最強じゃね?)


と思いながらベットの中で眠った。

朝になったがいつも通り何も変わらない、転生した人間なんだからもっといい人生を送れると思っていたが至って今の所普通だ、友達も本当にモブ感溢れるガキだ、ここまで平凡な人生だとは思っていなかった。


あくびをしながら下に降りると父がいない、ギルドに早く出勤したのだろうか?


「あれ?父さんわ?」

「言ってなかったわね、ギルドにいる全員で大遠征に行ったのよ」

「どのくらいで帰ってくるの?」

「3年くらい?」


戦争に招集されたのかなんなのか分からないが、わざわざ長い間家族と離れるんだから重要な大イベントがあるのは違いないはずだ。


「そうなんだ、ちょっと外行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」


村に向かうと今まで魔法なんて使ったことのないような友達が炎を手から放っていた。


「魔法か?」

「良いだろ?」

「俺も使いたいよ」


残念そうに言うが普通にエネスも使おうと思えば魔法は使える。


「俺も使ってみるよ」


魔法はイメージするものが殆どだ、炎を手から出す感覚は水土なども全て同じで魔力を使いイメージすればその後は自分の打ちたい方向に魔法が打てる。

だいたいそんな感じだ。


(かっこつけるか)


少量の水玉を作り強めの炎属性の魔法を当て霧を作り出した、失敗すると思っていたが案外簡単にできた。


「スッゲー!」

「こんなもんよ!」

「なぁ、一緒にダンジョン行かないか?」


友達にそう言われたがダンジョンは危ない、これは常識だ。

ただの一般兵1人で攻略できるダンジョンがあれば勇者ですら攻略できないダンジョンもある、だがここらに危険な魔物はいないしきっと近くのダンジョンなら安心できるはずだ。


「うーん……行ってみるか、ここらならダンジョンも簡単に攻略できるはずだ」

「じゃあ行くか」


霧の中で薄く見える友達を追いかけていくと村を出て少し先にある山に着いた。


山の近くにはダンジョンが見えきっとそこが友達の言っていたダンジョンだろう、危険なダンジョンではなさそうだ高レベルなダンジョンなら門があるはずだ。


「ここ?」

「そうだ、安心しろゴブリンくらいなら簡単に殺せる!」

「そりゃ頼もしいな」


ダンジョンの中に入り少しの間進んだが敵が一匹も出てこない、本に書いてあった通りならスライムは必ず一体はいると書いてあったのに。


「敵全然いないね」

「きっとこの奥だ」


また奥へ進んでいくと紙のような何かでできた扉があった。


「これって大丈夫?」

「所詮スライムだろ?」


友達が先に扉を開けて部屋に入ってしまったようだ、自分的には入りたくなかったが友達が行ってしまったものは仕方ない、あれ1人じゃ心配だ。


(大丈夫だよな……)


部屋に入るとそこは白い紙のような何かに覆われた大きな空間で友達が奥にいる誰かを見つめていた。


「なんだあれ?」


友達が一歩前に進むと奥にいる誰かが座り込んでいた状態から立ち上がり、身長からは少年というに相応しい人物だった。

手には包丁を持っていてもしかしたらあの少年がこのダンジョンのボスなのだろうか?


何故だか嫌な予感がして友達にそれ以上近づくのをやめるように言った。


「おい!それ以上進むな!逃げろ!」

「相手は包丁だぞ、俺でも」


友達はそう言いかけると、あらかじめ自分から貼っていた魔力壁を貫通し包丁でいつの間にか友達の腹を少年が突き刺していた。

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